2014 OMM ストレート優勝ペア 柳下大選手インタビュー 前編


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日本ではじめて開催されたマウンテンマラソン大会OMM

ノーエイド、ノーサポート、2人1組で、1泊2日分の装備をすべて持ち、山を走破する競技で、オリエンテーリング形式でポイントを指定の順番で回るストレートと、ロゲイニング形式で複数のポイントを回る2カテゴリで構成されます。

今回は日本では初開催のため、走力、山の総合力だけでなく、この種のレースへの慣れの有る無しが完走(特にストレート)の可否を分けた感じがあります。そこで、参加者のレースへの振り返りの材料や、来年以降の参加を考えている方への検討材料になればと思い。ストレート優勝の柳下・市岡ペアの柳下大さんにインタビューさせていただきました。

優勝チームのルート図および解説は既に公開されていますが、そこよりもう少し一般ユーザー目線で話を聞いてみました。ルート解説とあわせて読むとよりわかりやすいかと思います。

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柳下大(やぎしただい)
1974/5/31生

オリエンテーリングはもちろん、トレイルラン、ロゲイニングのスペシャリストとして活躍中。温厚に見える風貌ながら「ロゲイニングの帝王」と呼ばれる実力を持つ。

2010-2012オリエンテーリング世界選手権日本代表
2006、2010ロゲイニング世界選手権出場
2008-2011ロゲイニングシリーズ男子チャンピオン
2010 ハセツネカップ 総合6位

Run boys! Run girls!(以下RBRG):優勝おめでとうございます。今回は優勝を狙っていましたか?

柳下:ありがとうございます。はい、狙っていました。ただ、初日はレースの特徴をつかむために確実にいったのですが、結果として2位の鹿島田・山田ペアとは2秒差という僅差でした。彼らも実績と実力のあるチームなので2日目は攻めなければ負けると思い、攻めた結果優勝することができて満足しています。

RBRG:初日の2秒差という結果を参加者として1日目のゴールをした時点で聞き、非常にスリリングな展開に興奮しました。スタート時刻がそれぞれ違うのでゴール順と実質の順位が違うのは面白いですね。

RBRG:さて、既に先日ルート図と解説は公開されていたのですが、今日はそれらに対してもう少し噛み砕いたお話をナビゲーションレースに慣れの無い人間の視点からおうかがいできればと思います。よろしくお願いします。

柳下:よろしくお願いします。

RBRG:まずはスタートからですが、地図はスタート1分前にわたされますよね?そこからどのように戦略を練りましたか?

柳下:スタート直前に地図が渡されるというのはオリエンテーリングと同じなのでその形式自体には慣れがあります。今回のCP1は道沿いだったので、スタート直後に地図を見て1へのルートを考えるという行為はシンプルでした。

柳下:ただ、1への分岐の手前で入り組んだ細かい分岐がいくつか地図に書かれていたため、そっちに迷い込んでいるチームもいくつか見受けられましたね。

柳下:1に行くまでの区間では、走りながらA~Fまでの6つのポイントのうちどの4つのポイントを取るかを考えました。結果としてA>B>C>Dの順で取ることにしました。

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RBRG:今回のナビゲーションはどちらがイニシアティブをとったんですか?

柳下:基本自分がメインで、市岡さんにサポートしていただく形になりました。

RBRG:A~Fのうち、A>B>C>Dと回ることにした理由を教えてください。

柳下:まず上りの標高差を考えてFは無いなと考えました。また距離があるのでEも選択肢から外しました。

RBRG:素人考えなんですが、僕はA>B>D>Cと回って、DからCをオフトレイルで行った方が時間短縮になるかなと思ったんですが。

柳下:DからCへの下りは等高線が急なのと、実際どのような地形か行ってみないとわからないと考えました。初日の序盤で確実に行きたかったということもあり、不確定要素はなるべく外したく、ロードを通ってC,Dの各ポイントの近くまで行くというプランにしました。

RBRG:なるほど。それではまずA、Bはどのようにアプローチしましたか?

柳下:Aはポイントの南南西にある分岐を過ぎたあたりから、オフトレイルにはいりやすい場所を探し、そのままピークへ直登しました。

柳下:Bは北西のトレイルにおりた後、走行禁止区間の脇をぬけ、もう一本奥のトレイルに出て尾根の上部からアプローチしました。

RBRG:なるほど。僕は、Aからコンパス直進で直接Bを目指した結果、地図に乗ってない沢に惑わされて10分前後タイムロスしてしまいました。確かに1回トレイルを経由した方が確実ですね。

柳下:はい。それと、沢側から回り込むと一回おりて登り返さないといけないということも考慮しました。

RBRG:さて、Cなんですが今回ストレートに出場した多くの選手が一番苦戦したのがこのCのポイントだと思うんです。僕も結構な時間さまよいました(笑) 柳下さんはどのようにアプローチしましたか?

柳下:Cへアプローチするロードで道がほぼ北に向いているポイントがあります。道はそこから西方向にカーブしていくのですが、そのまま方角をキープして直進しオフトレイルを下りました。そうすると丁度等高線がくぼんだ場所に出ます。そこから沢筋をたどってノーミスで取りました。

RBRG:今こうやって答えを聞いても、自分が次回同じ場所ですんなり取れる自信が無いですが(笑) ここは他にもっと優しい取り方はあったんでしょうか?

