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2014年10月28日

クワバラ

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THE OMM(UK 2014)レポート 1


11月に初の日本開催を控えたOMM(Original Mountain Marathon)。昨年に引き続き、本国UKのOMMに参加してきました。(Japan、Iceland、France等で開催されるレースと区別するため、本国のレースは”The OMM”と称される)。OMM Japanについては詳しいイメージをつかみかねている人も多いと思います。気象や地形、諸々のバックグラウンドがUKと異なる日本のOMMはUKと異なる点も多々出てくると思いますが、このレポートが少しでも参考になれば。(Photo by Takashi Chiyoda / OMM)

◆OMMとは?
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イギリスで1968年から開催されている2日間の山岳マラソンレース。いわゆる通常のトレイルランニングのレースとは以下の点が異なります。

・決められたコースはなく、自身のナビゲーション(読図)を頼りに指定のCP(チェックポイント)を通過しながらゴールを目指す
・途中エイド等の休息ポイントは一切ありません。
・2日分の水、食料、宿泊装備など約5kg-6kgの荷物をすべて携帯し行動する
・1日目夜に野営が必須
・2人1組が原則でレース中は常に行動を共にする
・途中リタイヤは基本的には不可能。レース続行が厳しいと判断した場合は自身でスタート地点への帰還、エスケープルートを使ってのゴール地点への移動、等の手段をとる。※万が一、選手の一人が怪我等で動けなくなった場合は、まずはじめにもう一人の選手が救助を要請するための行動を取る。そのための2人1組の行動であり、このシステムも重要な山岳スキルのひとつでもあります
(参照:OMM JAPAN RACE

毎年10月の最終週に行うのですが、この時期は普段から天気のよくないUKの中でも一番天候が不安定な時期とのこと。意図的に悪天候の中開催してそれらに対する対応力も試すというタフなレースです。
2014年の会場はノーサンバーランド国立公園(イングランド)。2013年はブレコン・ビーコンズ国立公園(ウェールズ)

◆カテゴリ(UK)
①ストレート
オリエンテーリング形式をとり、CP(チェックポイント)を指定された通りに回り、そのタイムを競います。難易度が高い方から、Elite、Class A、Class B、Class C、Class Dの5クラスに分かれています。(2014年のOMM JAPANでは1クラスのみ)
②スコア
ロゲイニングの方式をとり、決められた時間の中でどれだけ多くのCPを探し出し、得点を獲得できたかを競います。各CPの得点は異なりますので、正確なナビゲーションと、どのCPから回るかなどの作戦も大きな鍵となるレースです。Long Score、Medium Score、Short Scoreの3クラス。(2014年のOMM JAPANでは1クラスのみ)
各カテゴリ100組前後の参加があり、総勢2000名が参加する大規模なレースです。

◆日本からの参加
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本年度は日本から3組が参加。
村越・田島(共にチーム阿闍梨):Straight Class A
桑原(Run boys! Run girls!):千代田(OMM):Straight Class C
小峰・ジェフ(共にOMM):Long Score
桑原は昨年体調不良にてリタイアしたCクラスに再挑戦。小峰・ジェフのOMMコンビはスコアに参戦しながらレースの映像/写真素材を撮影するのが目的。チーム阿闍梨はAクラスでどのような結果を残せるか?

