UTMB/必携品のチェック廃止
日本の100kmそして100マイルレース。すでにクラッシック/伝統の域に達した大会もあります。なかには「UTMB」の運営をお手本に、開催をスタートさせた大会もあって、当時はその「必携装備」という考えに驚いたものです。
そもそも「装備」は、個人それぞれのパフォーマンスによって大きく異なります。距離や活動山域、活動時刻、天候に応じて考えるものだし、工夫し、用意するものです。個人が好き勝手に山を走るぶんにはそれでいいでしょう。
ところが「UTMB」は競技大会。いろんなパフォーマンスの選手が一堂に会します、当初は100マイルの山岳路を経験した選手が少なかったことも理由でしょう、「UTMB」のオーガナイザーは必要な装備をリストアップし、必ず携行すること、とルールに定めました。
ツールドモンブラン
通常はガイドを頼み、1週間ほどをかけて、山小屋や麓の町に宿泊しながら、3つの国をぐるりと巡る「ツールドモンブラン」およそ170km。
この山岳高所のトレイルを、一昼夜ぶっ通しで走り続けるときに必要な装備、万が一のための装備。「それらを携行するのは出場選手の責任だし、オーガナイザーへの義務です」という考えです、なるほど。
コンビニの雨ガッパ
その必携装備が日本にやってきたとき、身を守るものとわかっていても、「オレは大丈夫さ」と、装備の重量増を嫌がる選手が多く存在したことを思い出します。また、装備の軽量化、高品質化は高価格につながり、コンビニの雨ガッパじゃダメなのか? 防水ジャケットの防水能力について、アレはOK、それはNGと、大きなテーマになったもんです。
見せろ品目のトップ3
シャモニで選手登録(ビブ/ゼッケンの受け取り)の際に、〈UTMB〉はもちろん、距離の短い〈CCC〉も〈OCC〉にも必ずこの必携品の事前チェックがありました。会場のスタッフによって、チェックされる(見せろ、と言われる)装備は変わるけれど、防水ジャケット(シームの接着を調べられました)、携帯電話、ヘッデン(と予備のバッテリー)は「見せろ品目」のトップ3でした。とはいえ、伸縮性テープ(100cm×6cm)の長さが足りなくて、町のドラッグストアに駆け込んだことがありましたから、油断なりません。
「え、なんのこと?」
ところが、なんと今年の「UTMB」では必携装備のチェックをしません、そんな場所もありません、そんなスタッフもいません。「え、いいんですか?」何度も確認したくらいです、「必携装備のチェックはありません」と言うのです。「装備チェック? え、なんのこと?」とわけがわからないスタッフもいるくらいです。昨年から必携装備の事前チェックは廃止されたようです。
勘違いしないでほしいのだけど、必携装備のリストは変わらずあるし、ひとつ残らず携帯しなくてはいけない、というルールは変わりません。コース途中でチェックがあって装備を持っていないとペナルティ(失格を含む)が課せられる、というルールも変わりません。単にビブ/ゼッケン受け取りの際に装備チェックがなくなったというだけのことです。
選手を疑うの?
「装備の事前確認」は高所&長時間走への注意喚起であることはわかるけど、「装備を持っているかどうか、ここで見せろ」とは失礼きわまりない話。同時に、オーガナイザーはこの必携装備のルールについて、選手を疑っているってことになります。
ですから、この「必携装備の事前チェックなし」は大きいなあ。「UTMB」は始まって20年以上になるし、またこのシャモニ大会はシリーズの最終戦なので、ここを走る選手はウルトラ山岳高所のベテランばかり、選手は全員が「もし何か起きたときは?」がわかっている、という判断なのでしょう。
「あんたを信頼するよ」
必携装備は選手の責任と義務、すなわちウルトラトレイルの「正義」です。「大会側はあんたを信頼するよ」ということです。日本の大会運営にも影響するだろうなあ。
「GPSトラッキングをON」
それはそれとして。たくさんの選手を「ツールドモンブラン」に野放しにすることに変わりないわけで、オーガナイザーとしては選手それぞれの位置情報はきっちりしておきたい。なので選手は届け出た携帯電話に「ライブトレイルのアプリ」を入れることが必須、そして「GPSトラッキング」を「ON」にすることが必須となりました。いつでもどこにいても、オーガナイザーは選手ひとりひとりの現在位置がわかるんです。電話の予備バッテリーは「強く推奨」する装備となりました。
ヘリコプター捜索/救助の保険
加えて、ヘリコプター捜索/救助の費用をカバーしている山岳保険に加入していないと、走らせてもらえません。契約した保険会社と保険証番号をオーガナイザーに届け出ないといけません。
あれれ、以前より「UTMB」の安全管理は強力になっているじゃん。