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2019年7月9日

クワバラ

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色々な価値観を尊重するということ〜『ゴールの作法』の反響から考える(前編)

Run boys! Run girls! 店主桑原です。

先日(2019/7/3)に弊店スタッフ、松井が書いた『ゴールの作法』というブログが様々な反響を呼びました。本記事はそのフォロー記事です。かなり長い内容になりましたので、前後編に分けました。

前編は今回の経緯と、松井が伝えたかったこと、なぜミスリードが起こったのか?の考察です。後編では、対立が起こりやすい「競技志向」と「コミュニティ思考」の人たちが互いを知って尊重し合う提案や、twitterとfacebookの反応の違いとその考察、海外のゴールセレブレーション検証、ゴール占拠問題について書く予定です。

前編だけでもかなりのボリュームですが、単なるフォローではなく、議論を俯瞰することで見えてくることもあると思いますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

発端となった『ゴールの作法』

発端となったのは、上記のブログです。とある事情で、公開時の文章から一部を削除していますが、松井の表現の大筋については読み取れると思います。

とある事情というのは、上記ブログ内で登場するランナーの方が、事実誤認でマナー違反と受け取られてしまい、SNS上でその方を批判する表現が出てきてしまったからです。当方にもその方を批判する意図は一切ありませんでしたが、その方の行為が誤解されて批判につながっている状況を鑑み、その方の出てくる部分のみ削除しました(それ以外は公開時の文章のままです)。

改めて申し上げますが、マナー違反と受け取られた点に関しては事実誤認ですので、その方への批判などはおやめいただけますようお願いいたします。当方の表現が誤解を招き批判が及んでしまった方にはお詫びを申し上げます。
 

どうしてフォローが必要か?

これまで、Run boys! Run girls! (以下、RBRG)で一旦発信したブログに対してフォロー記事を書いた記憶はありません。そんな中今回フォロー記事を書いたのは以下のような理由からです。

  1. 『ゴールの作法』で筆者松井の言いたかったことと、受け取られる印象にギャップがあった
  2. そのミスリードはRBRGが持つ価値観や提案したいこととも乖離があった
  3. 齟齬はあったが、ブログを発端に発生した議論そのものは非常に有意義で、そこで得られた考察を示すことにも意味があると考えた

もともとブログ公開直後のまだ反響がない段階で松井からは、「賛否両論ある内容だと思うし、そう思わないという方も多いかも知れないが、ゴールをする際に他の人のゴールも尊重できる人が増えたら嬉しい」というブログの意図を伝えられていて、桑原としてもその本筋に同意しています。

ただ、記事が様々な方に受け取られる過程で、ミスリードを招く表現や構成に改めて気づくことができ(ご指摘を頂いた皆様ありがとうございます)、また議論が広がっていく過程で、桑原として新たな気付きもあったため、twitterでの反響が落ち着く頃にフォローの記事をあげようと、先週金曜日の段階で決めました。

松井が書いたブログに桑原がフォローをしていることに関して違和感がある方もいるかも知れませんが、そもそもRun boys! Run girls!のブログで発信されたのでRBRGに責任があること、松井がフォローのブログを書いてもいずれはRBRGとしての見解を示す必要があると考えたこと、議論から生まれた気付きや提案をRBRGからの発信とすることに意味があると考えたので、この様に桑原がフォロー記事を書いています。
 

松井の伝えたかったこと

『ゴールの作法』で松井がどういうことを伝えたかったか、ある程度反響があった段階で松井に再度確認しました。そこではこの様な返答が返ってきました。

私があのブログで伝えたかったのは、どんな人にも理想のゴールがあるはずだし、そこにチャレンジしてクリアしてゴールテープを切る際に同じレースを走った仲間を尊重し合えたらいいね。という思いと、走る最中のマナーやモラルについて考える人は多くなったけど、ゴールって自分の事に夢中になってしまうから、周りを見てみませんか?という問題提起でした。

