トレイルランに没頭するためには
私自身にとって、トレイルランはとても魅力を感じるスポーツです。
魅力という言葉は人によって解釈が異なるため、私なりにこの言葉をどう解釈しているのか説明すると、努力をすることなく自然と夢中になっている状態だと思っています。
努力というのは、例えばレースに向けて練習を“しなければならない”など、何かしらの目的があって行動する状態であり、これは明らかに夢中な状態ではないと言えます。
つまり、無意識にトレイルランを楽しめる状態が作れるかが重要だと思っています。
私自身、これまで野球、スキー、ゴルフ、登山、マラソンなどのスポーツをやってきましたが、これまで夢中になって取り組めたかというとそうではありませんでした。
しかし、トレイルランはもう10年以上経ちますが、未だに夢中な状態が続いています。山に登りに行くのも楽しいですし、海外レースに出るための準備にいたっても、旅行の手配など全く苦であると感じません。
また、私の周りのランナーで、これまで目標としてきた大会に完走したことで、燃え尽き症候群となりトレイルランをやめた方がいますが、私はその症状も今のところ見られません。
なぜトレイルランに熱中できているのか色々と考えた結果、トレイルランにしかない特徴があり、それが私の志向性にフィットしていることが分かりました。
その特徴とは何であり、トレイルランに没頭できる環境を作り出すには何が必要なのかお話したいと思います。
トレイルランは対戦相手を自由に選べる
トレイルランには2つの特徴があり、この2つをトレイルランは持っているのに対し、他のスポーツはこの2つのいずれか1つしかない、もしくは1つも持っていません。
この2つの特徴とは、一つは対戦相手を自由に選べるということ、もう一つは大会のバリエーションが豊富であることがトレイルランの特徴だと考えます。
まず、1つ目の特徴に関して具体的に説明すると、一般的に相手と戦うスポーツにおいては自由に対戦相手を決めることができません。
野球やサッカーなどはその典型例です。試合をするときは対戦相手に試合の打診をし、相手の合意がなければ試合をすることができません。
ではその合意が相手チームから簡単に得られるのかというとそうではありません。例えば、試合の打診を受けた相手チームの立場でみた場合、自分より明らかに弱いチームとは戦わないのが普通です。なぜなら弱いチームと戦ってもメリットがないからです。
トレイルランではどうかというと、上記のようにトレイルランは誰かと対戦するスポーツではなく個人スポーツです。
ですが、便宜上トレイルランにおいて対戦相手を“大会”とした場合どうでしょうか。
トレイルランでは大会(対戦相手)が自由に選べるかというと、これは大会によって様々です。
例えば、UTMBの場合だとUTMBワールドシリーズの対象レースを完走しランニングストーンを獲得しなければ参加することができません。
では、海外の他のレースでも資格がないと参加ができないのかというと必ずしもそうではありません。UTMBと同等レベルの大会においても、資格がなくても参加できる大会は多くあります。
例えば、私が9月に完走したフランスのLe Grand Trail de Serre Ponçonという100マイルレースでも資格がなくても誰でも参加することができます。
他にも資格がなくても参加できる100マイルレースの一例(いずれも累積標高が10,000m前後)を紹介します。
Swiss Alps 100
SwissPeaks 170
Grand Raid des Pyrénées
Ut4M
Northburn 100
では、参加資格が必要とされる大会はどういったものか。私の経験上、人気のあるトレイルレースほど、参加資格が必要とされる傾向が強いです。
例えば、The Western States Endurance RunやHardrock 100もUTMFなどの対象レースを完走しなければエントリーをすることができません。
以上から、トレイルランは対戦相手を比較的柔軟に選ぶことができる(=大会を自由に選ぶことができる)スポーツだということです。
野球などのスポーツにおいて、格上の相手と戦うことは難しいですが、トレイルランは自分の意思次第で自分にとって格上の大会にチャレンジすることが可能です。
この話をすると疑問に思う方がいると思います。マラソンもトレイルランと同じではないかということです。
トレイルレースはバリエーションが豊富である
