様々なトレイルレースを経験する良さ
今回は、様々なトレイルレースを経験する良さについてお話したいと思います。世の中には多くのスポーツがある中で、トレイルランというスポーツは、全く同一条件の下で開催されることはありません。
例えば、同じ100マイルレースでも、日本と香港の100マイルレースは全く特徴が異なります。
香港の山の特徴として、コンクリート舗装された階段とトレイルがほとんどであるため、日本のレースと比べて脚への負担が大きく、身体を上手くケアしながらレースを進めなければ、完走することができません。
香港の100マイルレースから学んだことは、下りはストックを効果的に活用すること、登りはなるべく小さな歩幅で登る(段差が低いところを選んで登る)ことの重要性を学びました。
私自身、これまで数多くの香港の大会を経験してきましたが、もし香港のトレイルを一度も経験していなかったら、恐らく欧州のUltra Tour Monte RosaやL’Échappée Belle intégraleといった難易度の高いレースを完走することができなかったと思ってます。
このように、あるレースで経験したことを別のレースで上手く利活用することが、実は目標達成の最短ルートかつ勝ちパターンであると私は感じています。
例えば、UTMBを目標レースだとした場合、香港のレースに出ても無意味であるというのは、私自身の経験上それは間違いだと思っているということです。
仮にUTMBが目標であっても、UTMBとは全く別ジャンルの砂漠や雪上のトレイルレースなど様々なレースを経験することが大切だと私は感じています。
そこから得たものをUTMBで有効活用すれば、UTMBでレース中にピンチに陥ってもその経験を活かしてゴールまで辿り着ける可能性が高まります。
私は、世界各国の様々な100マイルレースを走破したことで、今ではどんな100マイルレースに出ても柔軟に対応できるようになりました。
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様々な経験をすることの大切さはトレイルランに限った話ではなく、例えば、仕事においても同じことが言えると思います。具体的には自分が働く業種や職種によって、得られるスキルが全く異なるということです。
これまでは、その企業で長年もしくは定年まで働くというのが当たり前でしたが、昨今では転職を通じてキャリアアップすることが当たり前とされる時代となってきました。
しかし、ここ10〜20年で上記のように働き方が大きく変わっていく中で、私は昔から社会の一般常識とは逆行した人生を送ってきました。つまり、ある企業で長年に渡って働くことなく、様々な会社や業界、職種を渡り歩いてきました。
具体的にお話すると、大卒後は大企業に勤めていましたが、転職を重ねるに連れて企業規模が小さい企業へ渡り歩き、今ではスタートアップ企業に勤めています。
また、これまでの職種の経歴も、エンジニア、営業、マーケティング、コンサルタント、アナリスト、データサイエンス、人事など多岐に渡って経験してきました。
それぞれの職種から得られるものは全く異なります。例えば、エンジニアと営業では得られるスキルや思考力は私の経験上、全く異なります。
エンジニアは、創発的な視点でより良いプロダクトを作るという考えとなる一方で、営業は顧客への課題解決力といったスキルや思考力が必要だと私は感じています。
私はこのように多くの職種を経験したことで、自分に合う、合わない職種が何であるか認識することが出来ています。
様々な職種を経験した結果、私の自信の一番の強みは、上記職種の中でデータサイエンスであることが分かりました。
データサイエンスという職種を聞き慣れない人に、この職種について説明をすると、「データを用いて新たな科学的および社会に有益な知見を引き出そうとするアプローチのこと」です。
具体的に説明するなら、企業内に眠っている様々なデータを集約・統合して、そのデータを定量的な観点から分析し、経営における意思決定・示唆を与える、といった仕事になります。
私はよく周りのトレイルランナーから、「よくこんなニッチな海外レースまで知っているよね?」とよく言われることがあります。
日本人が誰も知らない海外レースを調べるという面倒なことをやっていると思われがちですが、私は上記の通りデータを使った仕事をしているので、何かをリサーチするというのが、私にとっては当たり前のことであり、全く苦だとは感じていません。
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上記、仕事の事例から何が言いたいかというと、何かと何かを比較することで、自分の強みや弱みを可視化できるということです。
この考え方が、トレイルランにも当てはまると私は感じています。トレイルランというのはその地域の山の特性を活かしてレースが行われるため、全く同じ条件下で大会が開催されることはありません。つまり、それぞれ個性の強い大会ばかりということです。
それぞれ個性のあるレースに出ることによって、自分がその領域に合う合わないだったり、自分の強み、弱みが何かを可視化できるのがトレイルランの特徴だと思います。
従って、ある領域に特化した大会に出てトレイルランの経験を積むのではなく、時間と金銭的な余裕があれば、私は様々な大会に参加すべきだというのが私の考えです。
