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2020年3月18日

ゆっきー

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自分の”山岳スキル”にあった海外レース選び

先月のブログ、「自分の”走力”にあった海外レース選び」からの続きです。おさらいをするとレースの難易度は”走力”と”山岳スキル”に分けることができ、前回は自分の”走力”にあったレースの選び方について紹介しました。今回は自分の”山岳スキル”にあったレース選びについて紹介したいと思います。

 

レースで求められる山岳スキルとは?

まず山岳スキルとは何か?私はこれまで数多くの海外レースを経験してきましたが、大きく3つのスキルが必要とされました(注1、2)。

1. 高度な登山技術(ハシゴ・クサリ場・ヤセ尾根・藪こぎ・キレット・雪渓・氷河・沢登りへの対応力)
2. 山での判断力(地図読み・天候に応じたリスクマネジメント)
3. 高所順応

(注1)転倒しても転落・滑落する可能性が低く、整備された登山道を走る基本的な走力・技術を持っていることが前提
(注2)登山という大きな括りで見た場合はこの限りではない

 

日本のレースだと、キレット・雪渓・氷河・沢登りおよび地図読みが必要とされるレースはほぼありませんが、私自身これらを海外レースですべて経験したことがあります。
日本と比べ海外においては1〜3のスキルが求められるレースが比較的多く、日本のレースと同じ感覚でレース選びをすると、想定以上に難しいレースだったということがよくあるため、慎重に見極めることが重要となってきます。

 

どんな難しいレースがあるのか?

ここで、私がとても難しかったなと感じたレースを2つ紹介したいと思います。

標高2,700mの断崖絶壁越え

ほぼ垂直な150mの壁を両手を使ってよじ登るという最も身の危険を感じたレース

標高2,000mから見た2,700mの稜線
点線はほぼ垂直の壁のルート
ここは垂直の壁の登り始め
ここから先が本格的なクライミング

 

レースなのにロゲイニング?

100kmのレースで、うち約20kmはマーキングがなく地図読みが必要な区間があり。参加者は20名ほどでコース上に他の選手に会うことがほぼなく、本当の意味で地図読みの力が試されたレース

 写真は、スタート地点でマーキングがない区間の説明の案内とボランティアも誰もいないチェックポイント。ちなみに草レースではなく、ITRAに登録されている公式なトレイルランニングレースです。

 

山岳スキルをどのように見極めるのか?

前述の1〜3の見極めには、地図読みのスキルが必要とされます。多くの方は、レース選びの基準としてプロフィール(標高・高低差・累積標高)をもとに判断されていると思いますが、プロフィールに加えて地図をみることで難易度を把握することができます。
先程の2,700mの例を使って説明をすると、以下の通りプロフィールだと高度順応が必要であることしか分かりませんが、地図をみるとピーク手前がかなりの直登であることが分かります。

 

 

ITRAのMountain Levelについて

前回お話したMountain Levelは山岳スキルに関係はないのか?と思われている方に、この指標についてお話したいと思います(詳細は末尾参照)。この指標は高所順応をベースに作成されたものであり、高度な登山技術(テクニカル)に関する要素が一切含まれていないため、参考情報として見ることをおすすめします。

※私は100km以上のレースでMoutain Level 5〜11の経験がありますが、ちなみに最も難しいと感じたレースはMoutain Level 11ではなく9でした。

 

地図から難易度を判別する方法

地図読みのスキルがない方でも以下に注目して地図をみると、ざっくりと難易度を判別することができますので、ぜひ今後のレース選びに活用してみてください。

・尾根=稜線>峠>トラバースの順で難易度(高い>低い)をみる
・上記に“急峻である・なし”の要素を加える

以上から、つまり急峻な尾根・稜線ほど難易度が高い

UTMBのコースマップをみると、急峻ではない峠・トラバースで高低差のあるコースであることが分かります。このようにコースの特徴を把握することで、レースに向けてどのような練習が必要か事前準備にも活かせるというメリットもあります。

 

峠と尾根の違いについて

まず、①峠の例をプロフィール・地図でみると、

次に、②尾根の例をプロフィール・地図でみると、

プロフィールだけをみると①の方が標高も高低差もあり難しく感じますが、地図をみると①は比較的緩やかな峠越えの登りで、②は急峻なヤセ尾根であり、②の方が難しいコースであることが分かります。

 

地図読みのスキルを身につけるためには?

地図読みの講習会に参加するのも選択肢の一つだと思いますが、コストをかけず効率よくスキルを身につける方法として、普段の山でのトレーニングを有効活用することです。具体的には、地図に書かれている情報と実際に走っているコース周辺の地形の情報を頭でマージさせることで、徐々に地図が読めるようになってきます。

私がレース前にやることの一つとして、コースマップを一通りみて過去に自分が登った・走った山と照らし合わせてコースのイメージを持ちレースに臨んでいます。
※先程の①だと、南アルプス甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根をイメージしてレースに臨みました。

 □   □

最後に、海外ともなると観光を主目的として海外レースを選びたいとう考えの方もいるかと思います。しかし、冒頭でお話した通り海外は日本と比べ難易度の高いレースが多く、事故や怪我に至らないためにも山岳スキルをレース選びの判断材料の一つとされることをおすすめしたいと思います。

 

参考:ITRAのMountain Levelについて

指標は、以下3つの条件をもとに作られ、これらの条件が揃うと指標が高くなります。

・平均標高が高い
・累積標高が大きい
・高低差が大きく・回数も多い

日本のレースに関してこの指標の数値が低い傾向にあるのは、比較的標高が低い場所でレースが開催されるためであり、また、イギリスなども標高が高い山がないためこの指標の数値が高くなることはない。

また、レース距離で見てみると、SkyrunningのVerticalなど距離が短いレースほど数値が高くなる傾向が見られます。

 

モンブランマラソンのVKのMountain Levelは12
私自身もこのルートを登った経験あるが特にテクニカルな箇所はない

PROFILE

ゆっきー | Yukihisa Nakamura

海外のトレイルレース延べ2000km
本格的に海外を走り始めて4年、年500kmのペースで世界の魅力的なトレイルを駆け巡っています。
山本来の魅力を肌で感じることが好きで、有名な大会よりかはニッチでテクニカルなコースを選びがちです。
Swisspeaks 360km(Walker's Haute route)、UTMR 170km(Tour Monte Rosa)など完走。
2020年も日本で知られていない世界各国の魅力的な山・トレイルに出逢うこと。

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