Bighorn trail runを走ってきたよ(前編)
桑原です。先週末6/17にアメリカワイオミング州で開催されたBighorn trail runと言うレースの100マイル部門に出場してきました。結果としては、50マイルの関門に5分及ばずという不甲斐ない結果になってしまいましたが、コースなど素晴らしくて今後海外レースに挑戦したいという人にオススメしたいなと思い、レースレポートを数回に分けて書きました。
今回の前編では、Bighornというレースの概要やコース詳細を、続編では僕の個人的な側面にフォーカスして、出場の経緯やレース前日や当日の記録を書いていきます。
目次
Bighorn trailrunって?
Bighorn trail run(以下Bighorn)は、アメリカ中西部ワイオミング州のビッグホーン山地を舞台とするトレイルランレースです。
過去には石川弘樹さんや鏑木毅さんも出場しているので、日本人でもBighornのことを知っている人は意外といるかもしれません。
創設の経緯
このレースは、かつて西海岸の電力開発計画「ドライフォーク・プロジェクト」によって脅かされたビッグホーン山地の雰囲気を守り、ビッグホーン山地、ドライフォーク川、リトルビッグホーン川流域の自然の美しさ、険しい地形、独特の地質に対する一般の認識を高めるために1993年に創設されました(最終的に「ドライフォーク・プロジェクト」は中止となったそうです)。
当初のカテゴリは18/32/52マイルの3つでしたが、2002年に100マイルの部が追加されたようです。
レースの難易度
今回僕のエントリーした100マイルの部は、公式サイトには
全米で最も困難なウルトラのトップ10に名を連ねる、ウルトラの世界では手強いレース
と記されていました。
2022年は定員300名に対して、134人がフィニッシュ。DNSのランナーを除くとおよそ50%の完走率くらいでしょうか。
ただし、100マイルで獲得標高が約6,300m ですので、コースそのものがきついというわけではなく、むしろ日本の急峻な山を走っている皆さんにとっては、走りやすく気持ちのいいコースに当たると思います。完走のハードルを上げているのは、35時間という絶妙な制限時間ですね。
2023のエントリー
来年2023年のエントリー開始は、
100マイル:2022/10/15
18/32/52マイル:2023/1/5
とのこと。
レースの人気的にはエントリー直後に定員がすぐ埋まるというものではないようですが、最終的は100マイルは定員に達していました。ただし、Bighornと同時期(6~7月)に開催されるアメリカ屈指の人気レース、ウェスタンステイツやハードロックの抽選に漏れた方が、その後Bighornに多数流れてくるということで、このBighornに絞ってエントリーをしたい方は上記2レースの抽選結果が出る前に早めにエントリーするのが確実かもしれません。
まとめとオススメポイント
てことで、Bighornがどんなレースかということについてまとめると
- きつすぎないコース設定
- ちょっとやりがいのある制限時間
- アメリカのトレイルを存分に感じられる走っていて気持ちのいいロケーション
- エントリーが比較的しやすい
- 100マイル以外にもカテゴリがあることでレベルの違う仲間とも参加しやすい
こんな感じ。この辺の要素のバランスが良いので、アメリカでのレースを体験してみたい方には中々オススメだと思いました!
コース詳細
ここからは、Bighornのコース(100マイル)について説明していきます。
100マイルのコースは50マイルのトレイルを往復します。
コースはドロップバッグがある3つの大エイドごとに3つのセクションに区切れる感じでした。
なお、ドロップバッグエイドは合計3箇所ですが、行き帰りで通るエイドが2箇所あるので、ドロップバッグ自体は合計5回利用できます。
セクション1:スタート〜Dry Fork Ridge(21.4km)
スタートから6kmほど渓谷沿いのトレイルを走ったあと、一気に高度をあげます。最初の12kmで1,000mアップはコース中最大の斜度。また、渓谷沿いのトレイルを抜けると樹林帯はなくなり、直射日光バシバシのエリアになります。
13.6kmのエイド、Upper Sheep Creekを超えると緩やかな上りのジープロードを経て最初のドロップバッグエイドであるDry Fork Ridge(21.4km)に到着です。
セクション2:Dry Fork Ridge〜Sally”s Footbridge(48km)
Dry Forkを抜けるとしばらく下り基調。地面は微妙にえぐられていたり傾いていたりしているけど、次のエイドのCow Campまではこのレースで一番走れるポイントだと思います。
Cow CampからBear Campまでの11.2kmは、先程よりややアップダウンが増ええるものの、コース中一番景色がよく走っていて気持ちのいいエリアです。一面に鮮やかな花が咲く中のトレイルやこれまで無かった樹林帯の中の気持ちいいシングルトラックを走ったり、左右にそびえ立つ山の岩肌に目を奪われたりして、「このレースに出てよかった」と何度も思いました。
