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2021年10月27日

ケロズ

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町全体がブラックアイスでランニングシーズン終了!

カナダのユーコン準州はドーソン・シティに引っ越してきてはや2ヶ月。バンクーバーを離れた時はタンクトップにビーサンだったのに、すでにこちら極北の地は冬の装備に切り替わっている。外に出るときは冬の厚手のジャケット、手袋、ニット帽は欠かせない。1ヶ月前の9月はまだだいぶ太陽の光が眩しく、Terry Fox Runというチャリティ・ランニングイベントにも参加したのが嘘のよう。

ユーコン川の水が凍り始めてて、反対側へ渡るフェリーの運行がすでに終了している。

ランニングシーズン終了はある日突然訪れた。朝起きてパートタイムの仕事の面接に出かけようとしたところ、珍しく雨が降っている。なんとなく嫌な予感がして路面をチェックするとやはり!路面がとゅるんとゅるんに凍っているのだ。恐ろしいほどぴっかぴかに輝き、私が家から一歩踏み出すのを今か今かと待っている。

ファイスブックでドーソンシティのコミュニティ・グループページをチェックすると、「周辺の高速道路は安全確認ができず通行禁止になっていて、町も全面ブラックアイス化してるから今日は運転しないほうがいいで」と書かれている。まずい。面接がなければ家に留まったけど、面接の場所は家から1kmもない距離だし、ゆっくり行くことにした。

こちらがつるんつるんの路面状況。

家を出るとすでに坂道だから「コケないという選択肢」はないというワースト案を胸に抱いて出発。ペンギン歩きで一歩踏み出すたびに「次でコケる」と確信するものの、案外コケない。昨日まで雪で覆われていた道路が溶けてその下にあったブラックアイスが出現しているわけだけど、まだ雪が積もっている場所もあって、とにかくその少しの雪を手掛かりに進む。

車の音が後ろからしたので振り返ると私と同じ速度、むしろ私よりも遅いんじゃないか?という速度で車がやってくる。車がいつスリップしてきてもおかしくないと思い、車の運転手に合図を送って反対側に渡り、道をそれて車が通行するのを待った。

家の前の坂道。わかりにくいけど全面凍っている。

この「町全面ブラックアイス路面歩き」のスリル感は障害物のない障害物レースのようなもの。いつ転んでもおかしくない、いや何度転んでもおかしくない、というかそもそもリスクを取ってチャレンジするメリットはない…。

しかし私には仕事の面接があるし、そのために早く起きて時間はあったから、とにかくゆっくり進んだ。普段なら10分ほどの道のりに30分かかって無事到着。ふ~!

ユーコン川が少しずつ凍るのを毎日見に行って写真を撮るのが日課。

パートナーのルイスは地元の公立高校で働いているんだけど、多くの先生たちが路面の状況で遅れてきたと言っていた。私が通ってるアート学校の先生も今日学校行くの危ないからZoomに切り替えるわ~!って言ってて、なんか自然の脅威に無理しないで、パッと切り替えられる感じがいいなぁと思う。

ドーソンの来週の今週の天気予報。10月っていう季節の感覚が狂うなぁ。

町に着くと地元のおじいちゃんが「クランポン買いなはれ~」と笑顔で話しかけてきた。こういう日は町の一体感が増して、小さい町だからこそみんなで助け合うことがほんまに必要なんだと思わされる。

パートナーのルイスはドーソンでできたラン仲間と毎週ランに行っていたけれど、「ランニングシーズン終了になったよ」とのこと。早っ!って思ったけど、この走れない不自由さも好きだ。新潟で生まれ育った私は中高陸上競技部で、冬になると雪で走れなくなり、ウエイトトレーニングや、クロスカントリースキーに切り替えて春の訪れを待つのが好きだった。その感じに似ていて「走らなくていいんだ」と安心する。走るのが好きなのに不思議なものだ。

1ヶ月前のTerry Fox Runにて。秋晴れのドーソン・シティ。

でもその代わり、私もルイスもこの冬新たなスポーツに挑戦することに!ルイスはアイス・ホッケー、私はカーリングのチームに所属してこれから冬を満喫する予定!楽しみじゃ~!…ということで極北の地は早くもランニングシーズンが終了しておりますが、日本の美しい紅葉の秋、収穫の実りを楽しんでくださいな!ではではまた来月!

追伸:幻冬舎が運営する幻冬舎プラスというウェブで「極北でアートを学ぶ」という連載もしています。毎月8日と23日あたりにアップしています。ぜひそちらも読んでいただけると嬉しいです!

リンク:https://www.gentosha.jp/article/19695/

PROFILE

ケロズ | Shizuka Yoshimura

ランボー地球支部として世界を探索、いろんな人の心に窓を作ることをテーマに記事を書いています。過去4年間はカナダ2年、ニュージーランド1年、インド・ネパール半年、その後少し日本を経由して、現在はカナダの永住権を取得、バンクーバーで生活しています。今後さらに北上、極寒の地でアートとアウトドアの境目をユニークに生き抜くために少しずつ準備中。走ることが好きで、ロード、トレイル、夢の中、どこでも走ります。昼寝と動物が好きです。2014年裸で走るレース「Bare Buns Run」バンクーバー大会女子優勝。また現在幻冬舎が運営するウェブサイト、幻冬舎+(プラス)にて、「北極かえるのコモンロー日誌」も連載中。

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