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2022年2月10日

内坂庸夫

208

ひとりで走ろう、ひどい目に遭おう。

去年12月のゆっきーさんの「失敗に学ぶ」と進む方向は同じです、レースに興味のある人はどうぞ。

まずは大昔。
二本足で立ち上がった先人たちは、毎日が生きるの死ぬの、喰うの喰われるの(共食いもあったよ)だった。背中に槍を突き立てられ、怒り狂ったマンモスに踏みつぶされず、九死に一生を得たおサルは、前ではなく、横に飛ぶことを仲間に伝えた。

あるおサルは仲間にこんな話をしたかもしれない。
「みんなあ、聞いてくれよ! ○X岩んとこでライオンが飛びかかってきやんの。たまたま落ちていた石でヤツの額を殴りつけたら、びびって逃げやがった、あー命拾いしたぜ」

仲間たちは○X岩に行くときは石を持っていくことを心がけた。なかには○X岩から帰らぬおサルがいたかもしれない。その息子や孫たちは丸い石をとがらせ、ハンドルをつけたかもしれない、これが手斧の始まりかもしれない。

その手斧は、ひい孫が□△山に行ったとき、虎から身を守ってくれたかもしれない。「お、これは虎にも使える!」

経験を共有すること、つまり知識を伝え広めることは、仲間を敵から守り、飢えから救い、寒冷灼熱をまぬがれ、生き延びることにつながった。群れること(多くの知識を教え教わること)、言葉(知識伝達の道具)を持つ種族が生き残った。われわれだ。

さて、現代でも変わらない。人は(あなたも)ひどい目に遭わないと、困難や苦労、危険がわからない。

あなたがレースを走るなら、いちばん効果的なトレーニングはひとりで、同じくらいの距離を、時間を、走ることだ。仲間とではなく、たったひとりで、だ。なぜなら、仲間はあなたを助けるし、あなたも仲間に頼るから。レースのときはひとりでしょう、たったひとりで対処しなきゃいけない。

あなたが山岳高地で、24時間以上カラダを動かし続けるときに必要なあれこれ。真っ暗闇をヘッデンひとつで12時間以上走るときのあれこれ。レース前に自分ひとりで体験するのさ、ひどい目に遭ったら「ありがたい」と思うのさ。

雨、トレイル崩落、崖崩れ、低体温症や熱中症、脱水や低血糖、ライトのバッテリー切れ、消化障害、道迷い、睡魔、そしてリタイアの言い訳を探すダメな自分。

ひどい目に遭ったとき、どうやって切り抜ける? その答えは自ら体験するしかありません。たくさんのひどい目の積み重ね、つまり山の経験こそが走力になるんです。

あなたがいつもグループで走っているなら、あなたがたったひとりで山を走ったことがないなら。たったひとりでプランを立てて、たったひとりでルートを決めて、たったひとりで走り出そうよ。たったひとりで走れば高尾山でも、運がよければ、ひどい目に遭えます。走力を高めることができます。

PROFILE

内坂庸夫 | Tsuneo Uchisaka

「ヴァン ヂャケット」宣伝部に強引に入社し、コピーライティングの天啓を授かる。「スキーライフ」「メイドインUSA」「ポパイ」「オリーブ」そして「ターザン」と、常にその時代の先っぽで「若者文化」を作り出し、次はなんだろうと、鼻をくんくん利かせている編集者。
 2004年に石川弘樹に誘われ生涯初のトレイルラニングを体験(ひどいものだった)、翌年から「ターザン」にトレイルラニングを定例連載させる。09年に鏑木毅の取材とサポートでUTMBを初体験、ミイラ取りがミイラになって12年吹雪のCCCに出場(案の定ひどい目に遭う)そして完走。(死にそうになったにもかかわらず)ウルトラってなんておもしろいんだろうと、13年、UTMBの表彰台に立ちたい、自身の夢をかなえようと読者代表「チームターザン」を結成する。
 「ターザン」創刊以来、数多くの運動選手、コーチ、医者、科学者から最新最良な運動科学を学び、自らの体験をあわせ、超長距離走のトレーニングとそのマネージメント、代謝機能改善、エネルギー・水分補給、高所山岳気象装備、サポート心理学などを研究分析する。ときどき、初心者のために「100マイルなんてカンタンだ(ちょっとウソ)」講習会を開催してる。

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