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2020年4月1日

内坂庸夫 内坂庸夫

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レーガン大統領とジェン・シェルトン

カバーヨ・ブランコからLa Brujita Bonita(かわいい魔女)と名づけられたジェン・シェルトン。スポーツブラと短パン(と言うのかな? タイツを自分でカットした)いっちょ、ハンドボトルいっちょで110km。撮影/藤巻翔

その前に。
すでにご存じだろうけど、3月28日に日本のトレイルランナーたちが同時多発的に動画をアップし始めた。 #オレのワタシの大好き家トレ  #myfavoritehomeworkout  #mfhw
ようは、大会が中止になったり、イベントを自粛しなきゃならないいま、外がダメなら家の中でできることをしようよ、の家トレアイディア動画だ。マジ指導、ウケ狙い、がんばりすぎなど、本人のキャラ丸出しだけど、仲間を勇気づけようとの思いは十分に伝わる。

「めそめそしてんじゃねえよ、オレたちは元気だぞ、お前もがんばれ!」乱暴に言えばこれだ。彼らは、彼女らはそんな応援動画をFacebook、インスタグラム、ツイッターに続々とあげている、なんと素敵なヤツラだろう。

ひとりふたりの思いつきが、人の心に元気という名の火をつけ、その火は次々とさらなる多くの仲間に伝わり、いま、日本中のトレイルランナーの心にめらめらと燃えさかってる。オレたちには素晴らしい仲間がいる、うれしい。「Grannote グランノート」のFacebookに説明がある。

さあ本題。
元映画俳優で州知事になったのはアーノルド・シュワルツェネッガー(7年あまりをつとめ、退任後は俳優に戻っている)が最初じゃない、ロナルド・レーガンが先だ、それも同じカリフォルニア州知事。レーガンの映画を観たいとは思わなかったけど、彼がヘルメット義務化の州法案を知事権限で取り消したとき「お、わかってるなあ、こいつ」と頭の中に名前を刻み、二重丸をつけた。まさか大統領になるとは。

レーガンの発言を要約すると「バイクに乗るヤツは、それがどれだけ危険なことか知っている。本人の安全について州政府がどうこう言うことじゃない、自身で決めればいい(*1)」。自分の身を守る智恵と技術を持つ者は(だけが)バイクに乗ってよし。爽快痛快を手に入れたいのなら、それと引き換えにケガや生命を失う覚悟をしとけ、ってこと。

そもそもメットのあるなしに関係なくバイクは危ないし(だからおもしろい)、そもそもヘルメットは頭しか守ってくれない。イヤなら、恐いなら、バイクに乗らなきゃいい。

ヘルメットなしで、ウェストベルトなしで、モトクロスバイクには乗らなかった、恐いからだ。でも、『イージーライダー』(*2)のフリーウェイや田舎道のノーヘルライディングに憧れた、金髪を風になびかせるピーター・フォンダ(役名はキャプテン・アメリカだぜ)に憧れた。誰もが同じ思いだったのさ、ノーヘルでハーレーをぶっ飛ばそう、なんて成田発のツアーがあったくらいだから。

映画で流れるザ・バンドの名曲「ウェイト」は版権の問題からかサウンドトラックには収録されていない、代わりにあるのはスミスのそれ、まったく別モノ。

そんなわけで、シリーズ最高傑作91年の『ターミネーター2』では、ロサンジェルスでクソガキのジョン・コナーとT-800シュワちゃんは共にノーヘルで走りまくり、暴れまくる。〈ガンズ〉の『You Could Be Mine』がぴったりはまってた。

やがて仲間のバイクの爆音、自身のバイクの爆音に嫌気がさして、風と波を動力にする音のしない遊びに夢中になって、そしてオーストラリアでぶっ倒れた。海の上で、船の甲板に。「ターザン」水泳特集、サーファーズパラダイス(ま、ハワイでいうワイキキってところ)で見るも屈強なライフセーバーに沖合で泳いでもらっていたときのこと。船に乗り込む前から熱があるし、ボーッとして、かったるいなあ、と思っていた。外洋に出てライフセーバーにどぶんと飛び込んでもらって、写真を撮っていたら、あれ、見た目より波があるぞ、おお揺れる、揺れる。ばったり。

気がついたら街の病院、2時間寝てたそうな。なんとかの注射をされ、抗生剤をもらって日帰り退院、明日、もう一度検査するから来なさいと。なんなんだ? 医学用語だししかもオージー英語、バイキンとしかわからない。食べ物か? 水か? だとしたら先に嘔吐や下痢があるだろう、消化器系ではない。咳もくしゃみもない、喉、鼻に異常はないってことは気管支系、風邪系、インフル系でもない。

