スタッフ・キーのハセツネ
10月9日(日)〜10日(祝)にかけて行われたハセツネCupに当店スタッフのキーちゃんが出走してきました。目標の12時間切りを果たし、自己ベストの11時間52分56秒。順位は女子総合17位という好成績を収めました。
このブログでは、キーちゃんのハセツネを振り返ってみたいと思います。
目次
リザルト概要
まずは、参加人数や当日の気象条件などを簡単にまとめました。
完走率は低め
今年の完走率は69.1%と例年より低めの結果になりました。雨と低い気温によるリタイヤが相次いだ影響かと思われます。
2022年 | 2017年 | |
出走総数 | 1,877名 | 2.332名 |
完走総数 | 1,297名 | 1,729名 |
完走率 | 69.1% | 74.1% |
予想に反して気温も低め
近年のハセツネは気温が高く、暑さに苦しめられるという印象が強かったので暑さ対策に注意が向いていましたが、当日の天候はスタート時点は曇りだったものの、夕方から深夜にかけて雨が降り、例年より低い気温という条件でした。低めの完走率の原因は、選手の寒さ対策が不十分だった可能性がありますね。
参考までに三頭山山頂の気温推移(想定値)をグラフにしてみました。夜間にかけては6℃前後と、東京の2月ごろの気温まで下がっていたことがわかります。稜線の風が加われば体感温度はさらに低かったと思います。雨は夕方から降ってて、21時ころから3時ごろまで雨足が強くなってることがわかります。
速い選手は雨が強くなる前に核心部を通過していますが、多くの選手は標高1000m以上の区間(三頭山から大岳山)で本降りの雨に遭ったことになりますね。
当日の様子
当日のコースの様子は、Run boys! Run girls! トレイルランニングクラブ所属の星野さんがYouTubeに上げてくれています。参考にしてください。
RBRGブロガーのアサイセンセーも医療スタッフとして参加されていました。当日の様子とレース後のケアについてアップしてくれています。感謝。
スタッフ・キー
スタッフ・キーとは
今さらですが、ご本人紹介。
Run boys! Run girls! ショップ店員にして、トレイルランナー。本名「仲田潔子」。愛称は「キーちゃん」。埼玉県在住で「奥武蔵」山域をホームグラウンドとする。Run boy! Run girls!トレイルランニングクラブ マイラーチーム所属。
<過去の戦績>
2017 トレニックワールド彩の国100で初の100mile完走
2018 UTMF完走
2018 KOUMI100で女子総合優勝
2019 UTMB完走
2021 FTR100 3位
改めて見ると、すごいですなあ。
今回のリザルト
リザルトもご紹介。(ハセツネ速報より)
順位: 女子総合 17位
通過タイム: ([ ]内は区間タイム)
第一関門(浅間峠):3時間27分58秒
第二関門(月夜見):7時間5分47秒 [3:38]
第三関門(長尾平):10時間15分49秒 [3:10]
FINISH:11時間52分56秒 [1:38]
ハセツネには「第一関門まで:第二関門まで:それ以降」の区間タイムが「3:3:4の割合に収束する法則」があります。上記タイムは分換算で「207:217:288」となり、今回もその法則はしっかり生きているようです。
インタビュー
「レース振り返りブログを書いて」とキーちゃんにお願いする前に細かくレースの状況を聞いてしまい、「今聞いた話をもれなくブログに書いてください」とは言い出せなくなったので、インタビュー形式にしてお届けします。。。
しっかりと練習しました
−今回のハセツネに向けて、どんな練習を積んできましたか?
普段は月間200-250km程度なんですが、9月は350kmまで伸ばしました。メインはゆっくりペースですけど、週一回のクラブ練習がポイント練習で、それ以外にも峠走を入れて負荷を高めましたね。
あと、今回は筋トレにも力を入れました。ブルガリアンスクワットとか。
−ハセツネコースの試走はしましたか?
しました。前半部(五日市から浅間峠まで)を2回。中後半部(浅間峠から五日市まで)は1回ですね。
−思った以上にガッツリ練習してますね。
そうですよ。ビールばっかり飲んでるって思われがちですけど。笑
ケガのせいで練習不足のまま出た7月のONTAKE100をDNFして「これはヤバいぞ」と思ったんです。それから本格的に練習しました。
寒さには強いのかなぁ
−今回はどんな装備でしたか?
