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2024年6月18日

内坂庸夫

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ポール/2つ目の走力

国内レースでは珍しく「奥信濃100/オクシナ」は、(特定区間を除いて)ポールを使えます。海外レース経験者からの情報もあるでしょう、ポールを使うメリットも知られ、「オクシナ」では多くのポールランナーが見受けられました。

だけどね。「オクシナ」でポール・デビューなのかな? ポールの取り扱いも、その操作もわかってない人が多かったよ。

保護キャップ

1)
いちばんのびっくり。ほとんどのポールランナーが、ポール先端のチップ(とんがり)を保護するキャップをつけたまま、国内事情を知ってか知らずか。「え、先端が重いでしょ、滑るでしょ、不安定でしょ、危ないでしょ」。保護キャップははずして使った方がいいと思うな(*)。ボールペンや万年筆と同じです、キャップがついていたら正しく使えないと思うな。

先端を前に、水平に

2)
フラット区間になって、ポールを使わないとき。グリップ部分を掴んだまま走り出すランナーが多かったです。これだと、腕ふりのたびにポール先端が後ろに向きます、後ろのランナーを危険にさらします。絶対にダメです。そもそも腕が疲れるでしょ、軽いとはいえそんな長いものを振り回してたら。

ポールを使わないとき(&すぐ使うとき)は、「先端を前にして」「ポールを真横/水平にして」運びましょう。左右それぞれ、ポールのセンター(重心位置)を見つけて、人さし指・中指・親指の3つでつまむように、水平にバランスをとります。これでポールなし、と同じように、腕ふりができます。しっかり握る必要はありません、最近のポールは軽いから、指先にひっかけるだけで大丈夫、落としたりしません。大事なことなのでしつこくもう一回、「安全優先」「先端を前に」です。もちろん、状況に応じて片手(二本あわせて)持ちもアリです。

どこに突く

3)
ポールは推進力とバランスをとるためのものです。急坂ではカラダの前に突くことで前傾姿勢を(筋肉を使わずに)保てるし、足場の確保も安全にラクにできます。ゆるい上りなら、カラダの重心より「後ろ」に突くことで推進力を得ることができます。とはいえ、ポールに頼り過ぎると、腕があっという間に疲労します、あくまで補助の推進力として考えましょう。

なので、平地やゆるい上りではカラダの前にポールを突くことは「原則として」ナシです、だってブレーキになってしまうから。でも、オクシナでは一歩ごとにブレーキをかけてしまう、もったいないランナーが多かったなあ。

ノルディックウォークキングの講習会に(一度でいい)参加して、平地やゆるい上りでは、どのタイミングで、どこにポールを突くのか、そしてそこから生まれる推進力ってどんなものか、を学ぶといいです。

もちろん、いちばんのお勧めはクロカンスキーだけどね。

長さを変える

4)
ひとたび購入したらポールの「長さ」は変えられません。だけど路面状況や斜度によって、必要な「長さ」は変わるんです。急斜面でカラダの前に突くとき、斜度が急になるほど、ポールは短くなります(短くしたい)。片斜面でトレイルの右側が盛り上がっていたらポールを短くしたいし、トレイル左側が下がっていたら、そっちはポールを長くしたいでしょう。トレランのポールは、状況に応じて掴む位置を変える(長さを変える)ものなのです、スキーのそれとは違います。

ですから、グリップを5本指でしっかり握りしめてはいけません、疲れるし、握る位置を変えにくいですから。人さし指・中指・親指の3つでつまむくらいの力感で十分です。これなら、臨機応変、すぐにそのつまむ位置を(ポールの長さを)変えられます。

繰り返し大事なこと。トレランポールは大きな力をかけて推進力を得たり、体重そのものをかけてバランスをとったり、という道具ではありません。あくまで、推進力の補助、バランスの補助です。だけど距離や時間が長くなると、この補助の効果はとても大きくなります。言葉を変えれば、正しく使わないとポールを持っている意味がないどころか、無駄に疲れます。