思い出した。出発の3日前の日曜日、葉山は絶好の南風が吹いて、さんざんウインドサーフィンして遊んだ。いつものように森戸神社下の岩場から裸足でハーネス(体重を使ってセイルを引き込む用具)とパンツいっちょ、ちょうど引き潮のタイミング、磯をたくさん歩かないと海に入れない。ボードとセイルを担いで、しかも風にあおられて、水際の大きなゴロ石に足をぶつけて、ちいさな切り傷をいくつか作った。まあ、いつものことだし、気にもしない。森戸のウインドサーファーはみんなそうだ。

翌朝、左すねの小さな切り傷だけがちょっと化膿してる。おっといけない。バンドエイド貼っておいたら、いつの間にか治っていた。

それか? 外傷はそれしか思い当たらない。翌朝、病院に行ってその話をしたら&その傷跡を見せたら、オージーの医者はにっこり笑って、この程度で済んでよかったな、と。海での外傷はときに命取りになるそうな、特に海岸ぷちの海水はバイキンだらけだ、と。

だから、山でも「アルコール殺菌・消毒綿」と「殺菌・消毒イソジン軟膏」は絶対に携帯する。転んで膝や手を擦りむいたり、切り傷を作ったら、ソクその場で立ち止まる。流水(*3)で汚れを落として、消毒綿で傷口を拭いて消毒(*4)、イソジンを塗りつけて、バンドエイドで覆う。めんどくさいけどそうする、汗でバンドエイドがとれることがわかっていてもそうする。

QQパック中にはこの3種のほか、マメの水ぶくれ抜きの「マチ針」、そのつぶしたマメをおさえる「紙テープ」、「パンシロン」、京都護王神社の「足腰お守り」が入っている。

日本の医者に聞いた、山にもバイキンはどっさり存在する。特に破傷風菌は世界中の土の中にいるし、あなたはそのワクチン予防接種を受けていない世代かもしれない。受けていたとしてもワクチンの効力が失われているかもしれない。

レーガンの言葉はそっくりトレイルラニングに置き換えることができる。
加えて「ケガは覚悟のうえさ」って自分ひとりだけでは済まされない、いまこのとき、あなたの行動は家族や仲間、世の中すべての人の安全に影響を与えている。

「BTR」でカバーヨ・ブランコが求める「血の誓約」。
「けがをしたり、道に迷ったり、死ぬようなことがあったら」
「それは全部自分のせいだ」

*1 残念ながら現在カリフォルニア州はヘルメット必着だ。

*2 え、これで終わるの?! 『明日に向かって撃て』とともにアメリカン・ニューシネマの代表作。世界中でハーレー・デイビッドソンの売り上げに貢献したのは間違いない。下積みの長かったジャック・ニコルソンがついに表舞台に認められた映画でもある。エンドロールに流れるロジャー・マッギンの「Ballad of Easy Rider」はボブ・ディランがナプキンに書き留めた詩から作られている。

*3 だからフラスクのひとつには真水を入れておく。

*4 かなりしみて痛いよ。「BTR」のジェン・シェルトンは信越五岳を走ったことがある(総合7位、もちろん2位に2時間の差をつけて女子ぶっちぎり優勝)、前日に取材撮影。斑尾・毛無山の上りですっ転んで膝の横を擦りむいた。アルコール消毒綿で拭いてやったら「ギャー!」。本気で怒りやがんの。

PROFILE

内坂庸夫

内坂庸夫 | Tsuneo Uchisaka

「ヴァン ヂャケット」宣伝部に強引に入社し、コピーライティングの天啓を授かる。「スキーライフ」「メイドインUSA」「ポパイ」「オリーブ」そして「ターザン」と、常にその時代の先っぽで「若者文化」を作り出し、次はなんだろうと、鼻をくんくん利かせている編集者。
 2004年に石川弘樹に誘われ生涯初のトレイルラニングを体験(ひどいものだった)、翌年から「ターザン」にトレイルラニングを定例連載させる。09年に鏑木毅の取材とサポートでUTMBを初体験、ミイラ取りがミイラになって12年吹雪のCCCに出場(案の定ひどい目に遭う)そして完走。(死にそうになったにもかかわらず)ウルトラってなんておもしろいんだろうと、13年、UTMBの表彰台に立ちたい、自身の夢をかなえようと読者代表「チームターザン」を結成する。
 「ターザン」創刊以来、数多くの運動選手、コーチ、医者、科学者から最新最良な運動科学を学び、自らの体験をあわせ、超長距離走のトレーニングとそのマネージメント、代謝機能改善、エネルギー・水分補給、高所山岳気象装備、サポート心理学などを研究分析する。ときどき、初心者のために「100マイルなんてカンタンだ(ちょっとウソ)」講習会を開催してる。

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