2014 OMM JAPAN 完走のポイント (ストレート / マインド&ナビ編)


OMM2014jpn

2014/11/29~30 静岡の東伊豆でOriginal Mountain Marathon=OMMが開催されました。イギリスで47年続くマウンテンマラソンと呼ばれるジャンルのレースで、日本では今回がはじめての開催。「トレイルランニングと異なり、ノーエイド、ノーサポート。1泊2日分の装備と食料とテントを持ち、決められたルートが無いため読図能力も必要な山の総合力が試されるレース!」という触れ込みで多くのトレイルランナーの注目を集め定員は早々と埋まり、多くのランナーが約半年かけて準備をしてきました。がいざ蓋を開けてみると、ストレート部門は初日の時間内完走率が50%を切る厳しいレースとなりました。

周りのランナーのみんなの準備をSNS等でつぶさに見ていた身としては、準備をしていたにも関わらず時間内完走できなかった参加者に実力が無かったとは全く思いません。それほどOMMに向けて地図読みやビバーク、山での経験を意識的に積んでいたランナーが多かったし、僕は幸い完走できましたが、僕も本国UKのOMMに二度出たとは言え、日本とUKのレース特性の違いを考えると正直レースが始まるまで完走には自信がありませんでした。

今レースが終わって振り返ってみて、自分たちが時間内完走できたポイントとなったものを自分なりに考えてみました。来年のストレートでのリベンジや、初挑戦の方々の参考になれば幸いです。

ただ、OMMはそれぞれの判断で、自分たちの状況やリスクを考えて無事テント場/ゴールにたどり着くことが一番重要と考えていますので、(結局レース関係なく山に入ったら一番大事なのはそこ)時間内完走やポイントコンプリート至上主義という考えではありません。その点ご理解ください。

◆マインド編

1)腹をくくれ

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まずはマインドから。ここかなり重要です。OMMレースの共通コンセプトは、Face your challenge,( 自分自身のチャレンジに立ち向かえ)というもの。

更に、日本サイトには、

このレースはトレイルランニングレースではありません。 なぜならこのレースには決められたコース(トレイル)はないから。 足が速く、長い距離を走れる走力だけでは攻略できません。必要なのは「山の総合力」。 山岳地を安全かつ正確に行動するためのナビゲーションスキルと経験、走力、そしてなにより精神力が試されます。 ゴールまでの道筋はあなた自身が導きだし、その「道」を正確に駆け抜けるのです。 広大な自然と真正面から対峙しながら、自分の体力、走力、極限の精神状態と向き合いながら、 2 日間にわたり繰り広げられるダイナミックな” マウンテンレース” を体感してください。

とあります。これは大げさじゃなくてレースの本質を表しています。

そんな中、今回のレース前やレース中に聞かれた声があります。それは

「雨が降ったらどうしよう…。」「雨にやられた…。」

こんな言葉。

本国のレースは天候への対応スキルも試されるため、あえて一年間で一番気候が不安定な時期に行います。実際イギリスのレースに2回でましたが、場所が異なるにも関わらず(OMMレースは環境への影響等も配慮して毎年違う場所で行われる)2回とも今回の日本の天気よりひどい天気でした。特に風は風速20~30m常に吹いている様な状況で本当に精神的に疲弊しました。

こういうこと言うと、「またUK話か」「UK厨乙」とか言われそうですがw、僕が言いたいのは本国が厳しいんだから日本も我慢しろとかそういう訳ではなく、OMMはそもそもそういうすべての環境要因を織り込んで行動することがレースコンセプトに含まれているというレースなので、最初から「雨風なんでもこい」と腹をくくってのぞんだ方が装備的にも気持ち的にも楽だということ。そりゃはっきり言って僕もいい天気の方がいいですw

ちなみにレース前にお会いした運営スタッフの田島さん(チーム阿闍梨)はレース当日の天候が崩れそうと聞いて喜んでいました。これは意地悪とかドSとかそういうものではなくて、UK OMMに参加して天候等の環境要因にも対応することがレースコンセプトに含まれていると理解した彼女の、「レースの大切な要素がしっかり盛り込まれてくれた」という素直な反応です。