新しく買ったのはハイドレーションのみで、他は手持ちのギアでした。
タンクかTシャツか悩んだけど、スレが心配なのでTシャツにしました。
ヘッドランプの下に着けるBuffを忘れて、走るとランプがずれてしまい終始ストレスでした。これは大失敗でしたね。
練習の時からニューハレのテープを愛用してて、ニーダッシュは膝の疲労軽減で、Xテープはグネリ防止に役立ってます。
【今回の装備一覧】
ハイドレーション:プラティパス 2L
メインランプ: LEDLENSER NEO10R(白)
サブランプ: GENTOSハンドライト
ザック: THE NORTH FACE TR10
シャツ: RBRGシャツ(Answer4)
パンツ: Patagonia Endless Run Shorts Women’s
アームスリーブ:OLENO
レインジャケット:Salomon Motion Fit(Mens)
レインパンツ:THE NORTH FACE 古くてモデル名不明
ソックス:drymax
シューズ:THE NORTH FACE Vectiv Infinity
テープ: ニューハレ ニーダッシュ、Xテープ
保護クリーム:TOMO’S PIT テングバーム
−みんな雨と寒さで苦戦したのにベースレイヤーもグローブもなし?
寒いって感じなかったんですよねー。でも、レインジャケットの素材がGORE-TEX Shakedryだったんで、雨が生地の表面に残らなくてすごく良かったですよ。
「魚むすび」をいきなり実戦投入
−補給作戦は?一番心配していた水分はどうでした?
水分は多く摂るほうなので、ハイドレーションパックに2Lの麦茶、ショルダーポケットにも600mlの麦茶ペットボトルを一本刺してスタートしました。
気温が低かったせいか、第二関門の月夜見まででもハイドレーションパックの2Lは飲みきれず、ペットボトルは手つかずでした。
月夜見ではポカリスエット1.5Lをハイドレーションパックに入れました。量的には充分でしたね。
−エネルギー補給はどうでしたか?
エネルギーは、メダリスト5本と、魚むすび6本を持っていきました。これはすごくハマって大成功でした。予備にガルボ(チョコ)x1、黒糖わらびx2、おいエナx1も持ちましたが、手をつけずに終わりました。
−「魚むすび」って?
マルハニチロから出てる行動食(100Kcal/本)なんですけど、以前サンプルを食べたことがあって、食べやすくてすごく美味しい!レースで食べたいなあって思ってたんですけど西日本でしか販売してなくって。
今回いろいろ調べたら、豊洲のマルハニチロのアンテナショップで売ってるって知って買い占めてきたんです。笑
魚むすびは今回初めてレースで使ってみたけど、自分にはすごく合ってるなって感じました。ジェルが苦手なので、ジェル→魚むすび→ジェルと交互に食べることで、エネルギー補給がイヤになりませんでした。
ジェル練習で「あーこれかー!」
−ジェルが苦手なんですか?
そうなんです。ジェルが苦手で、考えただけでも「ウエッ」てなっちゃうくらい。なので、レースでも補給は少なめだったんですよね。
それで、今回は「ジェル練習」したんですよ。練習の時からジェルを摂るようにして、慣れようと。
で、ジェル摂るとやっぱ動けるなあってことに改めて気づきましたね。
「あーこれかー!」って。
何年トレランやってんだよって話で、今さらなんですけど。笑
−じゃあ今回はエネルギー補給がハマったって感じなんですかね?
そうですね。食べ続けられたのはすごく大きいですね。
スタート前は時間に余裕を
−当日、スタート前の過ごし方は?
バタバタしたくないんで早めに来ました。10時に駅に着いて、セブンイレブンで買い物(麦茶、わらび餅とか)してから会場へ入りました。ゆっくり食事したり、テーピングしたり、ザックにモノ詰めて、グラウンドでクラブのメンバーで集合写真の撮影やおしゃべりをして過ごしました。
アップ? してないです。してる人はいましたけど。これから走るのになんで?って。したほうがいいのかなあ?笑
−どの辺に並びましたか?
