山登りさんの本音
ちょっと前に、山登りのWebマガジンに「高尾マナーズ」について取材されたことがある。山を歩く人たちの間でも、われわれの活動が知られるのはうれしいなあ。
(*1)文末のリンクをご覧ください。
それはそれとして、山岳/アウトドアライターの高橋庄太郎さんとの対談の中で、楽しく大きく脱線したんだけど、いろんな話が出てきた。
一部であろう(*2)山登りの人は、少なくとも高橋さんと担当の編集者さんは、トレイルランナーに対して、なんとなく「もやもや」感があるそうな。「しっくりこない」に近い心理らしい。
その「しっくりこない」は、山に対する意識の違い。カンタンに言えば、山登り人は文化部、そして山は大自然の学舎。この世とオノレの人生を深く考察つつ、黙々と歩み登ります。トレイルランナーは間違いなく体育会運動部。「走る」ことが好き、山は遊び場、運動場です。
そんな文化部が山頂の絶景でココロ洗われているときに、目の前をTシャツ短パンでキャッキャはしゃいで、元気に軽快に駆け抜けていくランナーたち。そりゃ違和感あります、「しっくりこない」。
それにプラスして、一部の山登り人にはトレイルランナーたちの明るさ、元気のよさ、「走る」という体力的優位、つまりかっこよさがまぶしく思える、文化部ゆえの肉体的コンプレックス。これも「しっくりこない」につながるらしい。
こればかりは善し悪しではなく感性の違い。一部であろう山登り人はトレイルランナーをこんなふうに思っているということ。知っておいてもいいと思うな。
「舌打ちされるんだぜ」
もうひとつ。してはならないことがある、高橋さんに言われた、というか強く釘をさされた。ランナーだから歩く人に追いついてしまうのは仕方ない。高橋さんはランナーに後ろにつかれて、「チェッ」と舌打ちされたことが何度もあるという、もう最悪の気分ですよ、と。
その登山者がウチサカだったら「お前が勝手に追いついてしまったんだろ、舌打ちはないだろう」「すみません、道を譲っていただけませんか?」くらい言ってもバチは当たらない。ウチサカはそう思うな。
舌打ちの流れでこんな話。高橋さん、後ろについたら「こんにちわ」っではなく、ストレートに「先に行かせてください」って言ってくれた方が気持ちがいい、と。高橋さん自身も歩みの遅い登山者に追いついてしまったときは、「先に行かせてください」ってはっきり言うそうな。だって、体力差、歩みの速度の違いが理由なのだから、みんな言うことを聞いてくれる、すんなり道を譲ってくれる。もちろん、笑顔とともにお礼を言って、追い越すそうだ。
歩く人に追いついてしまったときの声がけ、これはほんとうにむずかしい。「こんにちわ」って言ったのに「どけどけ」と受けとる人もいるし、声をかけないでいると道を譲るのを待っている(無言の圧力ってヤツだ)ように思われることもある。ふと気がついて「びっくりさせないでくれよ!」って言われることもある。相手や地形、状況から臨機応変に対応するしかないんだな、と思ってた。
だから、高橋さんの「先に行かせてください」は実に明解、とてもいいと思う。状況にもよるけれど「こんにちわ」より適切な場合が多いんじゃないかな。
そしてつくづく思う。山を歩く人と仲良くなること、話をすることは大事です。
*1 https://yamahack.com/4486
「高尾マナーズ」から考える、登山者とトレイルランナーは「山で共存できるのか?」問題
*2 一部なのか多数なのか、正直わからない。ただ、100人の山登りさんがいれば100通りの思いがあるし、状況によって考えも変わる。だから山登りさんは○○だ」という思い込み、固定観念は持たない。ランナーもしかり、いいヤツもいればトンチンカンもいるじゃん。