また、別のポストでも引用しましたが、今年のUK OMMに参加した日本のナビゲーション第一人者、チーム阿闍梨の村越先生はレースに対してこう記しています。

多くの人にとって、イベントでもなければ自ら身を置こうと思わないような過酷な環境と状況にチャレンジできること、そこにOMMの本質的な価値がある。

てことで、ポイントのその1は

○天候を含めた過酷な状況に対して最初から腹をくくれ

これです。何気にOMMレースで一番大切なポイントかもしれません。でも安心して。本当にひどい天候になればコースも悪天候用のショートカットコースになるのでw

2)OMM JAPANは走る&ナビが難しいレース

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今年のUK OMMに参加した直後、日本のOMMがどうなるか想像してみました。UKのOMMは過酷です。ただしその過酷さの大半を先述の気候の要因がしめています。次が地形。UKのフィールドは見晴らしのいい丘陵地帯が多いのですが、足下は湿原のようにぬかるんでいたり、急勾配も多く、更に日本の地形には無い様な球状のでこぼこサーフェイスもあり、非常に走りにくい。悪天候とこの地形が組合わさるとまっすぐに歩くことさえ困難なときもありました。 (イギリス人はそんな中を黙々と走っていきます。)

正直日本のフィールドではこの環境を再現するのは難しいと思いました。実際今回UK OMMに出たチーム阿闍梨の二人も「気候と地形の再現は無理だからレースの難易度をどこに持ってくるかだね。」と話していました。ということで、僕は距離とナビゲーションで難易度を上げてくるのではないかと予想。UKのフィールドは見晴らしがいい分、目標物も明確になりコンパス直進も容易です。地形図も読みやすい。気候や地形がタフな反面ネビゲーションはシンプルなのです。しかし、日本の森の中はそうはいきません。わかりやすい尾根やピークならともかく、等高線の特徴が少ないところにポイントをおかれたら結構苦戦します。

結果として今回のOMMは実際そういうレース展開になりました。1日目のストレートのCポイントなんかは舗装路からそう遠くない場所にあるにも関わらず、多くの人が苦戦したんじゃないでしょうか?もちろん僕も大苦戦しましたw 距離もありましたよね。1日目の6から7なんか遠くて心折れた人も多かったんではないでしょうか?

OMMのフィールドが日本でも毎年変わるとすると来年も全く同じ展開かはわかりませんが、少なくとも日本の山林を舞台としてレースが開催される以上は、ラン&ナビというレース特性は大きく変わらないと思います。

と言うことで、2番目のポイントは

○OMM JAPANは結構走らされるし、ナビも手こずるから心しておけ

これです。最初から走る前提で時間をシビアに考えることで後半の余裕が生まれます。ちなみに僕は1ヶ月半前のハセツネから5kg増でのぞみました。そのためスピードは全然出ずw そのかわり走れるところはジョグペースでもいいから走りました。

◆ナビゲーション編

次はナビゲーション編。先にも書いたように、参加者の多くの方は実際にフィールドで練習したりして、スキルそのものが無いということはそれほど無かったのではないかと思います。どちらかというと割り切りや判断という、スキル以外の部分が明暗を分けたのではないでしょうか?そんな中で思ったポイントです。

3)尾根やピークは大丈夫。沢は注意

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今回のナビゲーションのキモはここだったと思います。実際地形図が読めれば尾根やピークはそう間違えません。しかし今回の地形で沢は非常にわかりづらかった。地図に無い沢もあるし、実際ポイントが置かれている場所がくっきりとした沢という訳でもない。枯れている沢だと水の音もしないし、今回は雨も降っていたので、そういう意味でもよけいややこしかった。

初日だとCの沢がみんな苦戦していましたね。8や9の沢もすんなりって感じではなく、ちょっといやらしかったですね。2日目は5の沢は比較的わかりやすかったけど、8の沢はアプローチの問題と付近に沢筋が沢山あったこともあって苦戦した人多いと思います。

