Ultra-Trail Snowdonia by UTMB
先月、UTMBのシリーズ戦であるUltra-Trail Snowdonia by UTMB(以下、UTS)に参加したので、このお話をしたいと思います。
UTSの特徴を一言で述べるなら、メンタルを鍛えるにはお勧めの大会であるということです。
結果47時間で完走したものの、私がこれまで経験した100mileレースの中で最もメンタルが試されるレースでした。
UTMBの完走経験があってもUTSを完走するのは一筋縄ではいかないこと。
レース中一緒に走っていたランナーの中には、過酷なレースと知られているアンドラやレユニオン完走者でも、リタイアしてしまうほどタフなレースでした。
私がUTSの大会を知ったのは、初めて開催された2018年で、Facebookでこの大会のリザルトをみて衝撃を受けました。
2018年の100mileレースで完走者は以下13名だけで、うち30時間台で完走したのがわずか2人である結果をみて、これはちょっと普通の100mileレースとは違うなと感じたのがきっかけです。
18年以降、19年・21年と計3回開催されていますが(20年はコロナ、22年は天候不順で中止)、いずれも完走率が30〜40%の低水準の結果でした。
私自身、渡航規制緩和後に、ぜひチャレンジしたい大会と位置づけ、約一年前からUTSにチャレンジすることで準備を進めてきました。
なぜこれほどUTSは完走率が低いのか?この大会の特徴について詳しく述べたいと思います。
UTSとは?
UTSは、イギリス・ウェールズにあるスノードニア国立公園内で開催されるレースです。ロンドンから高速列車と車を使って4〜5時間の場所にあります。
この国立公園はエベレスト初登頂した、エドモンド・ヒラリーがエベレスト登頂に向けてトレーニングを積んだ場所として知られています。
標高1,000mほどの山々で麓(標高100m)から樹林帯はなく森林限界でかつ岩山の山塊であることが特徴です。
私が実際にレースで走って感じたことは低山であるものの、実際はアルプスの標高2,000m以上の山塊を走っている感覚でした。
具体例をあげると、UKのクライミングサイト(UK Scrambles)を見てみると、Crib GochやTryfanは稜線区間での岩山のよじ登り区間が多いことが分かります。
日本の大キレットをイメージいただけると分かりやすいと思います(UTSはこの区間はコース外)。
UTSの詳細をお伝えすると、100mile、100km、50km、25kmの4種目が開催。公式発表によると、全てのカテゴリーで計2,851名、65カ国がエントリー、世界規模の大会であったことが伺えます。
大会HPには100mileの参加条件が書いてあり、TDSやイギリスでテクニカルなレースとして知られているBen Nevis Ultraを完走できるスキルが必要と書いてあります。
以下のグラフは、各カテゴリーの完走者・DNF・完走率を示したグラフとなります。
100mileレースの完走率に加えて、100km、50kmにおいても一般的なレースと比べて完走率が低く、数字だけみてもレースの難しさが伺えます。
UTSのコースの特徴
UTSのレースの特徴としては大きく2つになります。
岩山の登り下りが多い
湿地帯を走ることが多い
前述の通り、スノードニア国立公園は岩山が多く、手を使って登る区間が多いことが特徴です。
また、イギリスは湿地帯が多いことで知られていますが、岩山が多いスノードニアでも湿地帯が点在し、特にフラットな湿地帯では場所によっては股下まで水に浸かってしまうのほどの場所がいくつもありました。
特に上り下り、湿地帯が凄かった区間を以下の地図でそれぞれ緑色と青色で示しています。
以下、地図に示す56km地点の下りは200mほど岩山の下りの続く区間で、三点支持での下りであったことから通過に1時間ほど掛かりました。
また、100km地点の湿地帯は5kmほど続き、足首までほぼ浸かった状態のためまともに歩くことすら難しく、通過に2時間ほど掛かりました。
UTSは天候に左右される?
イギリスの天候は一般的には曇や雨が多いことが特徴ですが、今年は快晴の中で開催されました。
私の仮説ですが、天候が悪いと完走率が恐らく100mileの場合30%を下回る結果だったと思います。
100mileの制限時間が48時間であったため、恐らく私でも関門時間に間に合わずにDNFとなってたと感じています。
そう感じる理由として、もし降雨の中での開催となった場合、岩山区間でより一層時間が掛かっていたこと。
加えて、湿地帯の区間において更に水かさが増して、前進するのに時間が掛かっていたと考えるためです。
実際に100mileと100kmレースは、天候不順の場合に備えて、正規ルートとは別プランのコースも事前に準備されていました。
主催者も悪天候では完走できるランナーは少ないと想定していたため、代替えプランの準備をしていたんだと実際のコースを走ってみて感じました。
スノードニアでのお勧めレース
最後にスノードニアで開催される他のレースについて、海外レースで自分の実力を試したいと思っている方には、ふさわしい大会を2つを紹介したいと思います。
1つ目は、Snowdon SkyRaceというレースになります。
Snowdon SkyRaceは最長50kmのレースですがUTSの50kmレースと比べてよりかなりテクニカルなレースです。
その理由として、前述したCrib GochやTryfanがコースに含まれていることです。日本の大キレットを走るレースと思っていただければ、どれほど難しいレースかイメージできるかと思います。
2つ目は、Dragon’s Back Raceというレースになります。
ウェールズ全土を南北に横断する6日間(380km)のステージレースになります。特に1日目は上記Snowdon SkyRaceとほぼ同じ区間のコース設定となっており、Crib GochやTryfanも含まれています。
◇ ◇
私自身イギリスでの初レースでしたが、アルプスなどは全く異なる戦い方やスキルが求められ、トレランの奥深さを改めて体感できました。
日本独特の山の中でのトレイルランを楽しむことも選択肢の一つだと思います。
しかし、世界それぞれの地域でしか見られない山の特徴を生かした大会に挑戦し、新たな経験をすることや視座を広げることも私は大切だと感じています。
次回は、7月にイタリア・スイスで開催されるCervino Matterhorn Ultra Raceという100mileレースに出場する予定です。マッターホルンを起点にぐるっと一周するレースになります。
今後のBlogにおいて、このレースについても報告できればと思っています。