ブログタイトルはわかりやすく伝わりやすいものにしようと思い『作法』っていう言葉を選んだのですが、これがマナーだ!というような話ではなくて『どんなゴールが理想ですか?ゴールってどう考えてますか?』という意味だったんですが、言葉の選び方だったり、文脈で不快感を覚えた方が多かったようで申し訳ないです。私も今回書くにあたって、色んな誤解が起きないように『私はそう思う』という個人的見解を述べたのですが『私はそうしたい』という表現だったらもっと違ったのかな?と思いました。

一生懸命練習を重ねてきた人には、レースに至るまでの色んな状況があって、1人で頑張ってきた人もいれば、仲間で励ましあってレース当日を迎えた人もいる。 だからこそ『理想のゴール』がそれぞれ存在すると思います。

個人で最後の1秒まで攻めて走りたいのも自由だし、仲間とゴールするのも自由で、そのどちらも正しいことだと思います。

でもレースにはその両者が存在してるのだから、ゴールの際に周りを見てほしいなという思いで書いたことなんです。

(本人から桑原に宛てられたメッセージをそのまま掲載しています)

ここで松井が言っていることには桑原も同意します。Run boys! Run girls! はカルチャー色やコミュニティ色の強いお店ではありますが、トレーニング目的のチームを運営したり、アスリートのサポートをするなど、トレイルランニングの競技的側面も魅力の一つとして大切に思っているし、異なる価値観の人たちがそれぞれの大切にしているものを理解出来たらいいなと思っています。

また、松井は「様々な立場があるので、極力誤解を受けない言葉や伝え方をしたつもりです」ということも言っていました。確かに、『ゴールの作法』で松井はかなり慎重に言葉を選んで話していました。

しかし、公開されたブログは必ずしも松井の意図した通りに伝わりませんでした。どんな反響があったのか?そして、ズレが生まれた原因は何だったのか?それを見てみましょう。
 

『ゴールの作法』公開後の反響

まずはこの記事がどれくらいの反響があったのか、SNSでの数値を元に説明しようと思います。

facebook

こんばんはマツイです。先月私が運営に関わってる、第7回スリーピークス八ヶ岳トレイルが終わりました。会場本部を統括している私は、笑顔あふれる素敵なゴールシーンにたくさん出会えました。納得いく結果が出る人もそうじゃない人もいだと思います…

Run boys! Run girls!さんの投稿 2019年7月3日水曜日

エンゲージメント:763(直近15投稿の平均:139)

エンゲージメントというのは、いいねなどのリアクション、コメント、シェアの総数で、記事に対する反響を表す数字です。平均的な投稿の5倍以上のエンゲージメントがあるので、かなり反響があったことがわかります。

リアクションは、いいね:569、超いいね:89、ひどいね:2 という内訳。これは上記の記事だけでなく、シェアされた記事についたリアクションの合計です。

シェアは11件ありますが、こちらで確認できる5件に関してはネガティブなシェアではありませんでした。

RBRGでの記事についたコメントも、記事の内容に賛同するものが多いです。一つ一つのコメントを確認されたい方は、是非facebookの該当記事を見てみてください。facebookではコメントに対して松井が返答していますが、ここで注目してほしいのは、松井が自分の文章に賛同が得られたからと言って必ずしも「ですよね」と答えていないことです。結論が固定的にならないように配慮して回答しているように見えます。

この様にfacebookに対して得られたリアクションは概ね好意的なものだったと感じます(目に見えないシェアの内容がわからないのと、別ルートから批判的なシェアをされた場合はここの数字には現れないので、あくまで参考値です)。
 

twitter

エンゲージメント:4,115(直近17投稿の平均:212)

twitterのエンゲージメントは、facebookのエンゲージメントと少し異なり、リンクのクリック数、詳細のクリック数、プロフィールのクリック数、いいね、リツイート、返信の総和なのですが、こちらもかなりの反響で、通常のつぶやきの20倍の反応でした(twitterの場合取るに足らないつぶやきも多いので、facebookより反応に幅が出るとは思います)。

反応は、facebookと違って賛否両論。また、普段のフォロワーさん以外からもかなりコメントや引用RTが飛んできました。一部の引用RTは以下にまとめたので、ご興味ある方は見てみてください。

ブログ記事「ゴールの作法」への様々な反応(togetter)

