アカウント カート オンラインストア

BLOG

2020年9月2日

内坂庸夫

113

犬のうんちと100個の卵

あなたのカラダは食べたもの(だけ)でできている。骨も筋肉も、あれこれ考える脳細胞も、足元に犬のうんちを見つけ「おっといけね!」と素早く避ける情報処理能力や神経伝達のスピードも、すべて、なにもかも、あなたがいままで食べたもの(だけ)から作られている。

だからさ、ジャンクなものばかり食べているヤツはジャンクな頭とジャンクなカラダだし、ジャンクな運動能力しか発揮できない、うんちを踏んづけちゃう。栄養バランスのとれたいい食事をしているヤツは、それだけですでにカラダのデキが違う、パフォーマンスが違う。

食べるだけで差がつくんだよ、簡単じゃないか、恐ろしいじゃないか。陸上部や野球部の合宿所では、強豪校であるほど食事に気をつかっているし、プロ選手やチームの遠征に栄養管理の専門家が帯同するのは当たり前。彼らの食事はパフォーマンスをぞんぶんに発揮するため、勝つためなのだから。

その先の大事な話。トレーニングとは筋線維だの心肺機能だのカラダに強い負荷をかけ、トレーニング以前より大きく強く修復させること、すなわち完全修復ができてはじめて身体能力が向上する。

言い換えればトレーニングはリカバリーできてなんぼのもん、だから運動直後の飲食こそ世界でいちばん大事なものじゃないか。カラダは良質な睡眠(成長ホルモンの分泌と修復時間の確保、脳疲労の回復)と正しい食事(エネルギー補給と栄養補給)でリカバリーされる。だからトレーニングしたらいいもん食べてぐっすり眠れ、なのさ。それができないなら無駄に疲れただけ、カラダにいいことはひとつもない。リカバリーできないならトレーニングやらんでよし。

ちょっとそれるけど。トレーニングとレースは、手段と目的の違いがあるけど、カラダにとって運動は運動。たいてい高強度で継続時間が長い運動がレースだろう。ならばレースこそ最良のトレーニング、身体能力を高める絶好のチャンスじゃないか。フィニッシュ直後、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎは、せっかくのお宝をどぶに捨てるようなもん。しかもアルコールには強力な利尿作用があるから、ただでさえ脱水気味なレース直後のカラダには世界最悪の飲み物になる。

でさ。この春に発売されたポラールの「Grit X」は消費されたエネルギーの比率まで教えてくれる。練習だろうがレースだろうが、その運動で使われた糖質、脂肪、なんと!たんぱく質、それぞれの消費比率を教えてくれる。想像通り、山の上り下りでは下肢の筋繊維の損傷が激しいから、同時間、同距離を走ったときの「たんぱく質消費」はロードよりトレランの方が大きい。

たとえばUTMFやUTMBで大活躍のあの人のある日のデータ。ぶっ通しで7時間、山を走ったとき消費カロリーは4684kcal。そのうちわけは糖質が37%、たんぱく質が14%。脂肪:49%だ。たんぱく質が14%ということは、総消費4700Kcalのうち、705Kcalがたんぱく質でまかわなれたってこと。たんぱく質は1gで4Kcalなので、7時間で体内から176g(!)のたんぱく質を失ってしまったってこと。

山を下りたらコンビニで「ザバス・ミルクプロテイン」を、水分補給の意味もあって、必ず飲むようにしている。これ1本で15gのたんぱく質を摂取できてすげーな、と思っていたけど、あの人は10本飲んでも間に合わない。卵なら30個、納豆なら25パックぶんのたんぱく質だからね。

たった7時間でこんなふう。この調子でUTMFやUTMBで24時間走り通したとしようか、彼は単純計算で604gのたんぱく質を失うことになる、卵100個だ。100マイル終盤で筋肉が悲鳴を上げるのも無理はない、フィニッシュ直後にどんだけたんぱく質を補給しようが、熟睡しようが、快復に1ヶ月かかるのも無理はない。

日本人アスリートは1日あたり体重1Kgにつき1.2g~2.0g(種目によって異なる)のたんぱく質を摂るべし、と各専門団体が推奨している。体重60Kgの選手なら1日に72g~120gのたんぱく質が必要ってことさ。

あ。あなたは犬のうんち、避けられるよね? 
 

*ポラール「Grit X」のデータはウチサカ自身。高尾に続く里山20kmを4時間30分で走ったときのもので、強度(ペース)は最大心拍数の55%(つまりゼーハーせず)。総消費は1945Kcal。そのうちたんぱく質は5%、つまり97.25Kcal、つまり24.3g。のんびり走っても卵4個ぶん、ザバス1本じゃとても足りない。山はたんぱく質をめちゃ消費する。

PROFILE

内坂庸夫 | Tsuneo Uchisaka

「ヴァン ヂャケット」宣伝部に強引に入社し、コピーライティングの天啓を授かる。「スキーライフ」「メイドインUSA」「ポパイ」「オリーブ」そして「ターザン」と、常にその時代の先っぽで「若者文化」を作り出し、次はなんだろうと、鼻をくんくん利かせている編集者。
 2004年に石川弘樹に誘われ生涯初のトレイルラニングを体験(ひどいものだった)、翌年から「ターザン」にトレイルラニングを定例連載させる。09年に鏑木毅の取材とサポートでUTMBを初体験、ミイラ取りがミイラになって12年吹雪のCCCに出場(案の定ひどい目に遭う)そして完走。(死にそうになったにもかかわらず)ウルトラってなんておもしろいんだろうと、13年、UTMBの表彰台に立ちたい、自身の夢をかなえようと読者代表「チームターザン」を結成する。
 「ターザン」創刊以来、数多くの運動選手、コーチ、医者、科学者から最新最良な運動科学を学び、自らの体験をあわせ、超長距離走のトレーニングとそのマネージメント、代謝機能改善、エネルギー・水分補給、高所山岳気象装備、サポート心理学などを研究分析する。ときどき、初心者のために「100マイルなんてカンタンだ(ちょっとウソ)」講習会を開催してる。

PICK UP

RELATED POST

商品を探す
閉じる