◆レース前日
大会のHQ(今回はClennel Hallという洋館でした)にてエントリーをすませます。野外フェスとかで巻かれる、紙のリストバンドとつながった電子パンチ(チェックポイント通過を証明する器具)をチームの1名が腕に巻かれます。翌日のスタートはウェーブスタートなのでその時間を会場に無造作においてあるリストの中から自分でチェック。スタッフは教えてくれませんw HQにはその他、必要装備品(コンパス、ガス、ドライサック、補給食)とOMM製品を購入することのできるショップ、フードコーナーが設置されています。大半の参加者が前日入りし、テントサイトで宿泊。翌日早朝のスタートに備えます。我々もレースに備えてテントで早めの就寝。
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◆装備
走るために軽量化しつつ、宿泊で体力消耗しない必要最低限の装備。これが一番頭を悩ませます。前述のようにUKは基本悪天候なのでその点も考慮しなければ行けません。結果、今年は以下の装備にしました。寝具+寝るときのウェアリングは前日のテント泊で試して丁度良かったもの。
テント:Nordisk / Telemark 1 ULW Carbon
-ダブルウォールで770gという軽量テント。ペグ4本とポール一本で素早く設置できる。昨年は880gの2人用を使ったが今年は1人用でチャレンジ。桑原が幕、千代田がポールとペグをパッキング
635o
寝袋:OMM / Mountain Raid 1.6
-化繊で430g、最適温度4℃
ビビィ:Terra Nova / Ultra Bivi
-50gのキューベンファイバー製ビビィ。エマージェンシービビィより軽く耐久性も高い。通気性がないため化繊の寝袋と組み合わせ、蒸らして寝袋内の温度を上げる。パッキング時はザック内の防水ライナーとして使用
マット:Klymit / Inertia X-Lite
-200gを切るハーフサイズのエアマット。肉抜きされた形状が特徴
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ザック:OMM / Classic 25 +H2OMM(ボトルポーチ)x2
-雨対策として薄手のゴミ袋+キューベン製のビビィをライナーに使用
ボトル:OMM / Ultra Bottle(500ml)x2
-うち一本はキャップ部をセイシェル(濾過ボトル)に交換
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-桑原はClassic25に大分コンパクトにまとめたつもりが、千代田はPhantom20にサーマレストネオエアー(400g)とサイズの大きい羽毛ダウンシュラフもパッキングしてこのサイズ。流石です…
ストーブ:SOTO / マイクロレギュレーターストーブ ウインドマスター
-悪天候・強風に備えて。ガスは会場で110g缶を購入
クッカー他:EVERNEW / チタンウルトラライトクッカー1、SEA TO SUMMIT / X Cup、MSR / スポーク
<1日目ウェア>
キャップ:Arc’teryx / Phase AR Beanie
ベースレイヤー:Arc’teryx / Phase SV Zip L/S
レインシェル:OMM / Kamleika Jacket
パンツ:Arc’teryx / Phase SL Boxer
タイツ:Patagonia / Verocity Running Tights
ショーツ:OMM / Kamleika Short
ソックス:Drymax / Maximum Protection
シューズ:inov8 / X-Talon 212
グローブ:Terra Nova / WaterProof Power Liner Glove
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OMMの新作2.5レイヤーレインジャケットAeon Jacketで出ようと思っていましたが、かなりの強風と寒さだったため防風性、保温性に優れるKamleikaに変更。シューズは昨年参加してみてOMMレースに一番合うと思ったInov8の212をチョイス。藪漕ぎと防寒を考慮してタイツ+防水のショーツの組み合わせ。千代田はPolartec Alpha使用のインサレーション、HOUDINI C9 Loft JacketをパッキングしOMM Aether Jacketで出走。
<2日目ウェア>
キャップ:Arc’teryx / Phase AR Beanie
ドライレイヤー:Finetrack / フラッドラッシュアクティブスキン(寝間着兼用)
ベースレイヤー:Arc’teryx / Cyclic Zip(寝間着兼用)
レインシェル:OMM / Kamleika Jacket(寝間着兼用)
パンツ:Arc’teryx / Phase SL Boxer
タイツ:Finetrack / フラッドラッシュアクティブスキン(寝間着兼用)
レインパンツ:OMM / Kamleika Pants(寝間着兼用)
ソックス:Drymax / Cold Weather Running
シューズ:inov8 / X-Talon 212
グローブ:Terra Nova / WaterProof Power Liner Glove
2日目はほとんどのアイテムが寝間着兼用、かつ1日目より装備を少し暖かく。
<その他>
インサレーション(中綿ウェア):OMM / Rotar Smock(寝間着兼用)
レインキャップ:OMM / Kamleika Cap
ウインドパンツ:Patagonia / Houdini Pants(降雨でレインがずぶぬれ時予備の寝間着)
ライト:Silva / TrailRunner 2
ドライサック:Scrubba
コンパス:Sunnto / Arrow-6
その他エマージェンシーキット
<行動食>
メダリストx16(1日目10、2日目6)
Vespa Hyper x1
Trail Bar x2
オリジナルトレイルミックス(カシューナッツ+ポテトチップス+山よりだんご)
<食事>
マジックパスタx2(夕食・朝食)
たまごスープx2(夕食・朝食)
Extreme Ultra Fuel ホットチョコレート(朝食)

