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2022年6月29日

クワバラ

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Bighorn trail runを走ってきたよ(後編)

Bighornレポート、今回はいよいよレース当日についてです。

前編中編はこちらから。

スタートまで

7:00に起床。昨晩眠れなかったので不安が募ります。同部屋の礒さんもあまり寝付けなかったとのこと。

準備を済ませて、モーテルをチェックアウト。ここからスタート会場へ向かうのですが、少し複雑。まずは、ゴール会場であるScott Bicentennial Parkへ向かいます。ここはシェリダン中心街から車で約30分の距離。

旅の相棒RAV4

今回はシェリダンの空港到着時にレンタカーを借りたんですが、空港からモーテルの行き帰り、レース会場への行き帰り、帰国前PCR検査のクリニックへの移動やなどに活躍してくれました。

また、シェリダンからイエローストーン国立公園まで車で5時間ほどで行くことができるので、日程に余裕がある方は是非足を伸ばしてみてください。

Scott Bicentennial Park に車を停めたら、公園から出ているシャトルバス(スクールバス)に15分ほど乗ってスタート地点へ向かいます。

バスの中では、朝食がゆっくりとれなかったので、Trail Butterのチャイ味(マジでうまい)を食べたり、隣に座っていたコロラドから来たジョンと会話をしたり。

バスを降りて少し歩くとスタート地点。既に多くのランナーが集まっています。他の日本人のみなさんともここで合流。

 

スタート〜Dry Fork Ridge(21.4km)

午前9時レースがスタート。過去にアメリカの100マイルレースPINE TO PALMに出た際には、序盤のハイペースに飲まれて見事に潰れたので後方からゆっくりペースでスタート。

スタート直後。こう見ると結構人いますね

スタートからしばらくは少し広めの林道?を進みます。2kmほど進んだトレイルヘッドに最初のエイド Tongue River Trail Head が出てきますが、ここは止まる人はそれほど多くありません。

トレイルに入ると緩やかにアップダウンを繰り返して標高を上げていきます。この辺はまだ樹林帯で木陰も若干あります。

コンディションが不安だったためスタートからストックを出しましたが、この辺は使わず走ります。

トレイルの途中で不意に2つ目のエイドLower Sheep Creek(5.6km)が現れます。ここでは、少しだけ水を補給して先に進みます。

体が動かない

エイドを過ぎると徐々に傾斜が出てきて、樹林帯を抜けると後はひたすら上り。ここで自分の体調がおかしいことに気づきます。体に力が入らないのです。

元々上りは好きな方で、走れない登りをパワーウォークでガシガシ進むのが得意なんですがそれができない。ならばと、ストックを使って上半身で登ろうとしても腕にも力が入らない。寝不足?標高?(といってもまだ2,000mにも達していません)暑さ?ちょっと原因がわからないのだけど10kmも走っていないのにいきなりピンチです。少し登っては休み、登っては休みを繰り返し、気がつけばほぼ最後尾に。

余裕っぽく見えますが後ろが詰まっています笑
死にかけているところをジェニーが追い抜きざまに優しい声をかけてくれ、少し気持ちが楽になります。

丁度そこに大きな岩影、おそらくこのエリア唯一の日陰、を見つけたのでノータイムでそこに滑りこみ10分ほど横になって休みました。これはマジで助かった。

エイド3 Upper Sheep Creek

その後もペースは上がらないけれど、なんとか足を進めて13.6kmのエイドUpper Sheep Creekに滑り込みます。テントの下で10分ほど補給や休憩をして出発。ドロップバッグのある次のエイドまでは約10kmだけど、その10kmが果てしなく遠く感じます。

エイド直前か直後、ヘロヘロですね

そこから日陰のないジープロードをトボトボ進みます。前も後ろも人影はほとんど見当たらず、自分がかなり最後尾にいることを痛感。と、ここであることに気づきます。

「ストック、邪魔だな…」

コンディションや自分の仕上がりに不安があったので、スタートからストックを使うという選択をしたのですが、上半身にも力が入らないし、勾配がそれほどきついわけでもない。ストックを持っていることで腕が振れないということがストレスになっていることに気づきました。

