SOUTH-南米編- ④ボリビア(ウユニ塩湖)
星野さんの南米自転車旅行は早くも第4回です。今回は一度は訪れたいと思ってた世界有数の絶景ポイントである「ウユニ塩湖」を目指します。
前回のブログはこちら
2023/1/16
いざウユニ塩湖!
と鼻息荒く出発したんだけど、何といきなりルートミス…
エル・アルトから1号線に乗る際に本来右折して南下しなきゃいけないんだけど、何を血迷ったかうっかり左折してラパス市街に突っ込んでしまう…
↓本当は青に行かなきゃいけないのに赤に進んでしまった
なかなか走りやすい道にならないな~、なんてボーッと走ってたら、目の前に見覚えのあるすり鉢状の街が広がってやっと気づく始末。
タイムロスは1時間半程度。
トレランレースもそうだけど、この手のルートミスは体力的にはもちろん精神的にくる。今後の大ロスト予防のための授業料だと自分を慰める。
急いで引き返し正規ルートに乗った途端、渋滞は無くなり一気に走りやすくなった。
安心した途端、お腹がグーっと鳴る。
折よく現れた美味しそうな匂いをモクモクと撒き散らす屋台にピットイン。
外のコンロでチョリソーやら骨付きカルビやらをジュージュー焼いて、ご飯に乗っけて出してくれる。
そりゃー美味しいに決まってるよね~
鶏肉のクリームパスタ的なスープとセットで10BS(200円)!
相変わらずこの国の屋台飯はコスパがバグってる。
(高地ライドについて)
常に標高4,000m前後というこの国でロングライドするにあたり、何となく2つの事に気をつけるようになってきた。
一つは心拍を上げすぎないこと。
酸素の薄いこの国では、ちょっとでも心拍が上がると直ぐに肺が空っぽになるような息苦しさに襲われる。なので登り坂では必ず2枚以上ギアを落として負荷が上がりすぎないようにすると共に、それでも対応できない急坂は積極的に押し歩くようにした。
このあたりの心拍コントロールについては、私が所属するランボーズの礒村コーチから徹底的に叩き込まれたマフェトンペースでの練習が奏功したと思う。
もう一つは上記に付随するのだけど、常に肺に酸素を残しておくこと。
息を吐ききってしまうと、一息で吸える酸素量では脳が足りず目眩がしてしまう。特に水を飲む時や、くしゃみや咳をする時など、いつもの感覚で息を止めてしまうと、その後しばらくクラクラして一度自転車を止めて回復を待つハメになる。
ダイビングをやる方なら分かりやすいと思うのだけど、中性浮力をとる時のように決して息を吐き切らず、肺の中に常に一定の空気が残っている状態を意識してゆっくりと呼吸をするようにした。
(補給ポイントについて)
国道沿いでは概ね20~30km毎に街や村、集落が現れる。
レストランがあればご飯やパスタに肉や魚を乗せたものを出してくれるし、飲食店が無くても大体小さな露店はあって水や炭酸飲料、クッキーやチョコレート、場合によっては卵やパン、インスタントラーメンも入手出来る。
(トイレ事情)
観光地や大きめの街には有料の公衆トイレが必ずある。
「BANO(バーニョ)」と書かれた看板が出ていて、入口のそばに人が座っているのでお金(1~2BS)を払うとティッシュをくれて、中に入れてくれる。
公衆トイレが無いような場所であれば、逆に広大な大地があるので何とかなる…
(ホテル事情)
日本と同様、宿泊費は概ね街の集客力に比例して高くなる。
ラパス、エル・アルト、オルロといった大都市はそれなりにするし、国道沿いのベッドタウンや田舎町だとお手頃になる。
また名称にも何となく意味があって、所謂「HOTEL」は原則としてトイレ、シャワー付きの個室で値段も100BS以上で青天井。「HOSTAL」「ALOJAMIENTO」「RESIDENTIAL」は部屋にはベットだけがあって水回りは共同なことが多い。もちろん値段もファシリティに相応して30BS~80BSとピンキリ。
ただこの辺りはあくまでも参考。地域によってかなりバラツキがあるので、その都度フロントに確認しながら、持っているキャッシュと疲労度のバランスで決めていった。
初日の宿はエル・アルトから100kmほど走ったパタカマヤにテェックイン。
一泊35BS(700円)でwi-fiはなく、お湯も(壊れてて?)出なかった。
晩御飯はチキンプレートのテイクアウト15BS(300円)
2023/1/17
朝、前日に買った卵を携行するために、今回の旅のために新調した卵ケースを初めて開けたら、中に小さいアヒルのフィギュアが!
