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2021年10月19日

きよ

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ランニングと本の話 #1 目じるしについて

こんにちは

走りつつ、本を作っております、キヨと申します。
クワバラさん(注1)からここでコラムをお届けする機会をいただいて嬉しく思っております。
どうぞよろしくお願いします!

RBRGブログには、お役立ちが情報たくさんあります。ランニングやトレーニング、30分クッキングやサウナ、カレーの話まであって、いつも楽しく読んでいました。ここでさらに何をお届けするのがいいのやらと早くもロスト気味でしたが、スポーツの秋、読書の秋ということで、ランニングと本にまつわる話にしようと思います。

ランニングと読書は、似ている気がしています。走るスピードや本のページを繰る速さは人それぞれ、道中気になることや感動するポイントもそれぞれです。一歩一歩進み、ひとことずつ読んでいくと、いつのまにか新しい世界に入り込んでいくことができるのがいいなと思っています。

このブログを綴りながら、どんな場所に巡りつくことができるのかまだわかりません。ここを見ている経験豊富なたくさんのランナーの足あとや、蓄積されてきた先輩たちのお役立ち情報を道しるべに進んでみたいと思います。どうぞよろしくお願いします。(最後の方に刊行情報もありますので、ぜひご覧ください!)

迷宮と目じるし

さて、今回の「ランニングと本の話」は、迷宮と目じるしについてです。

以前ランニングとメディテーションについての記事を翻訳しました。トレイル・ランナーのリッキー・ゲイツと、ランニング・チーム『Black Roses NYC』のトップランナー、ノックス・ロビンソン、『VOGUE』や『VICE』のライターでありランナーでもあるマヤ・シンガーが「ランニングとメディテーション」について会話していました。

走っているとアップダウンが誰にでもあります。つらくなると、ままならず、すべてがうまくいかなくなるように感じたりもします。そんな時、トップランナーはどう思っているのか?マラソン・ランナー(*注2)であるノックス・ロビンソンを見て、他の人は「何か特別な能力あるからではないか、自分なんかとは違うエリートだから走れるのだろう」と思ってしまいます。そんなとき、ノックスは心の話をするそうです。

「自分にはどういうモチベーションがあり、どういう肉体的、精神的な限界があるかということを含め、自分にどう向き合うかという違いが結果にも出てくるといいますか。(中略)何はともあれ、ゴールに辿り着くには、最終的にはそのレースに際して自分が立てた構想をもとに、(レース中に、まだまだ行ける、と思ったり、辛すぎてもうやめたい、と何度も思ってしまうような、色々な感情がすべて含まれた)精神的な迷宮を紐解きながら走るしかありません。そうやって自分と向き合っていくことこそが、ゴールにたどり着く方法です。たどり着けば、の話ですけどね。」(”Running as Meditation”より引用、以下同じ。)

トップランナーでも、何かしらの「迷宮」で自分と向き合っていると思うと、だいぶ身近に感じます。そういうことならなんとかなるかもしれない、自分もやってみようと、少し気持ちが楽になりました。

マヤ・シンガーは、「迷宮」に向き合うための自分なりの方法としてランドマークの話をし、ランニングから普段の生活にも応用できるスキルとして話題を広げます。

「私は、4~5マイル走るごとに目印というか、区切りをつけるような考えかたを、ランニング以外の生活の時間でも結構やっています。たとえばチャイナタウンにある自分のアパートを出て最初にぶつかる目印は、ウィリアムズバーグ橋で、それを越えたら、ブルックリンに入って米国海軍の造船所につきます。その横をさらに進むと、次の目印のヴィネガー・ヒルまで行きます。こんな風に、ランニングするときにやっている「目印をつける」ということをランニング以外の生活の色々なことにも当てはめているってことです。(中略)だって目印を作れば、ここまではできて、あとは残りこれだけっていうように、ものごとの経過が図れるようになるから。」

リッキー・ゲイツも、優しい口調で続きます。

「自然の中でも目印にできる木がたくさんありますよ。自分も目印にしているものがあります。面白いですね。というのも、出身地のコロラドに戻ると、20年以上走っているトレイルをいくつか走るんです。同じ場所にいまも変わらずある木や橋に通りかかると、20年前はここまで走れたことに感動したなぁ、なんて思い出すんです。今だとこの距離まではウォームアップ程度で走ってきてしまいますが、かつてはここで引き返していたなぁ、とか。人生において何かをずっと続けることは、忍耐力や人間としての成長につながると思います。(中略)ランニングであろうと、人間関係であろうと、編み物であろうと、人生で追求したいことがあれば自分なりに目印を見つけて、その目印を心に留めておくことは非常に大切だと思います。」

去年、今年といつもと違った走りかたになりました。たくさんのレースがキャンセルになりました。分かってはいるものの、寂しい気持ちもありました。

とは言うものの、走ることについての色合いが前より鮮やかになった気もしています。

久々のレースでは、いつもより走ることができたり、できなかったり。「特別な日」の感触がいつもより強く残るようになりました。レースがなくても、尊敬すべきチャレンジャーたちが、GPS端末をかたわらに東海自然歩道FKTやロング・トレイルを走りはじめました。あるいは、来年のレースに向けて粛々と準備をしているランナーや少しブレイクしている人、新たにトレーニングを始めた友達もいます。

迷宮の中で、みんな自分なりの目じるしをつけているのだと思います。ふと周りを見渡すと、みんながつけたたくさんの目じるしに気がつきそうです。良い目じるしを誰かに教えたり、教わったり。

思ったよりも長いあいだ迷宮に立たざるを得ない時代ですが、何か新しい、期待できる兆しもあると感じています。

(本とランニングの話 #2につづく)

ついにお知らせ:12月発売新刊情報

『ほんとうのランニング』マイク・スピーノPh.D.著。マインドフル・ランニングの名作、ついに初邦訳です。あの「BORN TO RUN」を世に出した近藤隆文氏が翻訳を手がけます。
お問い合わせや発売情報も更新していきます。
note : https://note.com/mokusei222/

ではまた!

きよ

注1:クワバラさんは約25年にわたるアーセナル・ファン、通称「グーナー」です。自分はそれより短いので、クワバラさんが兄貴分です。
注2:スコット・ジュレック著『NORTH 北へ』(NHK出版)で、ジュレックがぼろぼろの状態で走っているとノックス・ロビンソンが待ってくれていてペーシングしてくれるシーンがあった気がします。ロードランナーというイメージが強いノックス・ロビンソンですが、トレイルにも割と現れるようです。

PROFILE

きよ | Kiyo Fujishiro

藤代 きよ
木星社(mokusei publishers)で、
スポーツと旅と自然についての本を作っています。
Taraweraや信越五岳トレイルランニングレースを走りました。
ポルトガル人の道にいきました。
ほか、Cilanや彩の国100マイル、TDSなど。
Like the Wind日本版もやっています。
www.likethewindmagazine.jp
instagram@likethewind.jp
instagram@mokusei222
木星社のPodcast "Thursday - Vocalizing Emotions"

WEB: https://www.mokusei.pub

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