加えて、海外レースとなると日本にはない特徴的な大会も数多くあるため、海外レースを一度経験するのも選択肢の1つだと私は感じています。
私が海外まで足を運んでいるのも、こういった特徴ある尖った大会に出ることで、これまでとは違った知見を得ることを目的としています。
とはいっても、私自身まだまだ海外レースにおいて未経験の領域があるのが正直なところです。今後、時間とお金を費やして、これら領域に挑戦していく予定です。
海外レースだと、日本以上に様々な領域のレースがあります。私が思いつく限りかなり特徴のある大会をリストアップしています。
ここに掲載しているのは、ほんの一部に過ぎません。他のレースを知りたいということであれば、ITRAなどをみると約5,000件のレースが掲載されていますので、そちらをご確認ください。
また以下に紹介する大会について、各レースの詳細については割愛します。レース名に大会URLのリンク先を貼り付けていますので、詳細は各ホームページをご確認ください。
諸島で開催されるレース
ポルトガル:アゾレス諸島
EPIC Trail Run Azores
ポルトガル:マデイラ諸島
Maxi Race Madeira
モーリシャス
Dodo Trail
マルタ共和国
XTERRA Malta Gozo Ultra Trail
オーストラリア:タスマニア島
Gone Nuts Adventure Run
砂漠&雪上を走るレース
オマーン
Oman Desert Marathon
チュニジア
Ultra Trail Gazelles Sahara
スウェーデン
Skåne Frozen Trail
エストニア
TALIHARJA VANAKURI winter ultra endurance race
世界遺産&リゾート地を走るレース
イタリア:アマルフィ
Amalfi Positano UltraTrail
カンボジア:アンコールワット
UltraTrail d’Angkor
スイス:ツェルマット
The Matterhorn Ultraks
イタリア:ドロミテ
Dolomiti Extreme Trail
マレーシア:ペナン島
BUFF Epic Ultimate Trails Of Penang
スペイン:イビサ島
3 Días Trail Ibiza-Ultra Ibiza
複数の国を跨いで走るレース
ドイツ&オーストリア
Zugspitz Ultratrail
イタリア&スロベニア
S1 Trail La Corsa Della Bora
タイ&マレーシア
Amazean Jungle Thailand by UTMB
チェコ&ポーランド
Supermaraton Gór Stolowych
標高3,000m以上を走るレース
メキシコ:最高地点4,000m以上
Sky Ultra Pico MX
インド:最高地点4,000m以上
Solang SkyUltra
インドネシア:最高地点3,000m以上
Merbabu SkyRace
ネパール:最高地点4,000m以上
Manaslu Mountain Trail Race
その国の最高峰を走るレース
スペイン最高峰:テイデ山(3,718m)
Tenerife Bluetrail
フィリピン最高峰:アポ山(2,954m)
Mt. APO Sky & Vertical Race
イギリス最高峰:ベン・ネビス山(1,344m)
Ben Nevis Ultra
タンザニア最高峰:キリマンジャロ山(5,895m)
World’s Highest Ultra Marathon
ギリシャ最高峰:オリンポス山(2,917m)
Olympus Mythical Trail
上記の通り、日本では経験することができない大会ばかりで、特徴的なレースばかりです。これら紹介したレースの中で1つでもチャレンジしてみると、また違った景色が見えると思います。私自身も様々な海外レースを経験したことで、かなり自分の視野が広くなりました。
また、上記の分類に加えて、例えばノンストップレースかステージレースなのか、もしくはロング、ミドル、ショートレースなのかといった、また別の属性と組み合わせると、また違った景色が見えるようになると思います。
私自身、これまでステージレースを経験したことが一度もなく、ステージレースを一度経験すると、またそこから得られるものが新たに出てくるのではと感じています。
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秋から年末にかけて、来年の海外レースのエントリーが始まっています。しかし、これらは人気のある大会がほとんどです。
しかし、今回紹介した大会は、人気のある大会ではなく、かつ抽選エントリーではないため開催直前(1ヶ月前)までエントリーを受け付けている大会がほとんどです。
これから来年のレース計画を立てている時期だと思いますが、海外への渡航も緩和されている中で、来年は海外レースに挑戦することも選択肢の1つだと思っています。
私自身は、既に来年は2つの海外レースにエントリーをしています。来年に入って仕事の状況などをみて、これらに加えてプラス1、2レースには挑戦したいと思っています。