柳下:ここに関しては他にわかりやすいアプローチは無いと思います。さらに道から近くて易しそうに見えることもあり、皆さん苦戦したんでしょうね。運営側がわざと難しくしたポイントではないかと思います。

RBRG:僕はロードからアプローチしたポイント自体は柳下さんと一緒だったんですが、コンパス直進で直接ポイントを狙うも、Cがあるはずの沢の水が見当たらないので、どんどん下っていってしまいました。雨も降っていたし、下の方で沢が流れているようにも聞こえてしまいました。結果高度計を見て下り過ぎだと気づき引き返したんですが、柳下さんは今回のレースで高度計は使いましたか?

柳下:オリエンテーリングでは、沢は実際流れてないことも多いのでその辺は慣れの問題もあるかもしれませんね。高度計は使いませんでした。基本的にオリエンテーリングやロゲイニングで高度計を使うことがあっても、500mの上りのうちいくら上ったかと言う様な目安の確認くらいですね。

RBRG:トレイルランニングのレースで僕らが高度計を確認するのと同じ意味合いですか?

柳下:そうですね。こういったナビゲーションにおける50m位の高度差は体感でわかりますので。

RBRG:その辺は我々との圧倒的な経験の差なんでしょうね。ちょっとルート解説から話を変えますが、今回の日本初のOMMのコース設定、設定側の意図を感じる部分はありましたか?

柳下:先ほどのCの様な場所は例外ですが、ポイントにアプローチするのに複数の選択肢があるものが多かったように思います。また、初日のコースはわかりやすく参加者をレースに慣れさせて、2日目のコースは少し難しくなっていたと思います。

RBRG:例えば2日目の8番とか?

柳下:そうですね(笑)

RBRG:ルートの解説に話を戻します。6~7までは林道〜トレイル経由の正攻法で行かれましたね。尾根の直登や、戸塚峠経由のトレイル等の選択肢があったと思うんですが。

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柳下:その辺は先ほども言ったように、初日なので様子を見ながら確実に行ったというのが大きいですね。ちなみに尾根伝いの直登はレース中は見えていませんでした。ただ、厳密に言うとここを上って7にアプローチしようとすると「トレイル以外通行禁止エリア」に入ってしまうので、7へのアプローチは左右どちらかのルートからアプローチするしかないですね(笑)

RBRG:あ、確かに(笑)ちなみに、柳下さんはもっとオフトレイルを直進しているのかなと思ったんですが、結構わかりやすい林道やトレイルも選択するんですね。

柳下:はい。先ほど言った様子見という理由の他に、地図の問題もあります。オリエンテーリング用のマップはOMMのものより詳細に書かれていて、そのエリアが入れるエリアかどうかが書かれているのですが、OMMのマップは等高線とレース運営上の禁止エリア以外の情報は書かれていない。なので、そのエリアがどんなエリアか行ってみないとわからないんです。

RBRG:そうなんですね。僕も以前の柳下さんの講習で使ったオリエンテーリング用マップやUKのOMMで使ったマップに比べて、今回のマップは色数が少なくて見にくく感じました。例えば等高線と舗装路が見分けにくかったり。更に雨や泥でどんどん見にくくなりました(笑)

柳下:そうですね。レース後「マップが見にくいのは老眼のせいか?」と言う声がちらほら聞かれましたが、今回のマップはそういう問題とは別に僕も見にくかったです(笑)

RBRG:「老眼か?」の声は僕も聞きました。柳下さんでも見にくかったと聞いて安心しました(笑)ルート選択についてはここから先は別途公開のルート解説に詳しいと思うのでそちらにゆずるとして、それ以外の質問をさせてください。全体的に見て1日目のコースで苦戦したところはありましたか?

柳下:7~8のルートは戸塚峠から南西に下るトレイルを選択したんですが、トレイルの入り口が見つけにくかったり、ルートがわかりにくく、また足下もガレていたりぬかるみや滑りやすくなっていて慎重になりましたね。1日目の中ではここが一番嫌な区間でした。

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柳下:それから苦戦したという訳ではないですが、6~7は7~8km位の距離がありましたよね。ポイント間がこれだけ開くということはオリエンテーリングではないことで、これがOMMの特徴なんだなと思いました。

柳下:あと皆さんが感じた難易度や、初日の完走率の低さについてなんですが、まだレースに慣れていない序盤にA~Fの様な難易度の高いポイントを回ったため、出鼻をくじかれてしまったのかもしれませんね。その後に6~7の様な長距離の移動や悪天候もありましたし。レース中盤や後半に難易度の高いポイントが出てきていたら、皆さんのレース全体の印象もまた違ったかもしれません。

RBRG:確かにそれはあるかもしれませんね。話は変わりますが、レース中の補給はどうしましたか?

柳下:行動食はジェルとエナジーバーを持っていきました。40分に1回の補給でトレイルランニング時の補給とほぼ同じでしたね。

RBRG:重い荷物を背負ってのレースについても聞かせてください。様々な大会に出られていると思うのですが、この形式の大会の経験はありますか?

柳下:2日分の食料、テントを持って走るというOMMの形式ははじめてでした。

RBRG:普段との違いはどのようなところに感じましたか。

柳下:足場の安定したところを走っている際はいいのですが、不安定な場所でのバランスの取り方が普段と違ったので少し意識しました。

前編はここまで。後編は装備やテント場での過ごし方、2日目のレース内容や今後について、お話していただいた内容をご紹介します。