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2023年3月15日

ゆっきー

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トレイルランでの意思決定の重要性

トレイルランは、他のスポーツと比べて怪我や事故になるリスクの高いスポーツの1つだと感じています。

なぜなら自然を相手にしたスポーツだからです。例えば、山での天候悪化によって怪我をした場合、途中でレースを止めることができず、麓の登山口まで下山する必要があります。

そのため山中でのリスクを鑑みてレースに臨む必要があります。マラソンの場合だと、その場でレースを棄権をすることはできますが、トレイルレースでは棄権ができません。

棄権に関する海外レースのレギュレーションをみてみると、以下2点が必ず書かれていることが多いです。

1つは山中での棄権はNGであること。もう1つは棄権する場所は必ずエイドであることです。

なぜこのように細かく決められているのかというと、海外レースにおいてはコース上にスタッフが配備されていないことがほとんどだからです。

ちなみに私が参加したSwissPeaksの360kmにおいては、コース上に全くスタッフが配備されていませんでした(一応主催者は選手にGPSを支給しているため、どこを走っているか分かる状態ではある)。

日本の場合だとコース上にいるスタッフに棄権を告げて、麓の登山口に下山することが可能です。しかし、海外の場合だとそれが許されていない大会が一定数あります。

従って海外レースでは、山に入る場合はレースであっても自己責任で登るという意識が強い印象です。

また保険についても、例えばUTMBなどの人気のある大会だと、参加費の中に保険が含まれており、レース中の事故でも主催者側が救助やサポートする形が一般的です。

しかし、海外レースの中には参加費の中に保険が含まれてなく、個々に山岳保険に加入して大会に臨まなければならない大会もあります。

このように日本と海外での山に対する考え方や大会のレギュレーションの違いから、レース中での山での判断や意思決定がとても重要となってきます。

また、海外レースでは日本と比べて標高が高く、テクニカルなトレイルを走ることが多いため、より一層これらスキルが重要となってきます。

私自身、山での意思決定の大切さを痛感した海外レースを1つ紹介したいと思います。

このレース以降、山での判断や意思決定のスキルを身につけたことで、結果として事故なく海外でのハードな大会を完走出来ていることにつながっていると感じています。
 

標高2,500mでの雷雨の経験

判断や意思決定の大切さを痛感したレースとして、2016年に参加したイタリアのレースを挙げたいと思います。

このレースにおいて標高2,500mの森林限界で開けた稜線で、日本アルプスでは経験したことがない凄まじい雷雨を経験をしました。

実際のレースの場所ではないが
このような森林限界で身を隠す所がない場所を歩き続けた

具体的に説明すると、私の周辺で幾度となく雷が落ちる状況で、ずっと耳鳴りがなる状況でした。身を隠す場所がなく、私は岩陰に座って雷雨が過ぎ去るのを待ってました。

15分ほど避難していると、現地イタリア人ランナー3名が後続からやってきて「この後も雷雨が続く可能性が高く、そこにいると危険だから先に進んだほうがいい」と言われ、4人で先を進むことにしました。

4人で1時間ほど雷雨の中トレイルを歩いた後、イタリアの山岳救助隊が救助にかけつけ、コース外にある山小屋に誘導されました。

山小屋で雷雨が過ぎ去るのを待ち、その後レースに復帰して無事に完走することができました。

山岳救助隊の助けがくるまで、4人で雷雨の中を歩いている際の私の気持ちとして「死にたくない」と思いながら歩き続けていたのを、今でも鮮明に覚えています。

このような状況下において日本だと即中止となりますが、海外では中止にしないところが日本と海外のレースに関する考え方や価値観の違いだと思います。

レース後に一緒に行動を共にした3人と話を聞くと、この地域は落雷がよく発生する地域だと述べていました。

実際に、私が参加した3年後の2019年に落雷被害に遭ったランナーがいて、大会は即中止となりました。

ノルウェー人が標高2,100mで
落雷に打たれレースが中止となった

この落雷事故を踏まえて、これまで7月開催であったのが落雷の発生頻度が少ない8月下旬に変更となり、今も継続して大会は開催されています。

恐らくイタリア人3名と一緒に行動を共にしなかったら、恐らく私の命はなかったと感じています。
 

山でのトレーニングは原則一人で

このイタリアでの経験以降、私自身決めたことが1つあります。

それは、山でのトレーニングに関してはなるべく一人で行うことです。なぜなら、山の中で正しい判断ができるようにするためです。

仲間とトレーニングをした場合、山での判断をどうしても第三者に任せてしまうため、山での正しい判断をいつまでも身につけることができません。

一人で山に登る時には、地図を読む力、天候の状況をみながら正しい判断ができないと、結果的に事故につながるリスクが高まります。

私自身、山のスキルは一定数あると認識しています。しかしながら、例えば日本アルプスや富士山に登山にいくときも、登頂することを絶対とせず、当日の天候や体調をみて、途中で下山するということも多々あります。

自身が山での経験があるからといって、その経験を過信してはいけないというのが私の考えです。

人間が天候に勝てることは絶対にありません。自然の環境に柔軟に対応できる判断を身につけるべきだと思っています。

◇     ◇

最後に話は変わりますが、海外レースに出て良かったと感じることが1つあります。それは、意思決定、判断が私の仕事においても活かされているということです。

山での判断の質も重要ですが、それに加えてその場で即判断や意思決定することも大切だと感じています。つまり、判断や意思決定の質とスピードの両方が必要であり、これらが仕事で活かされていると実感しています。

多岐に渡る多くの業務をこなしながらも、顧客や社内を上手くマネジメントできるようになり、結果として仕事でこれまで以上に成果を出せるようになりました。

トレイルランを通じて得られたことを、これまでブログの中で様々な視点で書いてきましたが、今回述べた判断や意思決定に関しては、プライベート及び仕事において最も活かされているものの1つです。

言い換えるなら、意思決定のスキルを身に付けたいと思っている方がいるのであれば、積極的にトレイルランにチャレンジしてみるのも選択肢の1つだと感じています。

Yukihisa Nakamura

PROFILE

ゆっきー | Yukihisa Nakamura

海外のトレイルレース延べ2000km
本格的に海外を走り始めて4年、年500kmのペースで世界の魅力的なトレイルを駆け巡っています。
山本来の魅力を肌で感じることが好きで、有名な大会よりかはニッチでテクニカルなコースを選びがちです。
Swisspeaks 360km(Walker's Haute route)、UTMR 170km(Tour Monte Rosa)など完走。
2020年も日本で知られていない世界各国の魅力的な山・トレイルに出逢うこと。

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