リスクマネジメントのススメ
トレイルランニングで大きな事故を防ぐのに必須となるリスクマネジメント。救護担当をするスタッフ研修で必ず伝えることは『リスクに対する認識の共有化』です。
救護担当だけではなく、選手・運営責任者・スタッフ(ボランティア含む)で現状どんなリスクがあるのか?そのリスクを取るとどんなことが起こる可能性があるのか?みんなで共通認識を持ちましょう。白くま隊では選手のみなさんが大きな事故や怪我などで翌日からの社会生活に支障が出て、『そんなつもりはなかった』という気持ちに成らないことを目指しています。
例えば、救護所に訪れた選手で「足を捻ってしまって走ると痛いが歩けるから完走したい。」という方がいたとします。骨折の可能性が高いかその場で評価をして、歩き続ければ痛みは強くなり腫れること。場合によっては明日以降も歩くのは困難になるかもしれない。フィニッシュしたとして自宅までは帰れますか?仕事は歩けなくても大丈夫?そういったことを伝えたり確認したりします。
天候次第では雨風吹けば低体温症のリスクも上がってきます。コースレイアウトやその日の天候によってもリスクは変わってきます。足が痛いだけでは命に問題ないけど、実際はその後の事も含めて相談が必要なのです。無条件に励ますボランティアスタッフもよくお見掛けしますが、白くま救護は冷静に事実を並べます。気持ちだけでは命は守れませんから。
リスクには現実化する可能性の大小とその後の影響の大小がある(と思っています)。命に関わるリスクではあるが可能性がとても低いもの(これ以上避けようがないこと)に過剰に不安を感じても仕方ないです。過敏にリスクを恐れるあまり生まれるリスクもあります。
先日新型コロナウイルス対策の一案として職場で換気をすることになり、普段は開けない避難用の窓を開閉しましたた。何の配慮もなく開ければ窓から転落してしまうぐらい大きく開いてビックリしました。やはり普段開けないのには理由があるのですね。こんな時はリスクに対する認識の共有化が大事なので、その場にいる方々に意外と危ないことを周知しました。
大きなリスクは誰でも回避したいと思うでしょうが、回避する方法は具体的には多くありません。では何を大事にするべきかと言うと、小さなリスクを回避することです。それが大きなリスクを回避することに繋がっています。いつだって元気に走っていること。天候悪化に備えて装備も余裕を持つこと。調子に乗ってオーバーペースで進まないこと。小さな体調不良を予防することがどれだけ大事なことか今一度考えて欲しいです。
何があっても完走するという心意気はステキですが、それでは安全性は向上しません。その場の気持ち次第では判断に迷いが生じるから、どんな状態になったらリタイアするのか、事前に状況を想定しておくことをおススメしています。