すぐさまストックをしまって腕を振ってみます。お、さっきより足が進む。ちょっとテンションが上がります。そうこうしてゆるい登りのジープロードを登り切ると、下りのトレイルに差し掛かったので、腕を振りながら更に足をすすめると、大エイドのDry Fork Ridgeが見えてきました。エイドインは13:35(スタートから4:35)。後から数字を見て見たら前のエイドから登りもある10kmを1:10くらいで来れたので意外と頑張れたのかもしれません。
 

Dry Fork Ridge〜Sally”s Footbridge(48km)

エイドについたらまずはドロップバッグをピック。補給食の入れ替えなどをします。また、少しペースは上がったとはいえ、かなりバテているので、フルーツを食べたり、地面に転がったりして回復の糸口を探します。

僕はレース中に飲むオレンジジュースがすごく好きで、ここのエイドにないかなと思ったらありませんでした。コーラやスプライトのドリンクバー(ファミレスにあるみたいなやつ)はあったけど、ちょっと炭酸気分じゃなかったのでそれはパス。その代わりに見つけたのが Pickle Juice。字面からピクルスのジュースということはわかったんだけど、その時の僕は脳がバグってたので、なぜかマスカットジュースのような味を想像したんですね。これだ!と思ってカップになみなみと注いで飲んだら…

「すっペー!!!!!!!」

普通にピクルスの漬けてある汁をそのままドリンクにしたものでした笑

ピクルスジュースを飲んでいる所を写真に撮られました

結局なんだかんだ20分くらい休憩して(長い)、14:00ちょっと手前にエイドを出ました。

エイドを出るとしばらくはゆるい下り基調のパート。ビックリするくらい体が動きます。後々ネットで見てみたら、ピクルスジュースって結構効果あるみたいです。次から見かけたら積極的に飲むようにします笑

エイドを出たところ

次のエイドは31.2kmのCow Camp、約10km先です。緩やかなアップダウンのある下り基調なので、全般的に足が動きました。

このエリアも日を遮るものがほとんどないんですが、トレイルを横切るクリークが結構あり、その都度手ぬぐいやキャップを濡らして顔や首筋にもしっかり水をかけてアイシング。深い場所では太ももとかふくらはぎも冷やしちゃったりして。これのおかげで暑さはなんとか凌げた感じ。天候的にもこのくらいの時間からうっすら曇って風が出てきたのもありがたかったです。

エイド5 Cow Camp & エイド6 Bear Camp

そうこうしているうちにCow Campに到着。10kmで75分くらい。まぁまぁでしょうか?ここまでで10人くらいは前行くランナーをパスできた感じです。ただ、まだコンディションが不安なのと、暑さや気持ち悪さがあるのでゆっくり目に休みます。そうこうしているうちに、結構なランナーにまた抜かれました笑。

アメリカのエイドは前に出た時も思ったんですが、どこも氷が結構あるのがありがたいですね。ドリンクに入れたり首筋を冷やしたり、かなり助かります。日本だと、エイドに氷ってあまりないですよね?あったとしても参加人数が多すぎて用意してもすぐ無くなっちゃうかもしれませんが。

あと、ここのエイド。エイドスタッフの高校生くらいの女の子二人がソフトボールのピッチング練習をしていました。微笑ましいなと思っていたら、その子の投げたボールが逸れて、見事の腕に僕にヒットしました。結構痛かったけどなんかそれもアメリカらしい(頭に当たらなくてよかった笑)。

15分くらい休んで出発(長い)。次のBear Campまでは11.2km。アップダウンも今までより少し増えます。ただ、アップダウンがあるといってもほとんどが走れるレベルのもの。また、このエリアは辺り一面に咲いた花の中のトレイルを走ったり、森の中のシングルトラックを走ったりと、Bighornのコースで一番気持ちの良いエリアと感じました。

