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2022年7月20日

ゆっきー

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欧州アルプス屈指の難コース

今年の夏の海外レースへの挑戦が決まったので、今回はその話をしたいと思います。挑戦の時期は9月で、50kmと100マイルレースの2つにチャレンジする予定です。

私の主戦場は100km以上のロングレースですが、今回はあえてTrail du Bessoという50kmのレースにも挑むことにしました。

なぜ距離の短いTrail du Bessoに出るのかというと、私の調べた限りヨーロッパアルプスで開催される50kmのカテゴリーにおいて恐らく最も難しいとされる大会だからです。

Trail du Bessoのレースの特徴に加えて、私がなぜそこまでして難易度の高いレースに挑むのかお話できればと思います。

もう一つの100マイルレースに関しては、来月のブログでお話したいと思います。
 

距離が短いと難易度が高い

そもそも私自身が100km未満のトレイルレースに出るのが久しぶりで、最後に距離の短い大会に出たのは、2016年台湾でのUltra Maokong(50km)という大会となります。

後述しますが、Trail du Bessoは難易度だけをみると、私がこれまで挑んできた主要なヨーロッパアルプスと比べて難易度の高い大会だと感じています。

また世界全体でみても、50kmのカテゴリーの中で恐らく5本の指に入る難易度ではないかと思っています。

私の長年のレース経験から、50km、100mileという距離で単純比較するのではなく、難易度だけで比較すると、50kmの方がレースにおいて技術力がより求められると感じています。

例を挙げるなら、私もレース経験のある奥久慈や志賀高原エクストリームトライアングル(過去一回限りの開催)は50kmのカテゴリーにおいて難易度が高いとされている大会です。

もしこれらの大会で100マイルのカテゴリーがあったなら、恐らく完走者はごく僅かに絞られるのではと思います。

海外でも同様に、UTMBの姉妹レースであるTDSもUTMBと比べ難易度は高いことで知られています。

ではなぜ100mileレースの方が、難易度がやさしいのか?その理由の一つに選手の安全確保が挙げられます。

距離が長くなればなるほど、選手の疲労蓄積によって怪我や事故のリスクが高まるからだと思われます。従って、ロングレースはショートやミドルと比べると、易しめなコース設計になっていると思われます。

しかしながら、海外の100マイルレースでは走るセクションによって難易度が異なるというのが私の見解です。「スタートから100kmまで」と「100kmからゴールまで」の2つに分類してみると、後者の方がコースがやさしめに設定されていると感じます。

つまり、100マイルレースの前半は難しく、後半は易しいコース設定となっており、おしなべるとショート・ミドルと比べてやさしめになっているということです。

前置きが長くなりましたが、Trail du Bessoについて詳しくお話したいと思います。
 

Trail du Bessoとはどんな大会?

Trail du Bessoは、スイスのマッターホルンの近くにあるBesso山(3,667m)の麓で開催される大会となります。

地図の通り、標高4,000mの山塊に囲まれた中を走るコースとなっています。

距離56km、累積標高5,400mと50kmのカテゴリーの中で、累積標高が5,000m以上となる大会は世界的に見てもなかなか稀です。

過去にSwiss Peaksというレースを走った際に、Trail du Bessoのコースの一部を走ったことがあります。

その時は標高2,800mの峠まででしたが、そこからみるTrail du Besso周辺の山塊の景色はとても綺麗で、今でもこの景色が脳裏に焼き付いています。

Trail du Bessoのコースを山地図で見てみると、どうやらトレイルがない区間もあるようです。例えば、以下のように臨時に設置されたハシゴを使って登る区間もあり、テクニカルなコースであることが伺えます。

また、Besso山塊は氷河に覆い尽くされており、レースではいくつかの氷河の上を通る必要があり、大会の規定としてアイゼンが必須となっています。

このレースに出るためには、誰でも参加できるというわけではなく、当然ながら主催者の審査に通らないと参加することができません。

加えて、万一の事故を想定して、参加者には実費でスイス国内の民間の山岳保険に加入することが必須となっています。万一事故にあったときは自分の山岳保険でヘリなどを要請しなければなりません。

Trail du Bessoに関する特徴を大まかに書いてみましたが、ちょっと普通のトレイルレースとは異なるレースであることがお分かりいただけたかと思います。
 

他のレースと比べてどうなのか?

