NATHANの逆襲(1) Firecatcher
トレイルランニングギアのお店をやっていて感じるのは、ザックの進化のスピードの速さ。各メーカーもしのぎを削っていて、シーズン毎に主役が変わっている印象を受けます。
2014春夏シーズンのアイテムに関しても、Ultimate DirectionのSingature Seriesの次期バージョン2.0や、inov8のRACE ULTRAシリーズが、発売前の昨年末からギア好きランナーの間で話題にあがっていました。ちなみにこれらのザック類は、Signature 2.0は、US・日本共に春夏は一部ショップの限定発売(Run boys! Run girls!でもごく少量入荷予定。昨年のSALOMON S-LAB ADVANCED SKIN HYDRO SETの様な扱いですね。)で一般流通は秋冬から。inov8は本国での発売は始まっている様ですが、日本での発売は秋冬シーズンとなりますので、両アイテムとも日本ではもう少し”おあずけ”と言ったところです。
と、そんな主役不在と思われた春夏のザックカテゴリに、勢い良く滑り込んできたブランドがあります。それがNATHANです。
今やトレイルランニングザックの主流となった感のある、「ベストタイプ」のザック。重心が高く、荷物を背中の上の方でフィットさせてベストの様に着るというコンセプトで、腰の位置に荷重が来るタイプのザックに比べて、走行中のフィット感がよく、重さを感じにくいのが特徴です。そしてそのベスト型ザックのルーツとも言えるのがNATHANのザックです。ちなみに2012年に日本での販売をスタートすると同時に多くのファンを獲得したUltrAspireもNATHANのデザイナーが立ち上げたブランドです。
そんなNATHANですが、ここしばらくはコアなユーザーにこそ支持はされるものの、SalomonやUltrAspire、昨年大躍進したUltimate Directionの陰に隠れている、地味なブランドの印象でした。そんな中これまでのイメージを覆すべく2013年にVapor Wrapをリリース。デザイン的な進化を垣間見せました。
2013、NATHANの変化を感じさせた Vapor Wrap
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2014春夏シーズンのNATHANのザックは、Vapor Wrapで見せた進化に更なる使い勝手の良さが加わってきました。そしてそれが今回のブログを「NATHANの逆襲」とした理由です。
前置きが大分長くなりましたが(笑)、それではここから数回にわけて今シーズンのNATHANのアイテム紹介をしていきます。
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◆Firecatcher
ユニセックスモデルで2色展開
(左)Nathan Blue / Estate Blue(右)Purple Cactus Flower / Tangerine Tango
¥9,500(+tax)
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今シーズンのモデルの中で一番ミニマルな”Firecatcher”。Ultimate Direction / AK RACE VESTや、UltrApire / Alpha・Spry、Mountain Hardwear / Fluid Race Vest等に並ぶミニマルレースベストです。
フロント部分はダブルポケット。Vapor Wrap以前のNATHANはダブルポケットはなかった為、地味に嬉しい改良です。ポケットには10oz(300ml)のフラスクが二本付属していますが、このポケットは20ozのボトルも入る深さになっています。尚、この10ozのフラスクは従来からある形状なのですが、身体に沿ってカーブする形状になっており、フロントポケットとの相性が非常に良いです。これまでフロントポケットにボトルを入れて走る方から多く聞かれた「ボトルが胸に食い込んで痛い」という問題はこのフラスクとの組み合わせでかなり解消されるのではないでしょうか。
(写真上)10ozフラスク正面 / (写真下)裏側から見ると身体に沿う様に湾曲している
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左側のボトルポケットには小さいポケットが付属。ジェルや、ベスパ等の小さめの小さめのサプリメントを入れることが可能。また左側ボトルポケット上部のメッシュポケットはかなり大きくマチがとられ、ジェル複数本を入れたり、スマートフォンを入れることも可能です。
写真では細く見える左胸のメッシュポケットにはスマートフォンが余裕で入ります
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また、このFirecatcherで秀逸だと感じるのが、胸部と脇部のサイズ調整。ベスト型のザックは大きくわけて、ショルダーハーネスと背面部が一体化し文字通りベスト状になったザックと、脇下のサイズ調節ができるザックの2種類があり、Firecatcherは後者に当たります。
フロントとバックが一体化し文字通りベスト状になっているUltrAspire Alpha
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脇下の調節ができるモデルは、基本脇下のストラップとショルダーハーネスを繋ぐチェストストラップは独立していて、チェストストラップを締めてから脇下のストラップを締めると言う様に段階的にフィット感の調節をします。ただ、Firecatcherの独特なところは、脇下のストラップと胸のストラップが一体化していて、胸のストラップを締めるだけで、脇下まで一気に締め上げてフィットさせることができるのです。また、ショルダーハーネスの位置の好みも、胸側に寄せたいとか、脇側に持ってきたい等の好みがあると思うのですが、その調節も一旦ストラップを締めた後に簡単に行うことができます。
背面は1.5ℓのハイドレーションパックが入るサイズ。ミニマル系レースベストの背面は伸縮性のあるメッシュで背中にぴったりするものが多いですが、Firecatcherは中央に伸縮性のあるメッシュを使いつつも、サイドに少しマチを持たせた作りになってて、収納性が若干高そうです。ただし他のミニマルベストにはついているバンジーコードは無し。バンジーコードを駆使して小さなザックの収納力を高めたい方には好みの別れるところかもしれませんし、荷物を多く入れた時のコンプレッション性も気になるところではあります。
背面ポケットにマチがあります
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容量は5.5ℓ。重さはフラスク2本込みで300g、ザック単体で150g。身体に当たる部分には柔らかいメッシュを使っているので、着たときの快適性も高いです。メッシュの柔らかさは先にあげた4つのモデルの中ではFirecatcherとFluid Race Vestが柔らかいなと感じます。
以上、ざっとFirecatcherの特徴を紹介してみました。実際、これまでもNATHANはこのカテゴリであれば、MinimistやHPL #028と言ったモデルを提供していて、Firecatherが全く斬新なモデルと言うわけではないんですが、既存モデルの良いところを組み合わせ、細かい使い勝手を今時のニーズに合わせてきたのがこのFirecatherという感じがします。10ozのフラスクが二つついて1万円を切る価格も手頃でいいですね。
いずれにせよ、そう言った細かい改良が積み重ねられたFirecatcher。先にあげた、Ultimate Direction / AK RACE VESTや、UltrApire / Alpha、Mountain Hardwear / Fluid Race Vest等と並ぶ、使えるミニマル系レースベストの一つとなりそうです。
(モデル/Shin)
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