また、Bear Campの3~4km手前には水場もあり、体を洗ってるランナーもいました笑。僕もそこで少し少なくなった水を補給。

アップダウンがあった分、11.2kmに2時間ちょっとかかり、Bear Campに到着。森の中に突然現れる小さめのエイドです。

今までちょっと休みすぎたと思ったので、ここは休憩を少し短くして8分ほどで出発(それでも長い)。ただ、少しずつ体がレースに慣れてきているのを感じます。

ここから、次のエイドSally”s Footbridgeまでは約5.6km 700mを一気に下り降りるセクションです。傾斜的に走りにくい所はほとんどなかったと思いますが、一部ぬかるみがひどくて走れないエリアはありました。ぬかるみの多い少ないはその年の天候や気候(雪解け)などによっても異なるようです。
 

Sally”s Footbridge〜Jaws Trail Head(76.8km)

下りを丁度1時間くらいかけて降て、48kmのSally”s Footbridgeに到着。川沿いの大エイドです。

ここから次の大エイドJaws Trail Headまでは約30kmで1,300mほどの登り一辺倒。また、ここから先で夜間走になるので、ここで防寒着やライトなど装備を入れ替えます。

また、このエイドからお湯をもらえたので、ドロップバッグに入れておいた雑炊や味噌汁などのフリーズドライを食べて胃が少し休まりました。ただ、エイドで普通にくれるチキンブロス(チキンコンソメスープ)はちょっと味が合わずに飲んで気持ち悪くなりました。

こちらは持参した雑炊

なんとなく回復した気でいたし、そこまで疲労感はなく思っていたんですけど、雑炊食べて、スープ飲んで、白湯を飲んで、装備を入れ替えてってやっていたら、このエイドでは45分もストップしてしまいました笑

次のエイドまでは16km 700mアップ。結構あるなと思いながらエイドを出ます。

Jaws Trail Headの関門時間は朝の4時。Sally”s Footbridgeを出たのが19:30なので約8時間あります。ゴールできるかは微妙だけど、まぁJawsまでは行けるだろう。そんな計算をします。ゴールできるかも、そんな風に思えてるだけでも大分回復した感じはします。

エイドを出た所。ずっと思ってたんだけど二の腕がムチムチ…

突然の眠気

ここからしばらくコースは渓谷沿いの岩場を進んでいく感じで、またこれまでと違う趣がありますが、ここで次の問題発生。前のエイドで食べすぎて血糖値が上がったか、前夜の寝不足がたたったか、またはその両方か、ここで体が一気にだるくなって眠気に襲われます。前に進むのも面倒臭い。

仕方なく、迷惑にならなそうな場所を見つけて20分ほど寝たら回復。よかった。そのまま足を進めるとすぐにエイドのような場所があります?まだ5kmくらいしか来てないのに?

そこは、Cathedral Rockという下りランナーが使えるエイドでした。僕があまりに遅すぎたので、設営してる所に通りかかってしまったというわけです。人に会ってホッとしてしまったので、ここでも5分ほど休憩して次の10km先のエイドを目指します。

そろそろ日も落ちてきたので、このくらいからライトを点灯。今回Milestoneさんから発売前の1,000ルーメンのライトを借りれたのですが、これがとても良くて夜間のストレスはほとんどありませんでした。

また、Cathedral Rock を出てしばらく行ったところで、初めて下りのランナーと遭遇。トップの選手だと思うのですがものすごいスピードで駆け抜けていきました。

寝たり休憩したりで、体は割とまた動くようになってきましたが、暗くて単調な登りが延々と続くので、全然進んでいる気がしません。結構気持ちが切れかかります。この辺はここ数年長いトレイルを走っていない影響もあったかなと思います。

