遥かカナダの“お山”の映画祭 #Tip of the iceberg Newspaper19
毎度おひさしぶりのケロズです〜!大変ご無沙汰しておりました!皆様お元気でしょうか?この数年の間に私はカナダの永住権を申請しておりまして、それが無事に承認され、2年ぶりにバンクーバに戻ってまいりました。2014年からカナダに2年、2017年はニュージーランド、2018年はインド、ネパール、亀岡(日本)をめぐりました。ここ数年荷物を極限に抑えた生活をしていたので、今こうしてバンクーバーで部屋を借り、毎日同じところに歯ブラシを置く場所があるという当たり前の生活に感動しております。
家探しや仕事探しと並行して、つい最近まで第22回バンクーバー・インターナショナル・マウンテンフィルム・フェスティバルのボランティアをしていたので、今回はそのことについてお話しします。通称VIMFF。映画祭のトレイラーhttps://vimff.org/vimff-2019-trailer/もぜひぜひ。
映画祭は2/22〜3/3までの10日間で、お昼にはアウトドアフォトグラファー・フィルムメーカーに向けたワークショップ、夜にはトークショーとドキュメンタリー映画の上映。“トレイルランニング・ナイト”、“バイクパッキング・ナイト”のようなスポーツごとの夜もあれば、バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州に特化したアウトドアカルチャーナイトなどなど色々ありました。
私はそのうちの4日間ボランティアとして参加、仕事内容はチケット売ったり、フリーマガジン配ったり…といっても活動する時間は1 時間程度で、その日の映画が無料で観られる特典つき(映画館によってはビールやピザもついてきた!)。映画が始まりそうになるとボスが「はいはい!終了終了!ありがとー!はい、手を止めて!使ったものはそのままそこに置いて場内にビール持ってゴーゴー!」みたいなノリで「キリのいいところまでやる」みたいな感覚はこちらにはないんですね…。
さてさて初日は2本のドキュメンタリーで、1つ目はアラスカで開催されているNomeという町までファットバイクで横断する1000マイルのレース「Iditarod Trail Invitational」を追ったドキュメンタリー、「Safety to Nome」。実際にドキュメンタリーを撮影したカメラクルーと前大会の優勝者が登壇し、撮影時の状況を語ってくれました。
マイナス30度の世界でも思ったよりバッテリーは持つし、機材も問題なかったけれど、とにかく手先が冷たすぎて主に「肘で」撮影したことや、追いかけていた選手が途中でリタイヤした時が心身ともに一番辛い瞬間だったなぁと話していました。また質疑応答の際には「次のエントリーはいつから?」「レースに出るのにかかるおおよそのコストはいくら?(答えはエントリー、バイク、ギア、フライトなどなど全部含めると100マン円はかかるよねぇ、、とのこと!)」などと「え?なになにみんなあれか、このレースに出たいんか?」と思われるがっつり突っ込んだ質問が次々と交わされ、私も例にならって家に帰ってからエントリーフォームを確認してしまいました!笑 (エントリーしたい方は是非ともこちらを!http://www.iditarodtrailinvitational.com)
2つ目は網膜色素変性症という目の病気を患った主人公のドキュメンタリー「Focus」。34歳にして視力がどんどん失われつつあることを知り、山岳ガイドになる夢を諦め、運転免許証も停止…などなどの境遇を踏まえつつ、それでも残された視力のある日々の中で自分がやってみたかったことを全力で成し遂げるストーリー。ロッククライミングをゼロから1年間みっちり学んで、ヨセミテのEl Capitanを一人で登り切ったり、タンデムバイクを始めて3年でリオ・パラリンピックのチャンピオンに輝いたり、スウェーデンのラップランドで開催される150kmの真冬のウルトラマラソンにファットバイクで挑戦して完走、ってすげー!このフィルムには心を打たれました。
2日目はなんとTrail Running Night!この夜は前夜とは打って変わって出だしからMAXハイテンション、エンタメ感1000%の笑いの絶えない夜でした。皆さんお馴染みJoe Grantがコロラドにある全57に及ぶ山をバイクやトレランで踏破したドキュメンタリー、「The Middle Way」。さらに100マイルを走ったことのなかったあるアメリカ人男性が1年間毎週練習を重ねて100マイルを走り切った話。ゲストとしてこの作品のディレクター兼ライター(彼も主人公と一緒にトレーニングし、100マイルを走りきった)のBrendan Leonardが登壇し、「そもそもウルトラランニングとは?」というところから自分なりの考えを話していて、それにめちゃくちゃ惹きこまれましたよ私!彼がいうにはウルトラランニングとは、「お菓子をつまむ/走る/歩く」のコンビネーションだそうです。それ以外にも彼のアウトドアスポーツ哲学満載のウェブやインスタグラムが個人的にはとっても面白いので興味のある方はぜひ!