また、元のつぶやきにも返信の形でご意見を頂いています。こちらもご興味ある方は是非。後は、ブログ公開直後は引用RT以外にも、皆さんがそれぞれこの話題についてつぶやいたり、議論しているのを目にしました。やはり賛否両論、ちょっと否が多いかな?という印象でした(被害妄想じゃないですよ笑)。

頂いたリアクションや目にしたつぶやきの中から、ブログの趣旨に同意しかねるという反応を紹介してみます(これらの反応を批判する意図は一切ありませんので誤解なきよう)。本当はtweetを埋め込みたいんですが、その都度ブログリンクが出てきて読みづらくなるので、テキストの引用という形式でご容赦ください。

ちょっと違和感を感じるな。ロードのウルトラでもトレイルでも、ゴールでテープを切りたい人やポーズしたい人がいたら私は待ってあげるほうですが、自分のペースでゴールしたい人の気持ちも考えてあげたい。

こういう考えをあたかも正しいかのように書かれるとゴールスプリントで勝負を決めようと狙っている選手は全てマナー違反になるんですかね?RBRGさんはレースをどう考えてるのかな。

この文章は勝負に対する愚弄でしかない。

>後ろから追い抜いた人は『最後の最後まで諦めなかったから順位が上がった!タイムが縮められた』という喜びがあるだろうが、目の前のゴールテープを直前で他の選手に切られた人は少し悲しい思い出となるのではないか。

トレイルランニングへのスタンスは十人十色であるのは当然だと思う。スノーボードのように、競技でなくカルチャーとしてトレランを楽しむ。そういうスタイルを発信してると言うならクールと思う。でもレースに参加するだけでなく、運営にも携わりながら、レースの競技性を否定するの?

ゴールの仕方に色々言われるのもなんだかなぁと思う。 そこに齋藤さんの話を強調して書いたもんだから必死にゴールする奴はあさましいって見える表現になってしまってるんじゃないかと感じた。

一見、他人の考えも尊重するような雰囲気を纏いながら、結局は自分の主張を押し付けてるだけの内容と読めてしまう。

美談が問題の本質的な解決を遠ざけることは往々にしてある。悪意のない、無邪気な内容のブログだけど、発信者のトレラン界隈での存在感から考えると、議論をスタートラインの後ろから始めさせる内容に思える。

チャリに戻ろっかなぁ。 ランナーの中にはゴールの一歩手前で抜かれて「そりゃないよ」って人がいる事に一番驚いた。 100m走も10000m走もツールドフランスもラストスパートが見所 トレイルレースってレースじゃないんだ。

ゴールの作法。花道にはいったら追い抜きをして他のランナーに不愉快な思いをさせるなと言うなら、花道にはいったランナーがゴール間近なのにサポーター含めてゴール下を占拠してはいけないという理屈になるはずがならない。あのblogに賛成した人は追い抜きの件だけ考えているんだよね。

言いたいことは理解はできるけど、今度初めてレースに出てみようと思っている初心者の自分にとって「なんか色々と面倒だな」と思ってしまう。

でもゴールの作法って何様?一部のレースに詳しい人とか上級者たちが、自分たちにとって心地よい考えを絶対正義にして、ビギナーや無知な人を吊るし上げて、これからチャレンジしようとする人たちを排除するんだよな。

多様な価値観を広げたいにしては、待つことに偏ってるし、待つことを美談として上げたいなら他の例について否定的に書く必要はなかったかなと。

これまっっったく共感できないな レースなんだからできる限り追い込んで1つでも順位を上げようとして当たり前じゃないのか 自分の後ろの選手にわざと抜かれなかったなんてわかったら許せないと思う

「空気を読む」とか「配慮」は自ずから行うもので、相手に強要するのはおかしいと思ってたり、変な依存や察する文化の悪い一面などと想像をする癖があるので、 「マナー」や「作法」という便利な言葉を使って自分好みにコンセンサスを取ろうとしているではなかろうかとナナメな読み方してました。

今回の問題は、ゴールの作法と言うタイトルであること。 記事とは関係ない大会などで団体で占拠しゴールのところで写真を撮ったりしてるグループが存在してること。(他の人のコメントより) 個人的には著者が大会運営者というところ。

