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2019年7月8日

りょー

240

『山小屋の生活』


どうも、りょーです

昨年の空梅雨と違い、今年はしっかりと雨の降る梅雨らしい天候が続いていますね

山好きの皆さんは夏山シーズンに向けて「あそこから入って、あそこを繋いで、あそこまで行こうか」なんて感じで計画を練っているのではないでしょうか?

地図を見ながら妄想している時間って本当に楽しいですよね!

ということで今回はそんな本格的な登山シーズンの始まりに向けて、皆さんが立ち寄りや泊まりで利用する、山小屋の生活を少しご紹介したいと思います。


南アルプス 仙丈ケ岳:山小屋『馬の背ヒュッテ』


ご紹介する山小屋はもちろんこちら、自分が昨年働いていた「馬の背ヒュッテ」

仙丈ヶ岳(3033m)には五つの山小屋が存在しますが、「馬の背ヒュッテ」は頂上から2番目、標高2640mに位置する定員100名、木造で趣のある山小屋です。


小仙丈ヶ岳の尾根から見た馬の背ヒュッテ。
ちょうど森林限界ギリギリの高さに位置しているので、小屋までの道のりは木々の下を通って雨や風の影響をあまり受けずに登って来れます。
※馬の背ヒュッテホームページより


6月末から準備を始め、7月初旬から10月中旬のまで営業している馬の背ヒュッテ。ざっくり三つの期間に分けてご紹介します。


6月:小屋開き準備期間

小屋の営業が始まる1週間ほど前、6月末からそのシーズンのスタッフが集まり麓の町でヘリでの荷上げをするための準備が始まります。

ヘリで一度にあげる荷物には重量制限があるため、段ボールひとつひとつ重さを測りって記載しながら、まずはトラックに荷物を詰め込んで行きます。

なかなかの重労働です(汗)

仙丈ヶ岳では「歌宿」(標高約1680m)という林道の途中にある少し開けた空き地からヘリが荷物をピックして小屋まで運ぶため、この歌宿まではひたすらトラックでピストン移動。積んでは運ぶの繰り返し。

運んできた荷物を今度は総重量と荷重のバランスを計算しながら、「もっこ」と呼ばれるヘリに吊り下げるための網で包んで行きます。

野菜などの食料から、燃料・スタッフの私物などありとあらゆるものを包んでヘリであげていきます。

「もっこ」で包むときは息を合わせるのが大事!

荷上げの下準備が整ったら今度は、小屋側の準備!

何名かのスタッフが事前に小屋まで登り、オフシーズンの間ずっと閉めていた小屋をまた生活ができるように整えていきます。

具体的にはまずライフラインの確保。電気・ガス・水道が使えるように整備していきます。

もちろんここは街中ではなく2500m以上の山の中、電話をしてもガス屋さんは来ないし、電線もなければ、もちろん蛇口をひねっても水は出ません。

ガスは昨年あげて保管しておいたプロパンガス、電気は発電機(これがほんと重い)を使って確保します。

一番大変なのが「」。小屋から数百m離れた沢の脇から湧き水を重力を使って小屋まで引いてきます。

昨年は比較的残雪が少なく、湧き水のポイントを見つけるのが早っかたようですが、今年は沢の上の雪が多く。雨の中男4人でひたすら雪かき。

今年の様子。沢の上にしっかり雪が積もっています。
2m以上雪が残っています(登山道はもうほとんど雪はありません)


水が引けるまでの間は、小屋の周りの雪を溶かしたり、雨水をためて小屋の掃除やスタッフが生活するための水を確保します。


荷物と小屋の準備が整ったら、いよいよヘリでの荷上げ

ここで大事になってくるのが、天気。雨はもちろん、ガスで視界が悪いとヘリが飛ばないので、基本は晴れた日の朝一で荷上げを行います。

しかし、今年は天候が悪い日がずっと続いており、ヘリが飛ばない状態…

こうなるともう人力

もっこで包んでいた荷をほどき、大型のザックや背負子で詰めるだけ積んで小屋まで運んでいきます。



こちらは昨年の様子。小屋の裏手の開けたスペースに荷物を降ろしてもらいます。ヘリはホバリングしている状態。


7〜10月初旬:小屋の営業期

荷揚げや小屋の掃除、布団の準備などしているとあっという間に、営業初日の週末がやってきます。

それまでの平日の間は週末に向けて、宿泊のお客様に提供している夕食のカレーの準備をしていきます。

ひたすら玉ねぎをみじん切り
飴色になるまで弱火でひたすら炒める


お客様に出すカレーはこの上にウィンナーがのり、サラダ・果物の小鉢が付きます


7月から8月にかけての週末は満員や満員近くになるため、数名のスタッフが小さなキッチンで100名分のカレーやサラダなどの準備をするのは本当に大変。

加えてスタッフの夕食の準備もあるので繁忙期土・日の流れとしては、

3時半:起床すぐに朝食の準備

4時半〜6時半:朝食出し

7〜8時:片付けをしつつ、スタッフ朝食                 

(7時頃には下から登ってきた登山者が訪れるので、朝食を食べながらも売店などの対応をします。)