なので、ポイント3はこれ。

○沢がポイントに指定されているときは注意しろ。沢という言葉だけでなく、方角や地形、高度もあわせて読め

ちなみに尾根でも、2日目のDは等高線的に特徴の少ない尾根だったので結構苦戦しました。

4)自分よりコンパス・高度計

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次は迷うときの陥りやすいパターンを。

レース中はずーっと地図とにらめっこって言う訳ではなく、ある程度のあたりを決めて進みまた地図を見るという行動の繰り返しになると思います。地形図を正確に読めているときは問題ないのですが、大体ロストするときは自分が地形図を読めていない時。なので基本自分を信じすぎるのはやめましょうw

オフトレイルを北に進むと決めたのに、気がついたら東に進んでいたりすることはよくある話。なので常に自分が目標の方向を向いているかはコンパスで確認する必要があります。と言う訳でOMMのコンパスはサムコンパス(親指にはめて常に方向を確認できる)がいいと思います。常に方角を意識して、進むべき方角と違う方角に進んでいたら早めにリカバーしましょう。

また、高度計付きの時計等を持っている方は有効活用しましょう。機器の特性上誤差はどうしても出てしまうので、常にその場の正確な標高を表してくれる訳ではないですが、相対値を測る時には有効です。例えば、「ここから次のポイントは等高線6本分だから60m下ろう。それより下ったら要注意。」みたいな使い方ができます。

僕は初日のCのポイントは高度を意識しなかったために、必要以上に下がって探してしまい大きくタイムロスをしました。逆にその反省を生かして2日目の8は高度計とコンパス直進で割とすんなり取ることができました。

てことで、4つ目のポイント。

○こっちっぽいとかアテも無く思ってるときは大体外れw コンパスや高度計の方が正しい

地図が読めないことは我々のレベルだと往々にしてあるので、その時に根拠の無い推測だけで進んじゃうことがロストの原因だと思います。ちなみに地図も100%あてにしてはいけません。1/25,000では表示しきれない地形の凹凸があったりしますし、データが古くて現状とずれがあるときもあります。今回は別荘地の舗装路区間が地図では通れるのに実際は通れないところもありましたね。ということで地図は98%くらいの信用度でw

5)損切り大事

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実際今回のOMMレースは初日序盤の自由区間のCで苦戦した方が多いと思います。実際分かりにくい場所にあり僕も苦戦しました。ただ、ルール上ここのポイントは必ず取らないといけない訳ではありませんでした。なのでドツボにはまってしまったら無理に探し続けてタイムロスをするより、きっぱりあきらめて他のわかりやすいポイントをとりにいくというのも選択肢としてはありです。実際、僕らより早く初日をゴールしたチームで、BとCは探したけど見つからなくて結局他のポイントを取って進んだ(A~F、6カ所全部まわった)というチームもありました。

このことを僕は勝手に「損切り」って呼んでるんですけど、これはポイントへのアプローチのときだけではなく、ちょっとロストしたときに確実に分かる場所まで戻るとかそういう時にも必要です。地図読みスキルではなく判断力の話ですね。

ポイント5番目は

○間違えたりロストした場合、そのプランに執着しすぎず次善策に移行してタイムロスを減らす 

6)決めたら進む

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これはFujitrailheadのナビゲーション講習で相馬さんから教わったこと。例えばA地点からB地点まで進むのにロードから分岐を経てトレイルを進むと言う様な場合、分岐までのロードは何も考える必要は無い訳です。なのでそこまではとにかく地図も必要以上に見ないで進めばいい。相馬さんはキロ4分で進んでましたw 意外とそのロードでゆっくり歩いて先のプラン考えたり(レース序盤だったらありだと思いますが)、下りの走りやすいパートで作戦練ったりしちゃったりするんですが、ここは時間の稼ぎ時。次のポイントが明確なときはどんどん行っちゃう方が無駄なタイムロスが無くてすみます。どうせ上りで歩くので、プランは上りや分岐の止まらざるを得ない状況で相談すればいいと思います。