一人で走っている人にとっては、ゴールに大勢でいられたらじゃまだなと思いながらも、何も言わずに許容している人もいるんじゃないですか? そんな人に、更に、ゴールするのを待つのが作法として美しいのだとどうしたら言えるのかと不思議でなりません。

いずれもfacebookでは見られなかった反応です。twitterを再開して本当に良かったと思います(皮肉じゃないですよ)。また、SNSによる反応の違いについての考察は追って書こうと思いますのでここでは割愛します。

ここで、挙げられているのは、

  • 『ゴールの作法』ブログは競技性を否定している(しかも、筆者が大会運営者)
  • 配慮をしようといいつつ、自分のペースで駆け抜ける人は配慮されてない
  • 多様な価値観を支持しているように見せつつ、一方的な価値観を押し付けている
  • 影響力がある人がそれをいうことで、ゴール前で待つことが変なマナー化してしまう
  • 初心者だけど、トレイルランニング界隈の閉塞感や押し付けがましさを感じる

というようなこと。

元々松井は「ゴールをする際に他の人のゴールも尊重できる人が増えたら嬉しい」とか「個人で最期の1秒まで攻めて走りたいのも自由だし、仲間とゴールするのも自由で、そのどちらも正しいことだと思います。」と考えていたのですが、結果として「個人で最期の1秒まで攻めて走りたいのも自由だし」が伝わっていない、一方通行な結果となっています。

どうしてでしょうか?僕はミスリードにつながった2つのポイントがあると思います。
 

ミスリードの原因その1:ブログタイトル

ブログタイトルに関してはいくつか意見を頂いています。

『作法』っ文字が『日本人』の魂を ざわつかせたのだと思う。 ある方の言葉を借りて 『美学』としたら、 スーッと入ってくるのは自分だけですかね

では、「作法」ってどんな言葉なんでしょうか?

㋐物事を行う方法。きまったやり方。きまり。しきたり。「婚儀は旧来の作法にのっとる」
㋑起居・動作の正しい法式。「礼儀作法」
㋒詩歌・小説などのきまった作り方。さくほう。「小説作法」
 

(引用) goo辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/jn/89160/meaning/m0u/

きまったやり方。きまり。しきたり。とありますね。「ゴールの作法」とはつまり、「ゴールのきまり」ということになります。松井は

これがマナーだ!というような話ではなくて

と述べていて、彼女にとって「マナー」より「作法」が堅苦しくないという認識だったかも知れませんが、結果として「作法」という言葉によって、ゴールに対しての「きまり」を押し付けられていると感じた方が結構いたのだと思います。

ちなみに、作法の英訳を調べるとそもそも”manners”という言葉が出てくるので、やっぱりタイトルは違ったほうが良かったなと思います。
 

ミスリードの原因その2:文章構成

『ゴールの作法』は大雑把にかいつまむと以下の様な内容です。

  1. とあるレースのゴールにて
    どのゴールにも感動を覚える。でも、ゴールは余韻に浸らせであげたいという思いもあり、モヤっとする。齋藤さんから「ゴールゲートが見えたら前の選手は抜かない」という海外のレースの慣習を聞き、ゴール直前で後ろの選手が前の選手を抜く事に自分が違和感を感じていたことが明確になる。でも、出し切るのも素晴らしく、ゴールの仕方は難しいと感じる。
     
  2. KOUMI100にて
    180kmにも及ぶとても過酷なレースで、制限時間間近にゴールした二人のランナー。どちらの姿にもとても感動したが、後をゆくランナーが先行ランナーがゴールの瞬間を堪能できるように、自分のゴールを待った姿にとても感動した。見知らぬ相手であっても、共にそのレースを走ってきた相手を尊敬し喜びを分かち合う姿を見て、自分の考える理想のゴールだと思った。
     
  3. まとめ
    レースに対する思いは人それぞれだから、正しいゴールの仕方はない。でも、自分は同じレースに出ていた仲間のゴールを共に喜べる、そんなゴールをしたい。1秒を削るなら、ゴール前じゃなくてもいい。ゴールは不機嫌ではなく、笑顔がいい。自分にとっても、同じレースを走った仲間にとっても『幸せなゴール』の作法ってなんだろう?