11時間台を目標としてたので、11時間のところですね。ちゃんとマナーを守らないとダメですよね。守ってなさそうな人がたくさんいましたが。
いいペースで走れたと思います
−スタートから第一関門まではどうでしたか?
エリート部門が先にスタートしていることもあってか、落ち着いた感じのスタートでした。ゼーハーしない程度のペースに抑えて走りました。予想どおり変電所手前のシングルトラックで詰まりましたが、歩ける程度の渋滞で止まってしまうことはありませんでした。
今熊神社を越えてからも例年通り数珠つなぎで進みましたが、ひどい渋滞には遭いませんでした。後続の人からは渋滞で止まったって聞いたので、まあまあ速かったんですかね。
第一関門(浅間峠)には3時間27分で到着しました。思ったよりも速くて「今日は調子いいのかな?」と思いました。ここでヘッドランプを着けました。
雨や寒さよりドロドロが気になった
−第二関門も7時間で着いて、いいペースですね。雨や寒さはどうでした?
雨は降ってたんですが、レインウェアを着るほどではなくて、寒さもさほど感じませんでした。ただ、息は白かったんで「気温は低いんだろな」とは思ってました。
結局、レインジャケットを着たのは月夜見出た後で、涼しいかなと感じた御前山の登り(45km地点)からですね。
寒さよりも、足元が悪く、ドロドロで滑るし、水溜りもあって思い通りに走れない、そっちの方が気になりました。
眠気に苦戦するもジェルと瞑想で対抗
−第二関門以降はどうでしたか?
大岳山の登りで、強烈な眠さが襲ってきてフラフラになっちゃって。ここでは沢山の人に抜かれてしまいました。
でも、眠さを感じるには早すぎる時間帯だし、これはおかしいぞと。経験的にハンガーノックの症状かもと思ったので、すぐにカフェイン入りのジェルを摂りました。
すぐに効くものでもないので、フラフラのまま山頂につくと、あまりの眠さにベンチに座ってしばらく瞑想しました。
−瞑想?なにそれ
「私は今何をしたらいいの?」とか自分に問いかけるんです。笑
目を瞑って心を落ち着かせたら、眠気がなくなったので、また走り出すことが出来ました。
今思えば、この辺りが今回の一番苦戦したところでしたねー。
−苦戦した割には第三関門の長尾平には10時間15分の好タイムで到着してますね。
そうなんです。苦戦したのにタイム的にはそんなに悪くないですよねー。でも、その時はそんな風に思ってなくて、12時間切りは無理かーって。
完走証みて泣きそうに
−12時間切りを確信したのはどの辺りですか?
金毘羅尾根がすごく長くて、まだかまだかって感じで最後までわからなかったけど、「あと2km」の立て看板を見た時にまだ20分あって「キロ10分でも間に合う!」って、そこから最後の頑張りが出ました。
−で、ストロングフィニッシュを決めたと。ゴール後は?
声援もギャラリーもなく、寂しい感じのゴールエリアでしたけど、午前一時の住宅街だから仕方ないですよね。。。
それから完走証を受け取って。「あぁ本当に12時間切れたんだ!」って実感が湧いてきて、泣きそうになりました。
で、出店やってたので、早速ビール買って祝杯あげました。
−やっぱり。笑 悪条件でも12時間切れたから、来年は11時間切り狙う?
どうですかねー。11時間はムリかなー。
−いや、来年も期待してますよ。目標達成おめでとうございました!
まとめ
キーちゃんの話を聞いてみて感じたのは、「目標をたてて、それに向けた練習を積んで、弱点を克服する工夫をする」という地道な努力なしに目標は達成できないってことですね。
当日は低い気温だったので寒さに強いキーちゃんに有利に働いたとは言え、サーフェスは悪かったのでこのタイムで走るのは大変だったと思います。
どちらかといえば、キーちゃんは100km超のロングレースが得意という印象がありましたが、エネルギー補給の弱点を克服した今、ミドルレースでも好成績を連発する予感がします。
これからの活躍が楽しみですね!