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2023年6月20日

ばんり

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【パタゴニアディーラーズキャンプ@南三陸2023】

 スタッフばんりです。

 3月下旬、宮城県の南三陸で行われた「パタゴニアディーラーズキャンプ」にランボースタッフ代表で参加してきました。

左からイヌワシ協議会鈴木さん、パタゴニア八木さん。一番右に石川弘樹さん。

 今回のディーラーズキャンプでは南三陸で”イヌワシ”の生息環境を取り戻すための「南三陸イヌワシ火防線プロジェクト」に取り組むパタゴニアアンバサダーの石川弘樹さんを軸に、実際の整備活動を通じてトレイルに関連する課題を見つめなおす機会が用意されました。

 参加ディーラーは静岡「ATC Store」/三重「moderate」/東京「Trippers」「STRIDE LAB」/兵庫「HEIMAT BERG」とRun boys!Run girls!の6店舗。

《”Run to” Film Tour「共生のために走る」》

 「南三陸イヌワシ火防線プロジェクト」は南三陸町の町鳥であるイヌワシが、この30年ほどで生息数が激減してしまった背景に、生活スタイルの変化に伴う林業の衰退で、山の環境が変化しイヌワシが生息しやすいひらけた森が失われてしまっていることを課題点として、その解決に取り組んでいます。

 そのプロジェクトの様子は、2/25~3/8の間にパタゴニアが開催した《”Run to” Film Tour「共生のために走る」》で上映された映像の中でも垣間見ることができます。

「南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会」

 また今回のキャンプにはこのプロジェクトを進める「南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会」(名前が長い!)の会長の鈴木卓也さんも参加し、地元で長年イヌワシを見てきたからこその思いも知ることができました。

 南三陸地域で林業が盛んだった時代には、一定周期でエリアごとに繰り返される樹木の伐採で山の手入れが行き届くことで、大きな翼をもつイヌワシが暮らしやすいひらけた森が多数存在していたこと。そのひらけたエリアにはうまく日が当たり地面から草木の新たな芽が顔を出し、それを餌とするウサギなどの小動物が駆け回り、そしてその小動物を餌とするイヌワシが暮らすことができていたこと。

キャンプ1日目に鈴木さんからプロジェクトについて教えてもらう。

 鈴木さんは幼いころから山に分け入り、そうした鳥たちに興味を持ち魅了されていたこと。そして時代とともに生息環境が失われ、幼いころに見ていた景色が少なくなっていること。

 そうした生態系ピラミッドを取り戻すための試みの1つのステップとして、鈴木さんは自治体の協力を少しずつ獲得しながら、南三陸地域にまたがる約60kmの防火線の整備を2015年ごろからスタートしました。

 その後パタゴニアがこの協議会の動きに賛同し、定期的にトレイル整備を行う下地が少しづ出来上がっていったとのこと。

南三陸のビジターセンターで見つけたイヌワシの原寸イラスト&ATC芦川さん

『トレイル整備』

 今回のキャンプでは5年前に1度整備が行われたというエリアに入山しましたが、鈴木さん含め地元自治体の方が少数通るのみのトレイルで、そこは1人がやっと通れる幅のトラックに左右からバラ科のトゲのある草木が生い茂っていたり、倒木があったりなどで整備前にはかなり歩きづらい状況となっていました。

(実際に着ていたウェアの袖が何度もほつれたり、生地が破れるんじゃないかくらい草木に引っかかったりしました。)

原則、一般の方は通行できない火防線。通行や整備には自治体の許可が必要。

 トレイル入り口から約2kmの防火線を10人ほどの参加メンバーで整備。2日かけ元の防火線の幅となるまで回復することができました。(全長60kmのうちのたった2km!)

 僕個人でいえばこうした本格的なトレイル整備は初めての経験で、急斜面だったりしゃがんだり立ち上がったりの繰り返しが地味に体力を消耗する感じが結構きついなと、、

石川弘樹さんの号令で休憩を取る一同。

 ただ、走れる僕らトレイルランナーはそうした場面での体力的アドバンテージや活動範囲が広いことなどのメリットが多く、環境整備向きの人種なのではないかという気づきはありました。

整備後のトレイル。

 トレイル上には大きな倒木もありましたが、小さな手のこを駆使してメンバー代わる代わる声を掛け合いながら、テンション高く部活のように取り組めるシーンもあり、チームでトレイル整備に入った時の一つの楽しみになりそうです!