僕はこの記事で松井が伝えたかったのは、KOUMIのエピソードを通じて、”一緒に走ってきた他人のゴールにも心を寄せられること”の素晴らしさだと思いました。これを本質的に理解すると、余韻に浸りながらゴールしていたランナーが、あとから来る最後まで出し切りたいランナーのゴールにも想いを寄せて道を開けることにもつながると思いますし、松井が僕に伝えたことや、facebookでみんなに回答しているのもそのようなことです。

ただ、最初のパートで「後から抜くことに違和感を感じたこと」や、「海外でゴール前で抜かない慣習があること」を紹介したことで、”心を寄せる事=譲ること、待つこと”と捉えた方もいると思います。出し切るランナーの行為にもなにか素晴らしいと感じる描写があればバランスも取れたかも知れません。

また、「1秒を削るなら、ゴール前じゃなくてもいい」。これはとーーっても強い言葉で、タイムを目指す方にとっては自分を否定されたような気になるのは致し方無いと思います。僕はこの言葉は

でも私は、同じレースに出ていた仲間のゴールを共に喜べる、そんなゴールの仕方をしたいと心から思った。

1秒を削るなら、ゴール前じゃなくてもいい。

「でも私は」、の「私は」からの続きなのではないかと思いました。松井自身の態度表明。とはいえ、普通にいったらブログ読者へのメッセージとして読めるので、その辺も物議を醸しだした原因かなと思います。

話をまとめます。

海外ではゴール前は抜かない→KOUMIでゴールを譲った男性の姿が自分にとっての理想のゴール→1秒を削るなら、ゴール前じゃなくてもいい→『幸せなゴール』の作法ってなんだろう?

『ゴールの作法』の印象的なところをつなぐとそう読めてしまいます。その結果松井の書きたかったことはそうじゃなかったはずですが、「ゴール前で待つこと=ゴールの作法=ゴールのきまり」と感じてしまった方が結構な数いたのではないかと思います。
 

美談ポルノにしてはいけない

ちょっと違う話も。

今回『ゴールの作法』では、感動的な話を用いて読む人を一つの価値観に誘導するという構造に結果的になってしまった(何度もいうけど松井の意図としては一つの価値観に誘導したいわけではなかった)のですが、これは感動ポルノではないけど美談ポルノとでも言える構造であり、そのことに懸念(以下のツイート)を示された方もいました。これは僕らのような影響力があるものが気をつけなければいけないことだと思います。

もちろん、文中に登場したKOUMIのランナーの方が他者のゴールにも心を寄せる姿勢はとても素晴らしく、僕は素直にとても素敵だなと思いました。だからこそです。
 

反響のまとめと見えたこと

今回の一連の流れと、そこで見えたことまとめます。

『ゴールの作法』で松井が言いたかったのは「様々なゴールの仕方があり、それぞれのゴールを尊重できるといいねということと、他のランナーも気持ちよくゴールできるために、ゴール前で少し他のランナーのことを考えれたらいいね」ということでした。

ただ、表現された文章は「ゴールを譲ろう、じっくりゴールをする人を尊重しよう」という風に、一部のゴールが尊重されるように受け取られる要素のあるものでした。

ブログそのものは、影響力のある人物が影響力のあるショップ(自分で言ってすみません)のブログで発信したことと、ゴールでの感動的なストーリーが相まって大きな反響がありました。facebookでは、好意的な反応が多く、twitterでは賛否様々な意見が集まりました。

ただ、美談を使って「ゴール前で待つことを”作法”とすること」も、競技志向の方の「一秒を削る努力を否定すること」も我々のしたかったことではなく、このフォローブログを書きました。前編ではどうして言いたかったことと表現に乖離が生まれてしまったかをまとめました。

反響の過程で様々なことが見えました。なので、このブログはただの釈明ではなく、松井がしたかった「様々なゴールの価値観を認め合おう」ということの再提案をすべく書いています。

まず、ミスリードとはいえ「ゴールを譲ろう、じっくりゴールをする人を尊重しよう」、的な提案が多くの人に好意的に受け入れられたのは、影響力のある人物・ショップの発信であったこと、美談が伴われたこと、に加えてそういった提案が響きやすい「コミュニティ思考(志向ではなく思考)」のランナーが少なくない事が考えられます。

