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2019年9月9日

ケロズ

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カナダの名物レースはスタート前に祝福される?FAT DOG 120レースレポート #Tip of the iceberg Newspaper 残暑番外編 -byマサくん-

みなさま、毎度どーも!カナダからケロズです。

今回はTip of the iceberg Newspaper 残暑番外編!バンクーバーで出会った、日本人トレイルランナーのマサくんがカナダの有名なトレイルレース、「Fat Dog 120」のレポートを書いてくれました。

マサくんは現在ワーホリのビザでカナダに滞在し、信じられないくらい走りに走り、レースにもガンガン出ているパワフルエナジー人。「ランボーのブログ読んでます〜!よかったら会いたいです!」と今年の春ありがたいメッセージをいただき、彼に出会いました。

私は最近めっきりレースに出ておらず、カナダのレース情報をお届けできていなかったので、マサくんのレポートは非常に貴重。海外やカナダのレースに出てみたいなぁと思っていた方々、必見です!

ご挨拶・自己紹介

皆さま初めまして。山本将也(以下ニックネーム、マサ)と申します。
この度ご縁あって、レースレポートを書く機会をいただいたことに感謝しています。日本では柔道整復師として働いていましたが、幼少期からの夢であった「海外生活」と、トレイルランニングを始めてからの夢、「海外レースに出る」を叶える為、大自然のあるカナダへワーキングホリデーのビザを利用してやってきました。1年間という限られた期間の中でトレイルと地に根付くアウトドア文化を楽しもうと思い、昨夏からカナダとアメリカのレースに参加、完走しています。代表的なものでいうと、

  • 『Squamish 50』50/50(初日50マイル・二日目50km) 25:39:33
  • 『Mountain Lakes 100』101マイル 28:06:00
  • 『Diez Vista』50km 6:20:27
  • 『Survival of the Fittest』35km 4:52:47

などに参加しました。

今回は8月9~11日にかけて開催された、カナダ国内でもタフで有名なレース、『FAT DOG120』のレースレポートをお送りします。

レース情報

名称:FAT DOG 120(ファットドッグ120)
日時:2019年8月9日午前10時~11日午前11時
距離:122.9マイル(195.9km)
(その他120マイルリレー、70、50、40マイルの部門もある)
累積標高:26,870フィート(8,190m)
制限時間:49時間
場所:Manning Provincial Park(マニング州立公園)
大会Web Site:https://www.fatdog120.ca
参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=MQZ8RFGOYL4

完走の難易度としては、日本でも有名なHURTより難しく、Hardrock100よりやや楽、または走ることのできる路面が多い&距離が長いので、同等と感じる人が多いようです。

参加人数は最大250名(その他の距離は400名)、レースのエントリーは先着順です。短い距離のレースはエントリー開始から早めに埋まっていきますが120マイル部門は開催の1ヶ月半前で終了(エントリーを忘れていて最後の1枠に滑り込みました。汗)。開催場所のマニング州立公園はバンクーバーより東へ200kmほどの割とアクセスの良い所にあります。

例年ではマニング州立公園とその東側に位置するCathedral(カテドラル)州立公園を繋ぐルートで120マイルのコースなのですが、今年はカテドラル州立公園でのトレイルワークの為、マニングのみでの開催となりました。

海外のロングレースの特徴の1つはトレイルワークへの参加義務。トレイルワークとは、実際にトレイルを整備する作業に参加をすること。本職の方のように専門道具(電動ノコギリなど)を使用し、伐採などを本格的に行うだけではなく、雑草を抜いたりするような危険の少ない作業も含まれます。

重要なのはトレイルは自然と出来上がるものでは無く、人の手で作られていることを身をもって体験すること。体験することで自然を大切にする基本的な精神が育まれていく何とも大自然に囲まれたカナダらしい義務です。しかし海外から参加する選手でもトレイルワークの代わりに追加で寄付金をWebエントリー時に支払えば問題ありません(私も仕事の都合上参加できなかったので、寄付で代えさせて頂きました。参加したかった・・・)。