まさか孵化した!?と思ったら、妻が悪戯でこっそりと忍ばせておいたらしい。
あー、ビックリした 笑
大きなパニアバックを2つも付けて走っているとそれなりに目立つらしく、通りすがりに手を振ってくれたり、声をかけてもらえたりする。言葉はほとんど分からないけど、善意と好意は伝わる。
こういう良い意味で遠慮のないコミュニケーションは素直に嬉しいし、前に進む推進力になる。
↓料金所で警備していたポリスにも話しかけられた。ヒマだったのかな…
この日は大都市オルロで一泊。
2月には南米3大祭のオルロのカーニバルが開催されるらしい。
ん~、ニアミス…
一泊60BS Wi-Fi ○ 温水シャワー × バイクはガレージに置かせてもらえた
2023/1/18
3日目ともなると行動もルーティン化してくる。
朝は大体オートミールにツナ缶と卵を入れた雑炊。当日のルートと宿泊場所の目安をつけて7:00前には出発。
午前中は比較的風が弱いのでマイペースを維持しながらもなるべく距離を稼ぐ。12:00を過ぎると段々風が出てきてしかもほとんど向かい風なので、無理のないペースに速度を落としジリジリと進む。
今回の自転車旅行に私はサイコン(サイクルコンピュータ)やGPSウォッチを持ってきていない。道は比較的分かりやすいし(と言いつつ初日に思いっきりミスったけど)、走った距離はGoogleマップで検索すれば分かる。
またこれはこっちに来てから知ったけど、国道には首都ラパスからの距離表示もあった。
↓ラパスから200km地点の標識
今回は軽装備で軽快に走る普段のツーリングと違い、衣食住を一式持ったやどかりスタイル。巡航速度は恐らく時速15kmを下回る。わざわざ自分のノロノロ加減を常にサイコン等で突きつけられるのは逆にストレスになってしまう。
だとすれば、余計な数値は見ないに限る。
自分の評価指標はいつだってオプショナル(自分で決める)だ。
概ね体内時計の通りの時間に宿泊予定地だったチャヤパタに到着。
一泊30BS(600円)Wi-Fi ○ 温水シャワー ○ バイクはホテルの中庭
教えてもらった手書きのWi-Fiパスワードが(私には)暗号すぎて、結局ホテルの方に入力してもらった…
2023/1/19
ウユニが近づいてきて、南米特有の動物たちを見かけるようになってきた。
野生のビクーニャ(多分…)の群れ。
こっちに気づくと逃げていってしまう。
リャマは家畜として放牧されている。
こっちに気づいても全然逃げない。
またこの日から国道1号線から30号線に分岐したんだけど、その途端、一気に補給ポイントが減ってしまった。
手持ちの食料が乏しくパンにマヨネーズを塗って食べる。侘しい…
道端にパラソルを立てて飲み物とスナックを売っていた。まさに砂漠のオアシス!
宿泊直前の村で何とか食料もゲット。
と言うことでこの日は道路脇の空き地で野宿。
2023/1/20
ウユニの街まではあと80km弱。
しかしGoogleマップを確認すると、有名なウユニ塩湖は、ウユニの手前のコルチャニという街が玄関口らしい。だとすればわざわざウユニまで行って戻ってくるのも時間の無駄なので、先にウユニ塩湖に行く事にする。
コルチャニまであと10kmのところにあった展望台。
遠くに広大なウユニ塩湖が見えた!
