ひとりで走ろう、ひどい目に遭おう。
去年12月のゆっきーさんの「失敗に学ぶ」と進む方向は同じです、レースに興味のある人はどうぞ。
まずは大昔。
二本足で立ち上がった先人たちは、毎日が生きるの死ぬの、喰うの喰われるの(共食いもあったよ)だった。背中に槍を突き立てられ、怒り狂ったマンモスに踏みつぶされず、九死に一生を得たおサルは、前ではなく、横に飛ぶことを仲間に伝えた。
あるおサルは仲間にこんな話をしたかもしれない。
「みんなあ、聞いてくれよ! ○X岩んとこでライオンが飛びかかってきやんの。たまたま落ちていた石でヤツの額を殴りつけたら、びびって逃げやがった、あー命拾いしたぜ」
仲間たちは○X岩に行くときは石を持っていくことを心がけた。なかには○X岩から帰らぬおサルがいたかもしれない。その息子や孫たちは丸い石をとがらせ、ハンドルをつけたかもしれない、これが手斧の始まりかもしれない。
その手斧は、ひい孫が□△山に行ったとき、虎から身を守ってくれたかもしれない。「お、これは虎にも使える!」
経験を共有すること、つまり知識を伝え広めることは、仲間を敵から守り、飢えから救い、寒冷灼熱をまぬがれ、生き延びることにつながった。群れること(多くの知識を教え教わること)、言葉(知識伝達の道具)を持つ種族が生き残った。われわれだ。
さて、現代でも変わらない。人は(あなたも)ひどい目に遭わないと、困難や苦労、危険がわからない。
あなたがレースを走るなら、いちばん効果的なトレーニングはひとりで、同じくらいの距離を、時間を、走ることだ。仲間とではなく、たったひとりで、だ。なぜなら、仲間はあなたを助けるし、あなたも仲間に頼るから。レースのときはひとりでしょう、たったひとりで対処しなきゃいけない。
あなたが山岳高地で、24時間以上カラダを動かし続けるときに必要なあれこれ。真っ暗闇をヘッデンひとつで12時間以上走るときのあれこれ。レース前に自分ひとりで体験するのさ、ひどい目に遭ったら「ありがたい」と思うのさ。
雨、トレイル崩落、崖崩れ、低体温症や熱中症、脱水や低血糖、ライトのバッテリー切れ、消化障害、道迷い、睡魔、そしてリタイアの言い訳を探すダメな自分。
ひどい目に遭ったとき、どうやって切り抜ける? その答えは自ら体験するしかありません。たくさんのひどい目の積み重ね、つまり山の経験こそが走力になるんです。
あなたがいつもグループで走っているなら、あなたがたったひとりで山を走ったことがないなら。たったひとりでプランを立てて、たったひとりでルートを決めて、たったひとりで走り出そうよ。たったひとりで走れば高尾山でも、運がよければ、ひどい目に遭えます。走力を高めることができます。