 ○判断の必要がないところで無駄に考えない。次のポイントまでシンプルに進む

意外と簡単なことなんですが、なんか不安になって足止めて地図見ちゃったりしますよね。

7)コンパス直進はこまめに目標設定

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これも相馬さんの教えなんですが、林の中のコンパス直進って意外と難しいです。理由は木や地形の凹凸で必ずしも直進できると限らないから。ちょっとの角度のずれは、移動距離が長くなればなるほど大きなずれになります。これのリカバー策としてはこまめな目標物を決めること。直線上にあるあの木まで直進するという様に。コンパス直進が一番有効なのは、目標までの距離が近くて直進ができるときですね。今回はコンパス直進はそんなに使わなかったんだけど、2日目の8番を取る時まず、下からポイント直接狙ってみて細かい目標物みつけつつコンパス直進で上がってきて、それでもちょっとずれて反対側のトレイル(赤い車の落ちていたポイント)から再度コンパス直進(+高度チェック+沢筋っぽいくぼみを探して)で取りました。ちなみにこれは反対側のトレイルに出るのは織り込み済みのプラン。(GPSログと地図データがずれてるのはご容赦ください)

○林の中や、長い距離でのコンパス直進はずれやすい。する場合は中間に目標設定をする。

8)プランニングは落ち着いて

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これは自分の反省。今回両日ともに完走したんですが、プランニングを焦るあまりルートを見落として遠回りしたりしました。初日は11のポイントを取るのに、別荘地からのトレイルに気づかず発電所までロードを下って戻り多めに走ってしまいました。15~30分位のロス。

2日目もCから尾根を伝ってトレイルに出て5を取れば良かったのに、ロードを大回りしてEを取ってから5に戻りました。1.5~2時間くらいのロス。

2日間あわせると2時間近いロスです。ちょっと立ち止まって呼吸を整えて地図を見ればわかることも、焦って動きながらだと見落としたり、考えが及ばなかったりします。数分落ち着いて考えればすんだのに、その数分をケチったせいで数10分〜1時間単位のロスになるのはもったいないですね。

○大筋のプランニングは落ち着いて。レース中は大胆さと慎重さのバランスが大事。

そんなこんなで、僕らチームは今回2日で80km走りましたw

以上が僕が今回のOMMで感じたストレート時間内完走のポイントです。読んでもらえばわかると思うんだけど、書いたことは地図読みの技術のことはほとんどありません。大体が気持ちの持ちようと、判断とか切り替えの話w と言うことで、今回のOMMに向けて地図読みの基本を習得したけど時間内完走ができなかったという方。僕はあまり落ち込まないでいいと思います。地図読みのスキルが無い訳ではなく、実戦の慣れが少なかったり、時間が足りなかったりロストして焦ったりの心的要因も相当大きいと思うからです。僕も実際ロスト結構したし、上に書いた大きな戦略ミスもした。はっきり言って地図読みに関してはUKのOMMに参加したアドバンテージはほとんどありませんでしたw だけど、過酷さを楽しもうとか序盤から走ってマージンを作ろうって言うマインドセットや、地図読みスキル以外の判断や気持ちの切り替えでカバーした感じです。

基本的な地図読みのスキルは以下があればいいと思います。

・分岐やピーク等、地図上の確実な地点での自分の居場所がわかる
・地図と実際の地形がなんとなく一致する
・谷や尾根、等高線の間隔等の基本的な読図ができる
・正置(自分の向いている方向と地図の方向をあわせる)ができる
・自分が今どちらの方向を向いているかわかる(サムコンパスがオススメ)
・簡単なコンパス直進ができる

後は実際街ロゲとかじゃない、アウトドアフィールドでのロゲイニング大会に出ると、ポイントを探す感覚や、どういうポイントが迷いやすいか等がつかめていいと思います。

またフィールドに出なくてもこれみたいな読図問題に取り組むのもスキルアップにつながりますね。
http://www.m-nop.com/topics/navigationtext/
(ちなみに僕この問題結構間違えたりわからなかったりしたw)

長くなりましたがそんな感じです。うまく伝わらない部分はお店で直接聞いてみてください。

次回は装備編。今回はOMM Phantom 20という20ℓの小さなザックに結構沢山つめこみました。パッキングや装備のチョイスが一番工夫のしがいがあるところだと思うので、その辺を紹介します。

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