9〜11時:客室やトイレの掃除

(合間に小休憩でおやつタイム)

12時〜16時:夕食の準備・宿泊客の受付や売店業務

(この間に昼食や休憩を回していきます。)

16時半〜19時半:夕食出し

20時〜20時半:お酒やおつまみの提供をしつつ、スタッフの夕食準備

20時半〜:宿泊者は消灯。スタッフはここから夕食&酒盛り

22時:スタッフ就寝


ふー、こうやって振り返ってみると忙しかったですねー

しかも、3000mの絶景が広がる好立地が自分を休ませてくれず、いつも昼休憩で10kmほど走っていたのでなかなかタフな日々を過ごしていましたw



もちろん常にこんなに忙しい訳ではないので、平日はもう少しのんびりした生活を送っています。

お客さんのいない日などは、昼間から外で焼肉&ビールを飲んだり。

ケーキを焼いてみんなで食べたり。週末が忙しい分、余裕のある日は比較的ゆったり過ごしていました。

特に好きだったのが午前中の時間で、窓から入ってくる綺麗な光の中、朝食を食べたり、ゆっくりお茶したりしているのが何にも代えがたい贅沢な時間でした。


そして馬の背ヒュッテといえば酒!

美味しいお酒と美味しい食事に困ることがなかったのは本当に最高でした。

一体トータルでどんだけ飲んだんだろうw
光の感じが朝っぽいけどビールがw
とうもろこしもあったなー

8月の末から紅葉の始まる前9月中旬までは、登山者の数も落ち着いてくるので街まで走って降りてまた、走って登ってきたり、日帰りで3000mの山々を走り周ったり、山好き、山走るのが好きな人にはほんと最高な環境でした。

これは8月の前半でしたね、たしか前日あたりが台風の影響で登山者が少なかった記憶が…


夜は夜で素晴らしい景色が見れます。

なんとか座流星群
なんだったけなー


見おろす打ち上げ花火


10月:小屋閉め

なんだかんだあっという間に、小屋閉めのシーズンに。

9月末から10月の前半に紅葉のピークを迎えますが、小屋閉めの頃には木々の葉は全て落ちて、雪も降り出し山の上はもう冬になっています。



その年のシーズンが無事に終えられたことを感謝しつつ、小屋の掃除・片付けをしていきます。

混雑時は一枚の布団に二人が寝ているような客室も片付けが終わりがらんとした姿に。
草木染めの経験があるスタッフに教えてもらってみんなで次のシーズンの枕カバーを染色。黄色は玉ねぎの皮の草木染め。

小屋閉めは小屋開けの反対で、上げ荷ではなく下げ荷を作っていきます。

越冬させるのが難しい、冷凍食品や生鮮食品などをまとめてヘリで降ろします。(越冬品は翌年のスタッフの食料になります。)



最後は入り口を閉めて、約4ヶ月の山小屋の生活は終了。


みんなで荷物を背負って下山。

みんなが休みという日は1日もないので、よくよく考えると一緒に仙丈ヶ岳を歩けたのは最後のこの日1日だけでした。


山小屋の生活を振り返ってきましたが、みなさん今年の夏は仙丈ヶ岳はいかかですか?

3000m峰ながらとても歩きやすいトレイルですし、馬の背ヒュッテには日本酒が、北沢峠のこもれび山荘にはクラフトの生ビールがあります!

トレイルランナーは甲斐駒ケ岳が好きですが、黒戸尾根を登ってそのまま走れば仙丈ヶ岳は目の前です!!

下山後は伊那の町で一杯飲んで、そのまま高速バスで一本で新宿まで帰れますよw

もちろん、小屋に泊まってのんびり贅沢な時間を過ごすのもいいと思います!


最後に、夏の高山は午後から雲が湧いてきて天気が急変、大雨や落雷になることが多いので頂上に行く方や山小屋に泊まる方はできるだけお昼頃までに頂上を踏んで、午後3時頃までには小屋に入れるようにしてください。

また、どこの山小屋もそうですが地上の生活と違って食事の時間や寝る時間が早いので、夕方の食事出しの忙しい時間に小屋に到着すると他のお客さんや小屋の方に迷惑をかけることになります。

自分の安全のためにも、他の人のためにも余裕のある計画で山を楽しんでください。


仙丈ケ岳の小屋の情報はこちらから👇

こもれび山荘

大平山荘

馬の背ヒュッテ

仙丈小屋

※仙丈ケ岳の山小屋は基本全て予約制となります。事前の予約をお願いします。

PROFILE

りょー | Ryo Hirano

走るのも歩くのも、装備は軽く、距離は長いのが好きなランナー兼ハイカー。日本の山はもちろん、特にアメリカを中心としたトレイルレース、ロングトレイル好き。
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主な参加大会:ハセツネ、山中温泉トレイル、ONTAKE100km、信越五岳100k、Speedgoat50km(US)、Pine to Palm100(US)など
ロングトレイル:Jhon Muir Trail(US)、Te Araroa Trail(NZ)など

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