これが2つ目の特徴である、大会のバリエーションが豊富であるという特徴です。言いかえるなら、それぞれの大会が個性の強い大会ということです。これはマラソンにはない大きな特徴です。
マラソンで、例えば東京マラソンと大阪マラソンをそれぞれ走っても、完走タイムに大きな変化はありません。なぜなら、ほぼ平坦な舗装路を走るコースだからです。
しかし、トレイルレースの場合、完走タイムに大きな差が生まれます。例えば、UTMFとUTMBを比べるとわかりやすいかと思います。
私はいずれの大会にも出た経験がありますが、それぞれUTMFは30時間台、UTMBは40時間台でいずれも完走しました。
なぜ、ここまで違うのか。それは累積標高、高度、気温など、山の条件によって左右されるからです。その結果として、それぞれ個性のある大会となっているということです。
要は、トレイルランはコースの設計次第で、いくらでも難易度の調整(個性をより打ち出した大会)ができるということです。
一方のマラソンにおいては、市街地での舗装路を走るというのが原則決まっているため、コース設計の自由度が限られています。つまり大会によって個性が出にくいため、大会によって完走タイムにばらつきが出ないということです。
例えば、日本一標高が高いところを走る大会として有名な乗鞍天空マラソンのような大会が、マラソンにおいても一般的であると話が別ですが。
これら2つの特徴を纏めると、さまざまな個性のある大会を自分の意思で自由に選んでチャレンジできるのがトレイルランの特徴であるということです。
例えば、大リーグの世界では、以下のようなヒエラルキーがあります。大リーグでメジャーリーガーの舞台に立てるのはごく僅かであり、自分の意思では大リーガーにはなれません。
しかしトレイルランだと、このような階層があるわけでもなく、前述のような資格がないと100マイルレースには出れないといったこともありません。
自分の意思次第で、上記でいう大リーグの試合でバッターボックスに立つことは十分に可能です。
これが、私にとってのトレイルランに魅力を感じる理由の一つです。
指数関数的なスピードで成長ができる
さらに大リーグの事例を使って利点を説明するなら、トップレベルが経験できるということです。つまり、最短ルートで成長できるということです。
レベルが高い環境でレースが経験できることで、指数関数的に成長が実感できるのがトレイルランであると感じています。私自身もトレイルランを始めた当初と比べて、短期間で大きく成長できたと実感しています。
もしスポーツを通じて何かしらの成長や結果を出したいと思っている人であれば、トレイルランは最も有効な手段であると私は感じます。
「成長」という言葉に抵抗感を持たれる方がいるので、別の視点でいうなら飽きっぽい性格の人もトレイルランに向いていると思います。
私自身は、とても飽きっぽい性格の人であり、「現状維持」という言葉が嫌いな人です。私は現状の環境に慣れてしまうとすぐに飽きを感じ、別のことに手を出してしまう傾向が強い人です。
この飽きっぽさが、私の場合は仕事においても顕著に出ています。具体的には、現状の業務に慣れを感じたら、すぐにキャリアチェンジをするということです。
押し並べて3年前後で次々に仕事を転々とします。但し、ただ転々とするのではなく、前提としてこれまで未経験の仕事であること、加えてレベルが高いと感じる仕事を必ず選択するようにしています。
私と同じような志向性の方であれば、トレイルランは述べた通り自由度の高いスポーツであるため、飽きることなく没頭してトレイルランにチャレンジし続けられると思います。
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年末にかけて国内外問わずにトレイルレースは開催されますが、私自身今年はトレイルレースへの出場予定はなく、現在は来年のトレイルレースの計画を立てている状況です。
まだ世界には私にとって魅力に感じるレースが数多くあるため、こういったレースにいくつか出る予定です。
具体的なところでいうと、Hardrock 100にもエントリー済み(抽選)ですが、落選となった場合も踏まえて代替えレースもいくつか既に選定しています。
年明けのブログで、23年のトレイルランでの目標や計画しているレースについて、具体的にお話ができればと思います。
トレイルランに没頭できる環境を作り出すためには、これらを意識した上でレース選びをすることも選択肢の一つだと私は感じています。