11:30頃、コルチャニの街に到着。
土産物屋は塩製品がズラリ。
これは巨大な塩の結晶。
そしていよいよ待望のウユニ塩湖に漕ぎ出す。
赤茶けた土の大地が段々と白い塩源にグラデーションしていく。
次々と追い越していくワンデイツアーの車に応援されながらしばらく走ると有名な塩のホテルに着いた。
窓には様々なワッペンがびっしり貼ってあって海の家とか山小屋みたい
中には宿泊客以外でも入れるようなっていて食事もできる。
各国の旗が立つモニュメント。
ここは2018年のダカールラリーのコースになったらしい。
思わず俺も感化されて塩湖の更に奥へ進んでいく。
脳内にはF1のテーマソング(T-Squareバージョン)が爆音で流れている。
視界が空の青と大地の白で埋め尽くされる。
仲間を発見!
水が溜まって鏡面のようになる有名な景色が見たくて時間にして5時間、距離にして60kmほどを漕ぎ進んだけど、今回は残念ながらまだ雨量が足りず見ることはできなかった。
とは言え、せっかくなので塩湖の中心あたりにあるインカウアシ島という島の麓で一泊することに。
2023/1/21
ウユニ塩湖の朝日。
モノトーンだった世界に一筋の光が差すと地平線を持ち上げるように世界に色が戻ってくる。
灰色だった空は抜けるような青に、漆黒の大地は輝く白に。そして流れる雲が大地に溶け込んでいく。
一日の壮大なオープニングをたっぷりと満喫。
さすが世界有数の絶景ポイント。非日常感が半端じゃない。
それでは日常世界へ戻ります。
ウユニの街に向かう途中にeバイク乗りに遭遇。
スロヴァキア出身のグスタフは何とアラスカからアメリカ大陸を縦断してきてるらしい!私と同じく南米最南端のウシュアイアを目指しているらしいので、またどこかで会えるといいな。
ウユニの街では休息とバイクのメンテ。
あとはこのブログを書いたり、YouTubeを編集したり、しばしノンビリ。
泊まったホテルは一泊60BS Wi-Fi ○ 温水シャワー○
ウユニ塩湖で塩まみれになった相棒を洗車
お気に入りのテラス席
ローカル御用達のBBQ屋さん。このボリュームにサラダバーが付いて30BS(600円)
ここまでの行程
人生で一度は訪れたいと思っていた場所の一つ、ウユニ塩湖に行くことができたので、次はそろそろチリを目指そうと思う。
ではどんなルートで行くか?
色々調べたところ、日本語で「宝石の道」、英語だと「Laguna Route」と呼ばれるウユニからチリのサンペドロ・デ・アタカマに抜ける約450kmのルートがあるらしい。
↑ ※「二人四輪」さんの走行ルートより
https://www.ninin-yonrin.com/archives/category/southamerica/bolivia/laguna-route
ただこのルートはそのキラキラネームは名ばかりで、自走不能な砂漠地帯や最高標高4,900mを越えていくため、通常は四輪駆動の車で3日かけて抜けていくタフなルート。
一方、フラミンゴの群生する湖や他の惑星に降り立ったかのような絶景の連続で、世界中のチャリダー達が憧れ、また畏怖するルートでもあるらしい。
先人達の記録を見ると、走破には早い人で8日、ゆっくりだと2週間ほどかかっている。
そんなの知っちゃったら行くしかないよね~
という事で、休息は充分。準備は万端。
行くぜ!宝石の道!
(続く)
星野 耕平
でかい波、高い山、長い道が好き。
トレラン歴は約15年。UTMB、Tor Des Grants、Andorra Ultra Trail等完走。
自主イベントとしては自転車日本縦断、歩きお遍路結願等。
座右の銘は「No wave,No life.」
個人ブログ:100mile
http://kh100mile.blog.fc2.com/