トレイルランとは考えること
周りの友人に対して「トレイルランで得られることって何?」と聞かれたときに何と答えるべきか?
この質問に対する正解はないと思っています。なぜならトレイルランナーによってそれぞれの考えや価値観、トレイルランをする目的が異なるからです。
私の場合だと、トレイルランの主戦場が100km以上のロングレースであるため、相手からこの質問をされた際、「山の中を100km走る耐久レースです」と回答すると相手が引いてしまうことがほとんどです。
従って、私はトレイルランに関する具体的な話をすることはなく、よりトレイルランから得られる本質的な話をするよう心がけています。
私がこの質問を相手から受けた時に多いのが「考えること」という回答することが多いです。
現在、私の働いている環境では周囲に優秀な人材が多く、私は恵まれた環境にいると感じています。
その方々に対して「考えること」という回答をした場合でも、さずがに理解を示してくれる人はわずかであり、その回答に対する理由を都度説明することが多いです。
今回は、私がトレイルラン=考えること捉えているのか、その理由についてお話をしたいと思っています。
以下ブログを読んでいただけると、海外レースに出るメリットを少しでもご理解いただけると思います。
考えるには2つの条件が必要
「考えること」を実行に移すには考えるための環境が必要だと私は感じています。具体的には、以下2つの条件が必要であると私は考えています。
1つは考えるための時間がしっかり設けられていること。もう1つは、日常生活とは異なる環境に身を置くこと。この2つが必要であると感じています。
この2つの条件が揃った状況になると、私の場合、意識して考える作業をしなくても、無意識に今までに思いつかなかった新たな考えが浮かんでくることが多いです。
なぜ上記2つの条件が必要であるか、その理由をお話したいと思います。
1つ目の考えるための時間がしっかりと設けられていることについて、読書を例にお話したいと思います。
私は本を読むのがとても好きで、昔から定期的に本を読んでいます。今現在、大学院に通っており今年3月で大学院を卒業しますが、2年の在学期間中に延べ約100冊は本を読みました。
具体的に読んだ本として、経営学、マーケティング、会計・ファイナンス、人事関連の本が多数を占めました。
本を読む目的として、一般的には情報をインプットすることだと言われています。
昨今、読書の領域において情報をインプットをする時間を短縮するツールとして、本を要約するアプリとしてflier(フライヤー)というサービスが出てきています。
しかし、私の考えとして本とは情報をインプットすることが主目的ではありません。従って、私はフライヤーのようなサービスを活用することはありません。
最近読んだ本を挙げると、「因果推論の科学」という本で600ページほどの大作でしたが、これも全て読みました。通勤時間の合間に1週間ほどかけて読みました。
では、全読する意味は何かというと、私は読書をインプットするためのツールではなく、考えるためのツールとして捉えているからです。
本を読んでいる中で情報をインプットした際に、単にその情報を流すのではなく、そこから得た情報をもとに思考力をはたらかせることが重要だと思っています。読書の価値はそこにあると思っています。
インターネットの普及により、情報の価値が下がっています。つまり、WEB上で無料の情報を得ることが容易にできるようになったということです。
情報の価値が下がっている中で、本の価値は考える環境を与えてくれる最強のツールだと私は感じています。
◇ ◇
次に2つ目の、日常生活とは異なる環境に身を置くことについて、こちらは旅行を例にお話したいと思います。
旅行というのは、非日常な体験を五感を使って体感することだと思います。
その五感で感じたことをきっかけに、自ずと思考力がはたらくことで新たな発想、着眼点が生まれること、これが旅行本来の目的であると思います。
今回のコロナで海外へ渡航できない代替として台頭したVR(Virtual Reality:仮想現実)などは、私が考える旅行本来の目的には相反するサービスであると感じています。
旅行というのは、飛行機や鉄道などの公共交通機関を利用し、その移動やホテルでの滞在も含めて1つの旅だと思います。
私は昨年、海外レースに出るために1ヶ月ヨーロッパに滞在していました。その際に鉄道やバス、飛行機を使って、イタリアはミラノ・トリノを、スイスはローザンヌ・ジュネーブを、フランスはリヨン・マルセイユ・ニースを観光で訪れました。
その移動の際にもふとしたことで、仕事に関する新たな考えやアイディアが浮かんだことが多々ありました。
私が海外レースに出るのも、実は+αで旅行をする目的も兼ねており、時間をかけて現地に向かう途中に、無意識に考える機会を創出することを大事にしています。
これまで数多くの海外レースでの経験と並行して、数多くの旅行を経験してきました。これら度重なる旅の経験があったからこそ、私には考える頻度が一般的な人と比べて多いと感じています。
トレランで考える環境を作るには
これら2点を説明すれば、トレイルランは考えるための手段として、最も適したスポーツであると思います。
具体的に、まず考えるための時間がしっかりと設けられている点でみると、トレイルランは他のスポーツと比べて試合時間が長いことが明白です。
野球は約3時間
サッカーは90分
テニスは1〜2時間
マラソンは2時間〜6時間
トレイルランは半日〜2日
また、2つ目の日常生活とは異なる環境に身を置くという点でみると、トレイルランは旅行の中でも山旅の分類となり、前述した旅行と考え方は同じとなります。
レース中は、レースに集中しているから考える時間も余裕もない。またロングレースになると疲労も蓄積して考える余裕もないと感じていると思います。
私もその通りだと思います。トレイルランの経験が浅い人は、レース中に正直考えることは難しいと思います。
私もレースに出始めた頃は、考える余裕が一切ありませんでした。特にロングレースに出始めた頃は、レース中は疲労や眠気など不安との戦いに専念していたことを記憶しています。
しかし、ロングレースに出始めてから10年ほどが経ち、ロングレースの戦い方が分かってきたある時を境に、レース中に余裕ができるようになり、走りながら考える時間を作れるようになりました。
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私と同じく長年トレイルランの経験がある方で、レース中に何も考えないことはある種の機会損失だと思います。
また、同じレースに何度も出続けることは、同じ景色を見ているだけで環境の変化が全くないため、そこから新たに考えるという発想が生まれることはありません。
トレイルランというスポーツは、タイムや順位を競うスポーツであることは私も理解しています。
但し、私が重要だと感じることは、トレイルランというスポーツで経験したことを仕事や他のプライペートに応用することが大切だということです。
その応用手段として、今回ご紹介した「考えること」も一つの選択肢になるかと思います。