2つ目の走力

ポールは使えないなら使わないほうがいいくらいです。でもせっかくポールを持っているなら、しっかり学んで、経験を積んで、あなたのふたつ目の走力にしましょうよ。100マイル、100kmはもちろん、50km以上の距離を目ざすなら、絶対にポールを「効果的に」使えるようになっておきましょう。ポールのあるなし、その差はめちゃくちゃ大きいですから。

撮影/藤巻翔


本場欧州の山では多くの登山者が、そしてトレイルレースでもポールを使います、もちろん保護キャップをはずしてです。ですが、国内の登山者、ハイカーさんの間では「トレイル保全のためにポールは保護キャップをつけたまま使用しましょう、いや、保護キャップは必要ない」と論争が多いようです。

ポールの「先」を突くことは路面のストレスになるのでしょうか(トレイル外の植生を突くことは論外ですが)? キャップをつければストレスはないの? かえって広く負担がかかるのでは? そもそも路面によって違うでしょう? 岩場は? 林道は? 雨の日は? 腐葉土だったら? その日ポールを使う人が50人なら? 100人だったら? 言い出せばキリがありません。

ですから、すべては大会主催者の判断です。主催者はトレイル環境や選手の安全など多くのことをひとつひとつ考慮して競技規則を決めています。ポール使用OKとされている区間をウチサカはキャップをはずして使用しました。

 
内坂庸夫
 

───

(Run boys! Run girls! 桑原の意見)

山と渓谷のこの記事にあるように、ポールのキャップは基本的につけて使用するものだという考えは国内において主流なのかなと思います。

一方、日本でBlack Diamondのポールを販売するロストアローのwebではこのような記載が見られます。

●ティッププロテクターの使用
ブラックダイヤモンドポールには、ポール先端をカバーするゴム製カバー(ティッププロテクター:写真)が付属しています。

1:携帯時
荷物の外側にポールを取り付ける際、他の人や物を傷つけないようにするのに便利です。特に電車や人ごみの中で装着すると効果的です。

2:登山道
登山道ではティッププロテクターを外して使用するのが基本です。植生や登山道、木道を傷つけたくない場合には、プロテクターを装着したり、ポールの使用を控えることもあります。
※ティッププロテクターを取り付けると、岩場などでポールの先端が滑ることがありますので、通常は取り付ける必要はありません。

ただ、どちらの文章も、状況に応じてという前置きを含んでいますよね。ポールにキャップをしているしていないに関わらず、更にはポールを使う使わないに関わらず、自分のどのような行動がトレイルや植生にどのような影響を与えるか?(キャップをしていてもトレイルを外れて走ったりしてたら意味ないですよね?)また、道具の本来の用途と、どう使うのが安全で効果的か?そういったことを自分の頭で適切に判断して行動できるランナーが増えることが一番大切だなと思います。

PROFILE

内坂庸夫 | Tsuneo Uchisaka

「ヴァン ヂャケット」宣伝部に強引に入社し、コピーライティングの天啓を授かる。「スキーライフ」「メイドインUSA」「ポパイ」「オリーブ」そして「ターザン」と、常にその時代の先っぽで「若者文化」を作り出し、次はなんだろうと、鼻をくんくん利かせている編集者。
 2004年に石川弘樹に誘われ生涯初のトレイルラニングを体験(ひどいものだった)、翌年から「ターザン」にトレイルラニングを定例連載させる。09年に鏑木毅の取材とサポートでUTMBを初体験、ミイラ取りがミイラになって12年吹雪のCCCに出場(案の定ひどい目に遭う)そして完走。(死にそうになったにもかかわらず)ウルトラってなんておもしろいんだろうと、13年、UTMBの表彰台に立ちたい、自身の夢をかなえようと読者代表「チームターザン」を結成する。
 「ターザン」創刊以来、数多くの運動選手、コーチ、医者、科学者から最新最良な運動科学を学び、自らの体験をあわせ、超長距離走のトレーニングとそのマネージメント、代謝機能改善、エネルギー・水分補給、高所山岳気象装備、サポート心理学などを研究分析する。ときどき、初心者のために「100マイルなんてカンタンだ(ちょっとウソ)」講習会を開催してる。

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