装備

日中と早朝・夜間と気温変化が激しいことを見越してノースリーブから長袖まで準備。

ドロップバッグ

海外レースの良い点はドロップバッグの設置数が多いところ。50kmほどのレースでも、中間で設置されている場合が多いので、荷物を軽くしたい・シャツを変えるなど快適に走れるように配慮されています。今レースではドロップバッグが7箇所(多い)。今回は確実に完走するために7箇所フル活用する事にしました。内容は主に補給食(おにぎり多め)。写真に加えて替えのシャツや靴下も入れました。

レースプラン

目標はケガなく制限時間内完走。これまでのレース結果から完走タイムを40~44時間を目安に設定。スタートが金曜日の午前10時なので、ゴールは日曜の早朝となり、計算上2回夜を越す必要があります。日中晴れていると気温は20度後半まで上がるものの、夜や早朝は1桁まで下がります。また、夜間に標高2,000m程の山を通過することもあるので、それ相応の準備が必要でした。

移動・ブリーフィング

レース前日の木曜日に受付・ドロップバッグ預け、レースブリーフィング(参加必須)があるので朝出発。

都市部からハイウェイを東に進み、アメリカとの国境近くのFraser valley(フレイザーバレー)を過ぎ、Hope(ホープ)という街に着きます。ここがマニング州立公園手前の最後の市街地なので、買い物等はここで済ましておくと良いです。

マニングパークリゾートはバンガローやBBQ、プールやテニスコートなども完備するリゾート地。子どもへの自然体験も開催する「青年の家」的な要素もある施設となっています。ちなみにロッジより数kmトレイルを南下するとPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)のアメリカーカナダ国境側北端に出ます。その為選手・クルー以外にも家族連れや大きな荷物を担いだハイカーなど様々な人たちで賑わっていました。

ロッジ内地下にて受付。ドロップバッグもそのまま預けます。参加者の国籍も掲示板に貼られていて、今大会で日本人は私だけでした。

受付後ブリーフィング。クルーも併せて参加可能です。

レース当日

私はサポートクルーによる車での送迎が可能でしたが、通常は受付会場のロッジ前から乗合バスでスタート地点に向かいます。

ここで1つ失敗。駐車場からスタート地点まで歩いて行ったものの、スタート地点までの目印が無く、どこがスタートかわからない!スタート15分前になっても、スタート地点に着く気配が無かった時はまさかのDNS(またはDNF)が頭をよぎり、とにかく急いで走りました。おそらく今レース中最大の登坂速度だったと思います。その結果何とかスタート3分前に到着(この時点で既に汗だく)!スタート前に全レーサー・スタッフから祝福を受けたのは初めての経験でした。笑

確かに、スタート地点の賑わいがこの写真にはない。笑 byケロ

レース

レース前に必携装備のライトやシェルなどを簡単にチェックしてスタート。天候はレース通じてやや曇り、時折小雨。気温は日中で20度台前半、夜間で1桁後半ほど。湿度はほぼ無くかなり快適な気候でした。

スタートから5kmほどはシングルトラックを並んで進みます。斜度の変化はあるものの、全体を通して走りやすい路面のシングルトラックがメインでした。

エイドはおよそ20km毎に設置されていて、ジェルやポテトチップス、水などの簡単なもののみ補給可能な小エイドと、写真のように食事がしっかりと準備されているエイドがあります(写真中央のグリルドチーズという日本で言うおにぎり的位置をカナダで確立しているサンドイッチがシンプルで絶品)。

エイドに着くとまず先にボランティアから「何が欲しい?」「何か食べ物持ってくるか?」と聞かれます。ボトルを渡したらすぐ給水してくれるし、休んでいると「まだいけるか?次のエイドまで〇〇kmで路面は・・・」などと声をかけてくれるなど、その手厚さに感動。非常に助かります。

夜間パートに入る夕暮れ時や日の出前には、普段見る事ができないような景色が姿を見せてくれました。

初日の夜間パートはひたすら睡魔との戦い。トレイルから少しだけ外れて仮眠を取ったり、カフェイン含有のジェルを飲む等してなんとか凌ぎ、朝を迎えた時の気持ちよさは格別でした。

