フジロックを通じて学ぶルールとマナー
日本では歴史の浅いトレイルランニングについて考える時に、既存のサッカーや野球のようなメジャースポーツと比較して考えたくなります。しかし統括する組織の有無や経緯を考えると参考にならないことも多くあります。新しい文化を創って来たモノを探すとありました。
『FUJI ROCK FESTIVAL』
1997年が初回の開催。伝説の台風直撃で二日目は中止となったそうです。主催者も集まるお客さんも宿泊型のフェスなんて知らないことばかり。関係者に聞くとこのスタッフ人数でフェスはムリだろう!という事ばかりだったそうです。
何かと似てませんか?伝説ともなっている『OSJ八ヶ岳スーパートレイル』※もそうでした。11月の八ヶ岳は天気次第では、ハイドレーションのホースの中の水が凍り飲めなくなること。屋外に並べたドロップバッグが夜露で濡れて凍ること。エイドではスタッフ用の弁当が凍って食べれなくなること。調べれば知識として得られることでもやってみないと分からないことが沢山ありました。教えてくれる専門家も周りにもいませんでした。
フジロックに話しを戻せば 『FESTIVAL CRISIS ~だからお互いに変わる・変える~』というルール変更やマナーへの指針をチケット購入前にということで2020年強く打ち出しています。印象的な変更としては組み立て式の椅子(ヘリノックス)の持込を全面禁止にしたこと。私も一度だけ行ったフジロック 野鳥の会の長靴とヘリノックスは買って行きました。組み立てた椅子を背負って移動するのも風物詩であります。しかし椅子の脚が誰かの顔に当たるという事故や場所取りとして無人の椅子が置いてあることも多くあり、マナーとして啓蒙活動を主催者はしていましたが、改善は仕切れず今年からルールとして禁止となりました。
スポーツにおいてのマナーは『スポーツマンシップ』として表現されることが多い。オリンピックでは『オリンピック憲章』としてオリンピック精神や理念が規定されている。トレイルランニングを行うためのマナー問題をマナーとして扱える間にきちんと守って拡げていかないとフジロックの例のように超便利な椅子でさえルールとして禁止になってしまいます。トレイルランニングでは競技としてのルールではなく、社会全体のルールとしてトレラン禁止になる可能性も大いにあります。
トレイルランニング大会はスポーツであるならばルールを守る必要がある。スポーツはルールがある中で競い合うことで成立しているからである。大会ごとに違うルールではありますが安全と環境配慮に基づいて構成されていると認識しています。救護担当としてレースに関わっていてもルール違反は多く見受けられます。確信犯もいれば・無自覚でそうなってしまった選手もいます。そこに共通するのは何故そのルールがあるのか理解出来てないこと。救護所に『絆創膏下さい』と言いに来る選手、リタイアバス待ちの間レスキューブランケット使って下さいとお伝えすると『寒そうな選手に渡した』という選手、熊鈴必携品のレースなのに妙に静かなエイドステーション 皆さん、”装備チェックがなければ持たなくて平気”という思考で安全は保たれますか?ルールすら守れないのにマナーは守れますか?
大きな事故があっては山を走るのは危険という認識が社会全体で強くなりトレイルランニング大会も開催されにくくなっていきます。その一端を担っているのは選手ひとりひとりなのです。
『ルールで縛られていく競技化を目指していくのか?』
目指すところは人によって違うと思いますが、もっと自由に山を走りたくない?時には立ち止まり対話することも大事にして欲しいです。
※1 あまりの寒さでエイドにスタッフがいなくなり無人エイドもあった。無論無人では水もなくなりタンクの中で凍っていたそうです。無人で水もなければエイドではない 2012~2013年2回のみ開催
白くま隊の伝説レース記録