3日目はなんとなんと2つ目のTrail Running Show!司会はカナダのトレイルランナーAdam Campbellで、しょっぱなに「10日間の中でトレランナイトが2日あるってこりゃすごいよね」と話し、トレランが引き続き盛り上がっていることを強調してました。この夜はトレランに関するドキュメンタリーフィルムが3本。その中でも特にいいなぁと思ったのは69歳でランニングを始め、毎年最高齢フィニッシャーの名を更新し、97歳になった今なお走り続けているGeorge Etzweilerさんの「For The Love Of Mary」。
6分という短い映像の中に彼の生き方、亡くなってしまった妻Maryさんへの想い、ペースメーカーが入っていても淡々と走り続ける姿にわたくし涙ちょちょぎれました。また他のドキュメンタリーはアウトドアメーカーがスポンサーについていることが多いため、映像の中にそのメーカーのロゴがちらつき過ぎるなぁ、え!もう新しいジャケットに着替えちゃうの?などという場面があったのですが(しかしスポンサー無しにこの映画祭は成し得ないのでこれはあくまで映像に対する私の感想です)、彼は長年着用しているトレードマークの(穴の空いた)Tシャツに緑のショーツというシンプルなスタイルで、純粋に走る喜び、ランニングの素晴らしさを感じとることができる映像作品でした。
このフィルムフェスティバルを通して受け取ったメッセージは、スペシャルな人だけがスペシャルなことを成し遂げているわけではなく(ある意味ではみんなスペシャルなんだが)、すぐ隣にいる人たち、普段は必死に働いていて、育児に忙しくって、困難な境遇で難しい時間を送っている人たち、つまり私たち誰にでも成し遂げられる、ということ。そしてその困難の中には必ず、「笑い」と「ユーモア」があり、だからみんなで今こうしてあっはっはと笑いながらドキュメンタリーを観ることができるんだろうなぁと。願っているだけでは足りなくて、完璧ではなくても今から、今日から、小さなことから「動いていくこと」の大切さ。
ちなみにこのVIMFFはアウトドアフォトコンテストがあったり、バンクーバーのアウトドアメーカー、Arc’teryxをはじめとする各企業がフィルムメーカーに向けた製作費用の援助をするためのコンペをしたりと、ドキュメンタリー制作をサポートする体制がすごー!って感じでした。会場にはバンクーバーを代表するトレイルランナーGary Robbinsの姿も!「移民したんかい!良かったなー!」と声をかけてくれました。
と長くなりましたが、そんなこんなでいろんな問い、疑問、インスピレーションが降り注ぐ素晴らしいフィルムフェスティバルでした。山の映画祭があるっていい。携わった皆様、勇気をありがとうございました。
そんな私は現在スウェーデンのアウトドアメーカー、Fjallravenのバンクーバーストアで働いております。フェールラーヴェンと言えば四角いカバンが有名ですが、1960年から寝袋やアウトドアウエアを製造。Fjallravenとはスウェーデン語で“Arctic Fox”、北極のキツネ、という感じでしょうか。彼らは大きな尻尾を持っていて、マイナス30度を超える環境でも順応し、寝るときには自分の尻尾をブランケットにして鼻が凍らないように覆って眠るそうです。その風景を考えただけで宇宙の中に飛んでいけそうです。ちなみにスウェーデンでは、スウェーデンの地を横断できるような経験と強さを持ったハイカーを“A true Arctic fox”と呼ぶそうです。本物のフェールラーヴェンになりて〜!こちらはまだ始まったばかりなんで、まずは学びま〜す。
というわけで新しい生活が始まっています。ヤングが食レポを書いていたので、次回は私も食について書こうと思います!ではでは皆様もお元気で〜!チャオ〜!