Trail du Bessoは、スイスのスカイランニングの大会の一つであり、加えて国際スカイランニング協会の認証を得た大会でもあります。

同協会の認証を得たレースの中で、カテゴリーが「SkyUltra」でかつ「Technical Level」が最高ランクの「3+」であるレースは、以下の通り世界に3つしかなくそのうちの一つがTrail du Bessoとなります。

またITRAの情報から、主要な欧州の大会とTrail du Bessoの比較をしてみたいと思います。

まずは平均高度をヨーロッパアルプスの主要なレースと比べると、Trail du Bessoはいかに標高が高いエリアでの開催かが分かるかと思います。

グラフのヒゲは各レースの最高高度と最低高度を示す

また、以下の通りMountein Levelをみても、Trail du Bessoの難易度の高さが伺えます。

UTMBやトルデジアンなどとこれら数字を比べてみても、Trail du Bessoは距離は短いものの完走するには一筋縄ではいかないことが伺えます。

ちなみに過去の優勝タイムは9時間台であり、完走者の平均タイムをみてみると13〜14時間であることから、コース上ほとんど走れる区間がないと私は推察しています。

ではなぜ、そこまで高い難易度を求めて挑戦をするのか、最後にその理由についてお話したいと思います。
 

難易度が高いとその分だけ成長が見込める

私は、恐らくトレイルランナーの中でも稀で、怖いもの知らずで危険なことにもチャレンジする志向の強い人間だと思っています。

私自身の経験として、これまで世界的に見て難しいとされる海外レースへのチャレンジを通じて、そこから多くのことを学ぶことができました。

その学びは何かというと、もちろんトレイルランに関する技術的な面もありますが、それ以上に人間的に大きく成長できたことです。

そういったレースでは何かしらのインパクトのある出来事を経験するため、自分の人生を見つめ直すことがレースを通じて必然的に出来ているからだと思います。

インパクトのある出来事の例としては、紙一重で落雷事故に遭遇した経験や、レース中に骨折した状態で完走したことなどが挙げられます。普段の日常生活では経験できないことを数多くしてきました。

その結果として、仕事やプライベートにおいてもトレイルランで得た経験を上手く活かすことができています。

自分にとって高い壁となる難易度のレースに挑戦していなければ、恐らくここまでの成長はなかったと思っています。

◇     ◇

Trail du Bessoは9月上旬に開催予定であり、今後のブログでこの大会に関する報告ができればと思っています。このレースがどれだけの難易度だったのか、またこのレースを通じて何を得ることができたのかを中心に書く予定です。

2020年1月からRun boys! Run girls!のブロガーとなり、その直後からコロナで海外レースへの挑戦ができませんでした。しかし、海外への渡航も緩和されたこともあり、今後は定期的に海外レースに挑戦していく予定です。

今後も継続して、海外レースの魅力をブログを通じて少しでも多くの方に伝えていきたいと思っています。

PROFILE

ゆっきー | Yukihisa Nakamura

海外のトレイルレース延べ2000km
本格的に海外を走り始めて4年、年500kmのペースで世界の魅力的なトレイルを駆け巡っています。
山本来の魅力を肌で感じることが好きで、有名な大会よりかはニッチでテクニカルなコースを選びがちです。
Swisspeaks 360km(Walker's Haute route)、UTMR 170km(Tour Monte Rosa)など完走。
2020年も日本で知られていない世界各国の魅力的な山・トレイルに出逢うこと。

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