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2021年7月16日

ケロズ ケロズ

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“裏山”という言葉に込められた走る喜びと生きること~カナダといえばケリーさん~

カナダのトレイルランナーと言えば、Gary RobbinsやAdam Campbellが有名ですが、私の中でカナダのランナーといえばやっぱりこの人、佐々木ケリーさん。バンクーバーの父親的存在でもあるケリーさんにはラン仲間として、さらにはご近所さんなもんでピロシキもらったりと、お世話になりっぱなしなんですが、そんな市民ランナー、佐々木ケリーさんのストーリーを今回は紹介します!

ケリーさんが所属しているランクラブ恒例行事、ビールを飲んで走る「Beerマイル」笑。

バンクーバーの父的存在ケリーさん

ケリーさんとの出会いは遡ること6年前。バンクーバーのローカルランニングクラブ「Fraser Street Run Club」のグループランで出会った。理学療法士で現在同じくカナダに住むランボーブロガーのユウタとも共通の知人で、私もユウタも何かあると「ケリーさ~ん」と頼りっぱなし。

本名は佐々木靖さんで現在59歳、周りの人たちからはケリーという愛称で親しまれている。おおらかで気さくな人柄のケリーさんは島根県出身で、カナダに来る前は、青年海外協力隊でガーナで理科の教師として過ごした。1989年に初めてカナダ来て以来、32年間バンクーバーで暮らしている。現在はカナダの市民権を取得して、ガーナで出会った日本人の奥様と一緒に暮らす。機械メーカーに勤め、北米の現地法人の経営のお手伝いを行っている。

ケリーさんとケロズ。近所のブリュワリーで一杯。

突然、癌の宣告を受ける

そんなケリーさんに転機が訪れたのは7年前の2014年4月。長年人間ドックに行っておらず、知人に勧められて受けたところ、突然医師から「悪性リンパ腫」という癌の宣告を受けた。思いもよらぬ宣告に、病院から帰宅してすぐに余命を調べると、“5年”という可能性があることがわかった。いざという時のことを考えて、今やっておきたいことを考えてみたものの、何一つ思い浮かばない。それからも特にやりたいことは思い浮かばず、あれよあれよという間に抗がん剤治療が始まった。

始まってみると、看護の人達がめちゃめちゃ明るく、一緒に抗がん剤投与を受けている人達も何故か明るいわで、毎回悲しんでいる暇はなかった。今でも定期検診はあるものの、今日まで転移することなく、元気に過ごせているそうだ。

川の中を駆け抜けるケリーさん。

ふと、「走ろう」と思った

治療が終わった2015年夏。何故かふと「走ってみるかな」と思った。特別な理由や動機はなかったという。

走ろう、と思ってすぐに、同年秋に開催されるトレイルレースとハーフマラソンにエントリー。それまではマウンテンバイク歴15年のバイカーで、ランニングとは無縁の人生。そんなケリーさんはレース当日まで練習を重ね、2つのレースを走り切った。もっと長い距離もいける自信が出てきて、翌年フルマラソンに挑戦、ウルトラやトレイルレースにも参加するようになった。

ケリーさんが参加しているFraser Street Run Clubの仲間達。

ケリーさんのレース歴(ケリーさんのタフさ年表)

2014
4月 悪性リンパ腫の診断を受ける
5月 抗がん剤治療開始

2015
9月 自身初となるトレランレース10kmを完走(5 peaks, バンクーバー/カナダ)
11月  初ハーフマラソン完走(Fall Classic, バンクーバー/カナダ)

2016
1月  Fraser Street Run Clubに参加 (ケリーさん、ユウタ、ケロズ出会う) 
2月    2度目のハーフ完走(First Half, バンクーバー/カナダ)
5月    初マラソンを3時間46分で完走 (BMO Vancouver マラソン, バンクーバー/カナダ)
9月 初トレイルウルトラ50kmを10時間52分で完走(Whistler Alpine Meadows, ウィスラー/カナダ)

2017
4月 初100kmトレイルを16時間16分で完走 (ZION Ultras, ユタ州/アメリカ)
8月 初100マイルトレイルを31時間14分で完走 (Cascade Crest, ワシントン州/アメリカ)