二日目の夕方五時頃(スタートから31時間経過)に87マイル(140.7km)地点を出発。これより10kmほど舗装路の下り。車の往来もある道路だったこともあり、参加ランナーの安全の為、蛍光ベストを着させられました。笑 しかし、カナダは日本以上に夏は日が長い。夕方でも昼のように明るい。なので「コレ(安全ベスト)必要あるかな?」とスタッフの方と笑いながら話し、次のエイドへ向かいました。

下り区間が終わった後から最後の大きな登り、Frosty Mt.(フロスティ山)へ向かいます(写真奥右)。

ここは例年後半(大体90マイル~110マイル地点)に通過する区間。今レース上で唯一の岩場。区間中の11kmで1,100m上昇。平均斜度10%ほど。この区間の登りは全て歩く!とスタート前から決めていた為、ペースを一定にしながら進みました。同様に他の選手もストックを有効活用して同じペースで黙々と進んでいました。

この時で既に100マイル前後の距離を走っていたにも関わらず、身体は軽く感じていました。この区間前のエイドで仮眠やストレッチ、クルーによるマッサージなど、短い時間を有効活用して回復に努めたのが功を奏したようでした。

コース上の最高地点に到着したのは日が落ちてから。ここからはフロスティ山頂に向かわず下りになります。「やっと下りだ!」と思ったのも束の間、ガレた岩場の下り、強風、暗闇。はっきり言ってめちゃ怖かった。笑

ただ、周りの選手のライトの明かりもあったので、ロストする事は無く、「ここめちゃ怖いね!」「ここ浮き石あるよ。」とお互いサポートしながら進んでいきました。フロスティ山を下った後、もう一度登り区間があったのですが、「ここを越えればゴールまで下りと平坦!」と思い、可能な限り走りました。

140.7kmエイド手前の風景。

人間の身体は面白いもので、疲れていると自分で思っていても脚は動く。精神的な限界は身体的な限界の前に人は感じると言われていますが、まさにそれを実感した瞬間でした。

ゴールまで後6kmほどはマニング州立公園最大のLightning Lake(ライトニング湖)の湖畔をぐるっと一周。

スタートから44時間30分4秒、無事ゴール!

レース前にタイムテーブルを作成し、エイドでは補給・休憩、次の区間に適したウェアに着替えるなど一つ一つしっかりと行っていく事で、速くははないですが、大きなケガやダメージもなくレースの雰囲気や景色を楽しみながら走ることができました。

言うまでも無くカナダの国土面積は圧倒的に日本よりも大きく、BC州だけを見ても都市部はほんの僅か。広大な山林のそのまた奥までトレイルが整備されているのは自然を心から愛し、環境や生態系を壊さないようにするのと同様にどうやってその自然を楽しもうか?を真剣に考えている人々が多いから。

今回、レースを心置き無く楽しむことが出来たのとアウトドア・アクティビティの文化が深く根付いている事は無関係ではないと思います。北米のレースというとメインはアメリカ。世界からトップ選手が集まる有名レースも多い。カナダのレースはと言うとややマイナー。しかし、緯度が高いので夏は涼しく湿度の低い快適な気候・誰にでもフレンドリーな人々、日本からのアクセスの良さなど初めて海外の100マイルレースに挑戦する方にこそオススメできるレースです。

ぜひ来年の夏は『初めての海外100マイルレース』を楽しんでみてはいかがでしょうか?

プロフィール

山本将也(マサ)
愛知県出身。柔道整復師。カナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州バンクーバー在住(19年9月末帰国予定)。心身の健康の為にトレイルランニングを楽しんでいます。好きなビールの種類はIPAとサワー。

PROFILE

ケロズ | Shizuka Yoshimura

ランボー地球支部として世界を探索、いろんな人の心に窓を作ることをテーマに記事を書いています。過去4年間はカナダ2年、ニュージーランド1年、インド・ネパール半年、その後少し日本を経由して、現在はカナダの永住権を取得、バンクーバーで生活しています。今後さらに北上、極寒の地でアートとアウトドアの境目をユニークに生き抜くために少しずつ準備中。走ることが好きで、ロード、トレイル、夢の中、どこでも走ります。昼寝と動物が好きです。2014年裸で走るレース「Bare Buns Run」バンクーバー大会女子優勝。また現在幻冬舎が運営するウェブサイト、幻冬舎+(プラス)にて、「北極かえるのコモンロー日誌」も連載中。

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