この「コミュニティ思考」はレースに結果やタイムを求める「競技志向」と対立しやすく(完全な対立軸ではないし、もちろん共存もします)、お店を始めてからの6年間でもちらちらその対立を目にしました。

そういった背景があり、また発言者・ショップが「コミュニティ思考」よりだったため、「競技志向」の方から反発や懸念があったとも感じています。

それぞれのゴールを尊重することは、すなわちそれぞれの考え方や大切にしているもの、スタイルを尊重することです。今回『ゴールの作法』によって、一旦その対立を深めてしまった感はありますが、後編では、それぞれの価値観や対立が生まれやすい構造を理解することで、お互いの価値観を認めあえるきっかけを作れればいいなと思っています。

大勢の人は「色んな人がいるから、それぞれ尊重し合えばいい」っていう本質の部分を理解されていると思うのですが、細かい部分に関して考察をしていくことにも意味があると思いますので、ご興味がある方は後編もお付き合いください。
 

松井裕美さんとは

前編は松井の文章のダメ出しばっかりみたいな内容になってしまいましたが、僕は松井をすごく好きだしすごく尊敬しています。なので、最後にちゃんと彼女の素敵さも伝えたいと思います。

彼女がRBRGに加わったのは2018年の8月。オンラインストア担当のリモートスタッフ(彼女は山梨在住)ということで月の出社は数回なのですが、スタッフに加わって以降ずーっとお店のムードメーカーであり続けてくれています(RBRGはチャットで仕事のコミュニケーションをすることが多い)。とにかく仕事においてネガティブなことを一切言わないし(家庭ではネガティブだそうです笑)、他のスタッフのことも常に気にかけていて、必要なときに気の利く言葉をかけたり、仕事をうまくサポートしたりしていて、僕は彼女がRBRGの仲間になってくれて本当に良かったと思います。

写真中央が松井

トレイルランニング業界にも精力的に貢献していて、人気レース「スリーピークス八ヶ岳トレイル」の運営の中核を担っているのはご存じの方も多いと思いますが、その取り組みの中で環境への負荷を考えて定員を減らしたり、大会参加への条件にトレイル整備などの貢献活動を条件づけたり、地元の中高生にトレイルランニング参加のきっかけを作ったり(そこからウチのアスリート、ヤングがトレイルランニングに目覚めました)と、沢山の意欲的な取り組みをしていますし、日本トレイルランナーズ協会の理事もつとめていて、安全・マナーガイドの作成、配布に尽力したり、様々なところでトレイルランニングシーンに貢献しています。

そんな感じで、自分の関わるプロジェクトやシーンに対して貢献しようという気持ちが凄く強く、常に頑張りすぎちゃって逆に心配になってしまうタイプの人です。逆に自己表現は意外と苦手というか、自分のアピールはしたがらない。

あと、弱点としてはかなりのおっちょこちょいなので、たまにトンデモないポカをやったりします。今回のブログで言いたいことと文章が大きく食い違っちゃったのも、その一つかもしれません。でも、日本のトレイルランニングシーンを更に良くしたいという思いをとても強く持っている人であることは本当に間違いないです。

なので、僕としては今後も松井さんに彼女が感じたことや提案を遠慮なく表現してほしいと思っています。
 

後編の予告

後編に関しては、以下のようなことをテーマに書いていこうと思います。他にも思いついたら追加するかも知れません。

  • 「競技志向」と「コミュニティ思考」
  • twitterとfacebookの反応の違い
  • 海外のゴールセレブレーション検証
  • ウルトラだから?ショートだから?
  • ゴール占拠問題
  • 不機嫌なゴールの是非

前編は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

PROFILE

クワバラ | Kei Kuwabara

Run boys! Run girls! 店主。体重が増減しがち。その分ダイエット得意がち。2020年に何かの大会で10位以内に入るプロジェクト」通称「にな10」を立ち上げるもコロナ禍やなんやかんやで頓挫。UTMF、UTMBや、Pine to Palm(Oregon / 100mile)、OMM (UK)などを完走しています。

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