バンクーバーから車で1時間走ると、この風景。

「裏山」と言う言葉に表れる自然との距離

ケリーさんは練習地であり、遊び場でもあるノースバンクーバーの山々を「裏山」と呼ぶ。いつも聞いていて響きがいいなぁと思う。バンクーバーは1500m級の山々がすぐ行ける距離にあるからまさに「裏山」ではあるものの、ケリーさんの「裏山」と言う言葉には少年のような遊び心が詰まっていて、そこにある楽しさや喜びが伝わってくる。

こちらはバンクーバーから車で1時間半ほどで行ける裏山、Panorama Ridgeにて。

その“裏山”で先日100kmのトレイルレース(コロナでオフィシャルレースではないそう)も走り切った。数人の仲間にサポートしてもらいながら、27時間かけてゴールした。残雪あり、絶壁ありで「いや、あれね、本当正直危ないよ」と笑いながら語るケリーさんだけど、27時間山の中で心身ともに耐えうる力を持つケリーさんはただ者ではない。

誰に会っても嬉しくなるトレイル

そんなケリーさんはこの裏山の持つポジティブなアウトドア・スポーツ文化に魅了されているという。

「トレイルで人に会うと嬉しくなる。 バイカー、ランナー、ハイカー、爺さん婆さんが完全に一つでポジティブなんだ」と語るケリーさん。

私もケリーさんの言葉に同感だ。異なるスポーツを楽しむ人たちがみんなでトレイルをシェアする。道も譲り合うし、笑顔で声も掛け合う。こういう雰囲気作りはマウンテンバイカーたちのトレイル整備にも現れている。つい最近またMTBを再開したケリーさんは(なぬっ!めっちゃ体力あるな…)、North Shoreマウンテンバイク・アソシエーションという団体に所属していて、みんな普通の平日にシャベルを持ってトレイルの整備にいくそう。そういう自分たちの遊び場、“裏山”を整備しながら作っていく、そしてそれもひっくるめて楽しんでしまえるカルチャーが“裏山”の魅力なのだ。

ある日の裏山での風景。マウンテンバイカーが犬を連れてトレイルを駆け抜ける。

今は仲間とビールのために

最後にケリーさんはトレランを始めてから、心の動きがあったことも語ってくれた。走る前は人生他人は他人、あまり他の人たちに興味がなかった。しかし、トレイルランニングのコミュニティに入って以来、困っている人に手を差し伸べ、声を掛け合うことが当たり前の環境にいることで、他の人たちの抱える辛さや苦悩を想像する時間が増えたという。いつも助け合えるラン仲間がいること、そしてブリュワリー天国バンクーバーのラン後のビールを楽しみに今は走り続けているそうだ。(私もケリーさんもブリュワリー界隈に住んでいるのだ。ラッキー!)

「健康のために走るとか、そういうのはない。病気だってなる人はなるからね。今思い出しても何で走り始めたのかわからないよ」

ラン後はクラフトビールとピザを買って近くの公園で仲間と乾杯。

ランニングはある日突然ケリーさんの人生に立ち現れたものだけれど、「理由がわからない」ことこそに、本質的な走る喜びが表れているように見える。裏山に再び喜びを見出したケリーさんはなんだか嬉しそうだ。

ケリーさんのツイッターアカウント:https://twitter.com/hachi4me?s=20

PROFILE

ケロズ

ケロズ | Shizuka Yoshimura

ランボー地球支部として世界を探索、いろんな人の心に窓を作ることをテーマに記事を書いています。過去4年間はカナダ2年、ニュージーランド1年、インド・ネパール半年、その後少し日本を経由して、現在はカナダの永住権を取得、バンクーバーで生活しています。今後さらに北上、極寒の地でアートとアウトドアの境目をユニークに生き抜くために少しずつ準備中。走ることが好きで、ロード、トレイル、夢の中、どこでも走ります。昼寝と動物が好きです。2014年裸で走るレース「Bare Buns Run」バンクーバー大会女子優勝。また現在幻冬舎が運営するウェブサイト、幻冬舎+(プラス)にて、「北極かえるのコモンロー日誌」も連載中。

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