◆レース1日目
スタートはHQより徒歩25分の場所。我々のチームは9:45~10:00スタート。9:40にスタート地点につきました。昨年はクラスごとにいくつかスタート地点がありましたが、今年はすべて同じスタート地点の様。ラフな手書きの案内にそってCクラスのスタートグリッドに進みます。そこで初めて地図を受け取り、1分後にスタート。
DSC00905_s
-スタート地点。奥にカテゴリごとのスターティンググリッドがあります
地図はラミネーションされたA2サイズのもの。縮尺は日本ではなじみの少ない1/40,000(イギリスの標準的な縮尺とのこと)。今回のポイントは13カ所。すべて直線で結ぶと距離23.9km、1760mの累積標高です。地図上にはCPを示す○と、地図脇にCPのヒント(Hill,TopとかStream Junction等)と各CPの関門時間が書かれています。
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-マップ。持ちやすいように小さく折り畳んでいます。
僕らの参加したCクラスは少し変則的で、1~3のCPを順番にとった後、8個のCPから任意の4つをとり、再び8~13のCPを回るという形式になっています。ランナーを分散させることで前のランナーについていってポイントをとることを防ぐためだそう。自由度が高くて面白いです。
さてレースですが、スタートすると各ランナー血相を変えて走っていきます。去年の初参加の時、どちらかというと日本のロゲイニング大会の様な、トップの選手はシリアスに、イージーなクラスの選手は和気あいあいと進むと言うイメージを持って気楽にのぞんだんですが、THE OMMは違いました。どのクラスの選手も真剣で前のめりです。今回も多くの選手がスタート脇の急登(薄い踏みあとレベル)をガツガツ上っていきます。僕らはその脇に林道があったのでそちらを選択。こちらを選んでもCPまでの距離はほとんど変わらないように見えるのだけど、こちらには選手はほとんどいませんw
ちなみに、各クラスが同時にスタートすることで、コース上を走っているランナーがどのクラスでどのCPを目指しているかというのは全くわからなくなります。ゼッケン等もないため、ランナーのクラスを知るには直接聞く以外はありません。このことにより、安直に前のランナーについていってポイントをとるという行為が無くなり、また参加ランナーのルートが分散されることによって自然へのインパクトが減らされます。非常によいシステムだと思います。
僕らのCP1はヒントに”Sheepfold”と書かれた場所。林道を進み左側の森が切れた場所から狙うと良さそうと話しながら進みます。ただ、地図上には無数の線(様々な色で破線の種類も色々)があり、スタート直後にはそれが何をさしているかわかりません。緑の点線上にCPがあるはずなんだけど、これは柵?トレイル?そもそも”Sheepfold”って何?と頭に「?」が沢山並んだまま。結局地図で森と表示されていた場所が行ってみたら伐採されてたりして、現在位置すらうまくつかめず、CP1をとるのに相当手こずってしまいました。後からログを見るとスムーズに行った場合+40分のタイムロス。ただ、”Sheepfold”は羊を囲うための円状の石垣、緑の点線はトレイル、灰色の薄い実線は柵、と言うことは覚えましたw (今回の舞台はノーサンバーランドという国立公園の中なのだけど、至る所に羊が放牧されていました。)
ここで昨年を思い出しました。体調が悪かったこともあり、昨年も直登を避けて巻いたルートでCPを狙っていましたが、イギリス人選手はほぼ全員ルートを可能な限り直線でつないだルートで攻めていました。迂回ルートは負荷は少ないけど距離がよけいにかかるのと、迂回ルートからCPを狙う位置を決めるのが難しいというデメリットがあり、僕らもここで考え方をシフト。基本全部直進で行くことに。昨年もそうでしたが、UKのフィールドはアップダウンの激しい丘陵地帯がメインで、高いところに上れば俯瞰してCPの目処をつけやすいと言う良い点もあります。
CP1からはコンパス直線でひたすらまっすぐ進みます。CP2は等高線が密に詰まったピークを2つ越え、深い谷に二度おりて3度目の登り返しの途中。迂回路のトレイルから行く選択肢よりも結果こちらの方がやはり早そうでした。
