個性を活かす
スポーツをする上で個性はとても大事だと思います。
野球を例に個性について考えてみると、全メンバーが同じ個性を持ったチームより、それぞれのメンバーが個性を持ったチームの方が、強いチームである一つの条件だと思います。
具体的に、全メンバーがホームランバッターであっても、大量得点につながるとは限りません。
ホームランバッターに加えて、以下のような個性のある選手がそれぞれの役割を果たすことで、得点力が増し結果として勝利につながるものだと感じます。
- ヒットをコンスタントに打てる
- 四球が多く出塁率が高い
- バントや犠飛での進塁打が打てる
- 俊足を活かして次の塁を狙う
- 得点圏で必ずランナーを返す
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トレイルランも同様に個性は重要だと感じます。レースで個性を上手く活用することで、自分の納得する走りにつながると私は感じます。
トレイルランは、マラソンとは異なりスピード・スタミナだけで完走できません。登り・下り・フラットなトレイルを走る技術はもちろんのこと、それ以外にも数多くの技術が求められます。
また。山中で怪我や事故を未然に防ぐために、このような技術を必要最低限で身につける必要があります。
必要最低限の技術を身に着けたその先に、これらの技術を均一に伸ばしていく必要があるのかと言うと、私はその必要がないと考えます。
例えば、登りが得意であれば登りの技術を磨くこと、走れるコースでコンスタントに走ることが得意であれば、その技術を磨くこと。
但し、得意なことを必ずしもレースで発揮できるとは限りません。例えば、距離の短いVKのレースで、登りが苦手な人が参加しても、満足する結果は得られないのは明らかです。
つまり、ショートレースでは得意、不得意の影響をかなり受けることになります。しかしロングレースでは、登りが苦手でも下りが得意であれば、下りを武器としてレースで十分に戦うことが可能です。
その理由について説明したいと思います。
登りが苦手でもUTMBは十分戦える
ここではUTMBを例に説明したいと思います。UTMBは累積標高が10,000mもあり、とてもハードなコースです。登りが苦手な人にとって、とてもハードルが高く感じられると思います。
しかし、私の経験から登りが苦手であっても、その苦手を補う得意なものがあればUTMBを完走することはできます。
苦手を補うものの一例として、走れるコースを得意としている人を例に、レース戦術について考えてみたいと思います。
以下のプロフィールに舗装路や林道など走れる区間をざっくり黄色で示すと、合計約40kmになります。つまり総距離のうち約1/4は走れる区間なのです。
ここで、制限時間と累積標高をUTMFと比べると、UTMBは46.5時間/10,000m、UTMFは46時間/7,500mとなります。
数字だけみると、UTMBはコンスタントに走る必要があるように感じますが、その必要はありません。
なぜならUTMB完走のポイントは、コンスタントに走ることではなく、一定ペースで休ますに動き続けることだからです。
私自身、走れるコースを得意とはしていませんが、仮に得意であった場合どのような戦術を取るのか?その答えは、走れる区間は歩かずに走る。
その一方で、登りは体力を温存しながらゆっくり登る(登りで他のランナーに抜かれようが一切気にしない)。レース後半・最終盤まで走れる区間を走ることができれば、十分に完走することができます。
心技体いずれかの個性を活かす
ここまで技術面にフォーカスしてお話しましたが、技術面以外にも「心」「体」でも同様に個性を活かすこと。これも選択肢の一つだと思います。
ちなみに私は技術面において突出した個性は残念ながらありません。その一方で、メンタル面では誰にも負けないという自信があります。その顕著な例を一つ挙げると、レース中に骨折しても完走するメンタルの強さです。
Swiss Peaks 360kmのレースで、約200km地点で転倒により右手を骨折しましたが、ストックが使えず、ご飯もまともに食べれない状態で、大会スタッフや一緒に走ったランナーの助けを借りながら、残りの160kmを走り切ることができました。
常識的に、骨折した場合はDNFするのが普通です。しかし、その当時はDNFは一切考えず、困難な状況の中でいかにレースを楽しむこと、ただそれだけしか考えていませんでした。
エイドでドクターストップの危機が何度かありましたが、私の完走したい熱意がドクターに伝わったのか、最後までレースを続けさせてくれたことに今でも感謝しています。
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自分の個性を見つけ、徹底的に伸ばす。その個性を武器としてレースで上手く活用して戦う。自分の納得する走りをするための一つの解だと思います。