また、Dry ForkからBear Campまでは所々にトレイルを横切るクリークがあります。暑くなりがちなレースなので、面倒臭がらずキャップやバンダナ、顔や首を濡らしてクールダウンするのが重要です。
Bear Campを出ると、Sally”s Footbridgeまで一気に700m高度を下げます。ただし足元がかなりぬかるんでいる箇所もあり(その年の天候・気候によってぬかるみの多い少ないは結構変わるようです)、全てを気持ちよく駆け下りるのは難しいかもしれません。今年も一部ぐちゃぐちゃでスピードを全く出せないゾーンがありました。
セクション3:Sally”s Footbridge〜Jaws Trail Head(76.8km)
2つ目の大エイド、Sally”s Footbridgeからはスープなどと温かい系フードが出てきます。また、一般のランナーはここから次の大エイドJaws Trail Headまでの間に夜を迎えるので、このエイドで装備の入れ替えをします。
ここから次の大エイドであるJawsまでは約30kmで1,400m程のアップ。斜度としてはそれほどでもないのですが、ひたすら上りなのでメンタルは試されます笑。暗くなってくると景色も見えなくなるので、より一層進んでいる感じがなくなります。
標高が高くなると、ぬかるみや雪が残るゾーンが増えてきます。靴や靴下の汚れや濡れ、冷えは必至。それを前提とした装備を用意する必要があります。また、踏ん張りもきかなくなるので、多くのランナーがストックを使っていました。
なお、このセクションで折返してきたトップランナーや知り合いのランナーとすれ違うことになりますが、特に知り合いのランナーと会うとお互いを励まし合うのでテンションが上ります。ただし、暗くてすれ違ったことに気づかない場合もあります笑。
復路について
Jawsからは折返しでほぼいま来たコースを戻りますが、ゴールはスタート地点より6km離れたところにあるので帰りの方が距離が長くなります。
また、Jawsから52マイルのランナーが、Cow Campから32マイルのランナーが、Dry Forkから18マイルのランナーが合流します。
ちなみに、後半については自分が未走のためこれ以上の詳細が書けません涙。
その他コース情報全般
コースに全般ついては、webサイトに結構しっかりとしたディスクリプションがありますので、そちらも是非お読みください。
また、UNDERARMOURによるMAPMYRUNはコース内の上りセクションのみをレーティングしてくれる面白いサービスです。これもかなり参考になります。
最後に今回の参加者であり、過去にこのレースを複数回完走している、日高さんが事前にシェアしてくれたアドバイスもこちらで紹介します。
▶ドロップバッグ
Dry Fork、Foot Bridge、そしてJawsの3か所に置くことができます。 Dry ForkとFoot Bridgeは行きと帰りの2回通ります。
▶ライト
トップ選手は明るいうちに折り返し地点のJawsまで行ってしまうので、Jawsに置きます。私が完全に暗くなる前にJawsにたどり着いたのは1度だけです。ので、トップ選手以外はFoot Bridgeに置くのが良いかもしれません。 私はFoot Bridgeから1つ持って、折り返しのJawsからはダブルにする予定です。
▶ポール
天気とトレイルのコンディションにもよりますが、私はFoot Bridgeのドロップバッグにポールを入れようと思っています。Foot BrigdeからはJawsまでは上りなのと、トレイルのコンディション次第ではポールがないとヌルヌル坂みたいなっていて上がれない場所もあるのでその場合は、絶対にあった方が良いと思います。Jawsで折り返して、Foot Bridgeでバッグに戻しても良いのですが、実はその直後に壁のような登りがあるので、私はDry Forkまで持っていきます。弱り具合によっては最後まで持って行った年もあります。
▶暑さ
天気が良ければ日中は暑いです。40度まであがることはなかなかないですが、かなり暑い年もありました。通過時間にもよりますが、特にスタート/ゴールとDry Fork、場合によってはFoot Bridgeの間はなかなかです。日本と違い乾燥しているので、汗は比較的すぐに乾きます。 熱中症でリタイヤする選手もいます。 逆に曇ったり、雨が降ったりすると比較的涼しい、むしろ寒いときもあります。
▶寒さ
トップ選手以外は夜間に一番標高のあるJawsを通過します。気温は10度以下、場合によっては0度にもなります。雷雨、雪、になる時もあります。毎年、対策と準備をしていない選手はこの区間で気温が下がり、雨に打たれて何人も低体温でリタイヤしています。 Jawsのエイドステーション周りも覆われている大きなテントで中は温かくなっています。 温かい飲み物、食べ物もあります。ただ、そこで長居しすぎると外は寒くて出るのが辛いです。 その他にもたき火をしているエイドステーションがありますが、座ってしまうと動くのが嫌になってしまいます。
Bighornレポート前編(レース概要編)はここまで。
次回は僕の個人的な側面にフォーカスして、出場の経緯やレース前日や当日の記録を書いていきます。