『ディスカッション』

  • 「トレイルで感じる環境の変化」

 この2日間のキャンプの締めくくりとして参加者全員でディスカッションが行われました。そして各ディーラーが各地で感じている状況はかなり異なるものもありました。

 高山帯で見られる雪解けの速さなどは広く認識の進んでいるところではありますがそれ以外には、各地の里山を含めた低山での「観光登山や情報過多によるオーバーユース/入山者の少ない山での環境整備不足のアンバランス」が昨今の問題となってきていることがわかりました。

 首都圏の方が良く利用(自分もめちゃくちゃ利用)する「高尾山域」では、オーバーユースによる問題が多く、例えばハイカー/ランナー同士のマナー啓蒙やごみの問題、トレイルの不用意な拡張など「環境に対する負荷が高いこと」「人が多いこと」による問題が多くあります。

 逆に関西圏では「入山者が少ないことにより、山の環境整備が行き届かない」などのアンダーユースによる問題に焦点が強く当たっている様子を感じました。トレイル整備に取り組むにしても「この土地の所有者はだれなのか」「誰に許可を取ればよいのか」など事務的な問題がどの地域でも立ちはだかっているようです。

 また別の側面としては、良くも悪くもSNSによる影響で全国的に「情報の多い山/少ない山」のアンバランスもあり、それが人の往来の量に影響しているとの見方もありました。

 そうしたトレイル上での問題以外にも「ダムやメガソーラーなど山の開発」による政治経済的な問題も各地で起こっているとのこと。

 そうした状況から我々ディーラーやみなさんトレイルランナーやハイカーができることはなんでしょうか。

各ディーラー同士で意見交換

「何ができるか」

 ハイキングやトレイルランニングをしたり、何かしらの理由で山に立ち入って自然の中に身を置こうとする人々の「きっかけ/理由」は百人百様です。

・ハイキングが好きなところからトレイルランニングも始めた人

・ロードランの息抜きにトレイルランを始めた人

・会社の上司に連れられて初めてハイキング/トレイルランニングをした人

 様々なバックグラウンドがあり、山に対する情報の量や「その文化/文脈を知っているか」にも差があるなかでそれぞれができることも様々です。

例えば

「地図を読めるようになる」→いつも同じ所にばかり行かない

「トラッシュバッグを持つ」→落ちているごみを拾う

「ひとりで山に行く」→出発前に山の情報を自分一人で集める

 こうしたな項目はどのハイカー/ランナーも初めに通る難関の一つかもしれませんが、山というフィールドで遊ぶためには可能な限りトライしてほしいポイントだと思っています。

「何をしないか」

 もしくは「何をしないか」にも注意が必要かもしれません。

 「イヌワシ協議会」の鈴木さんがおっしゃっていた「鳥が好きで近づきすぎると鳥が離れていく」というワードが印象的でした。

 例えば野鳥観察のために山に分け入り、そこに鳥の巣を見つけたとして、どこまでその巣に近づいてよいのでしょうか。警戒心の強い鳥はその山からいなくなってしまうかもしれません。他にも、草花が好きでトレイルから離れたところにあるその花を撮るためにならトレイルから外れても良いのでしょうか?

 またそうした「あそこに鳥がいる」「あそこにあの花がある」というような情報は、どのようにして拡散されるべきでしょうか?

 「情報の多さ」はそこに「人の多さ」をもたらし、加速度的に環境への負荷を高めてしまうかもしれません。

「トレイル整備もいろいろ」

 ひとことに「トレイル整備」といっても現在ではその整備の幅は広く、今回のように自然環境とのバランスをとるために行うものもあれば、すでにあるトレイルの路面が悪化してしまっている箇所を歩きやすくするもの。トレイルランニングの大会の開催に向けてコース整備を行うものや、高尾山ではグループによるごみ拾い活動も盛んになっています。

 これに限らず、休日にハイキングに行った山のトレイルに横たわっている小枝をそっとトレイルの外にどけるだけでもトレイル整備といえるかもしれません。

 観光案内に書かれているメインルートの隣の人のあまり通らなそうなトレイルを歩きに行くだけでもトレイル整備といえるかもしれません。(人がたくさん歩いた足跡が立派な道になる)

 どんなトレイル整備(トレイルに対するケア)も人が自然の中で遊ばせてもらっていることに対してバランスを取る作業といえます。「走りっぱなし/歩きっぱなし」「自然の使いっぱなし」ではいずれ自然がすり減って使えなくなる時が来るかもしれません。

トレイルワークは心地よい疲労感と満足感を与えてくれます。

 そうした「自然を大事にする」ことを周りに実践している人が確かに存在します。(僕は今回のこのキャンプでやっと近くに感じることができました) そんな人たちをいろんな形でフォローして情報をゲットしてみてはいかがでしょうか?

ばんり

PROFILE

ばんり | Banri Uehara

2018年にハイキングの延長でトレランを始める。元々ランボーのお客さん。TOMOさんのPodcast"100miles100times"を聞いて育つ。高尾に通いすぎて高尾で働き始めたり、ギア好きが高じてショップで働き始めたり。現在の目標はロングレースを走れる身体の丈夫さを身につけて、山をもっと自由に走って歩いて、立ち止まって景色を見渡して過ごせるようになること。

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