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-こんなスケール感。CP2は正面の山の左に見える谷筋の上の方にありました
これで調子をつかみ、ここからコンパス直進とSheepfoldや柵等を目印にほぼロスなしにCPを拾っていきます。CP3からその後の4つのフリーポイントもスムーズにとり、CP8をとった時点で関門に2時間の貯金。前回は体調不良を差し引いても時間に間に合ったかわからないレベルだったので、今回は”完走”という目標が見えてきました。その後CP9も順調に拾い、藪漕ぎしながら深い沢筋へおりていくCP10もうまくアプローチでき、「あれ?今回は楽かな?」と思っていたらそこからがきつかった。
この日の天気は軽い雨が降ったりやんだりだったんですが、CP10から先はとにかく強風ゾーン。TM REVOLUTIONを遥かに超えるレベル。ウェアがムササビのようになり、まっすぐ進むこともおぼつかない。日本の大会でこの強風だったら中止になるなと言うレベルでした(UKのフィールドは滑落等の危険性がある場所があまりないので身の危険を感じる訳ではなかったのですが)。それにあわせて、この辺のエリアは地面が球状にでこぼこしていたり、ぬかるんでいたりして足場がとにかく悪い。本当に消耗しました。ただそんな中でもイギリス人選手はガツガツ走っていて本当に強いなと思いました。
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Jokke Sommer Dream Lines IV
そんなこんなでCP11をなんとかとり、続くCP12はポイントを定めてからのコンパス直進で一度のずれもなくドンピシャでゲットできてこれは快感でした。後はゴールするのみ。この辺で日が暮れてきてヘッドライトを点灯します。が視界が開けているフィールドにも関わらずナビゲーションの難易度が一気に上がります。進んでいると思っていた方角から結構ずれ、それでもなんとか関門1時間前にゴールしましたが、そこで驚愕の事実が判明。ゴールスタッフによると我々はゴール手前のCP13をとっていないというのです(これまで回ったCPやタイムはゴールですべて印刷される)。ゴールとCP13が近すぎて、てっきりゴールがCP13だと思っていたのが間違いでした。慌ててフィールドに戻りCP13を探します。ゴールから真北に100mくらいのところのはずなんですが、暗さと膝丈の薮のせいで見つけるのに30分くらいかかってしまいました。そんなこんなで気を取り直してゴール。初日のタイムは9:30:41。初日Cクラスに参加した100チーム中99位でしたw ただ、今年の方がフィールドもコンパクトでやや難易度が低いかなとは思ったものの、数カ所CPをスルーして初日ゴールした昨年と比べると上出来かなと。とりあえず自分たち的には及第点です。尚、自分たちの通ったルートは距離にして33.26km、獲得標高2,042mでした。(SUUNTO AMBIT3 計測
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尚、たらればの話しですが、CP1とCp13をスムーズにとっていたとしたら1:10くらい時間短縮できたと思うんですが、仮に8:20でも順位は90位だったみたいです。中間の50位で6:30。今回の僕らだと、走れるところさぼらずに走ってこのレベルでしょうか(今回は完走目的のためあまりタイムに重きを置かなかった)。ちなみにトップは4時間ちょっと。距離はともかくあの気候と足下の悪さの中ナビゲーションしながらこのスピードはちょっと想像がつきません。とにかくイギリス人選手のタフさは異質な感じがしました。
長くなったので、今回はここまで。次回はキャンプサイトの様子と2日目の様子をレポートします。

PROFILE

クワバラ | Kei Kuwabara

Run boys! Run girls! 店主。体重が増減しがち。その分ダイエット得意がち。2020年に何かの大会で10位以内に入るプロジェクト」通称「にな10」を立ち上げるもコロナ禍やなんやかんやで頓挫。UTMF、UTMBや、Pine to Palm(Oregon / 100mile)、OMM (UK)などを完走しています。

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