と、そんなときすれ違ったおそらくtop20位のランナーのウェアに見覚えが。ライトで顔はよく見えないのですが、礒さんでした。ヘロヘロな僕を滅茶苦茶励ましてくれました。テンション激上がりで切れかけてた気持ちも元に戻り、そのまま64kmのエイドSpring Marshに到着。

エイド9 Spring Marsh 〜 エイド11 Jaws Trail Head

ここのエイドでは15分くらい休憩。エネルギー切れって感じはあまりしないんだけど、結構胃が気持ち悪かったので、座って白湯を飲んだり、エイドにあったじゃがいもを食べたりして、またしてものんびりしてしまいました。

次のエイドElk Campまでは約5.6km。76.8kmのJaws Trail Headまでは12.8km。関門時間まで後4時間。まぁ行けるでしょうという感じで、エイドを後にします。

ここから、更にすれ違うランナーが増えます。また、少しずつ足元がぬかるんだゾーンも増えてきます。ここで折り返してきたサクとすれ違い、また元気をもらいます。

深夜1:45分頃、Elk Campに到着。登りとはいえ5.6kmに1時間40分もかかってしまいました。ちょっと想定外。5分ほどでエイドを出て、関門のJawsに向かいます。残り7.2kmで2時間強。行けると思いつつも結構焦り始めます。

Elk Campを抜けると、より一層ぬかるみが増え始めます。また、雪が残っているエリアも増えてきます。ぬかるみは避けることができないくらい広範囲にわたるので、覚悟を決めてズボズボ進みます。場所によっては結構深かったり、かなり冷たかったりもします。思うように進めないことも増えてきて、ペースがなかなか上がりません。

手元の時計で、エイドまであと2kmくらいのところで、すれ違った女性ランナーが声をかけてくれました。ジェニーです。エイドはもうすぐそこよ、的なコメントで励ましてくれます。僕もジェニーに励ましのコメントをして先に進みます。

そうこうしているうちに、灯りが見えました。エイドだ、間に合ったと思いきや、コース誘導のために停まっていた車でした。しかも、エイドは1マイル先後、30分ね!なんて割と絶望的なコメントをくれます。残り時間は本当にギリギリ。気持ちは焦るものの、ぬかるみはより一層酷くなってきます。

そして、76.8kmのエイド目前にしてタイムアップ。関門時間に5分間に合わず、僕のBighornはここで終了となりました。

レースを振り返って

タイムアウトになったものの、その時点で足のダメージやエネルギーの枯渇感はあまり感じませんでした。後からログを見てみると、19時間のうち、活動時間が15時間。4時間ほど休憩していたことになります。休みすぎ笑。

時間に対する緊張感を持って、エイドワークをもう少しタイトにやっていれば、Jawsの関門は間に合っていたなと思いました。序盤につぶれたことで不安になり、慎重に行きすぎた気もします。

ただ、完走となるとJawsを関門2時間くらい前には出る必要があったようです。そうなると、序盤潰れないペースで行ってギリギリ完走できるくらいだったのではないかと思います。

とはいえ、目線が低いと思われるかもしれないけど、自分的にはかなり満足感もありました。実はトレイルを80kmも走ったのは5年ぶり。今年に入ってからも家族との時間を大切にするため、トレイルに行くのは月1回としていたので、そんな中でよくやれたなと思ったし、昨年までとても走るのは無理だと思っていた100マイルを走ることも今の延長線上に見えてきたからです。

トレイルランニングストアの店主としては不甲斐ない成績ではあるんですが、とかく周りを見渡すとスーパー一般人が多い、トレイル/ウルトラランニングの世界に置いて、こういう一見中途半端な結果も、自分でOKを出せるならそれでいいじゃん、と。今の僕にできるのはそういうケースを示すことかなと思いました。

ゴールにて

Jawsから乗ったバスの中でそんなことを考えながら、ゴール地点へ向かいました。車で仮眠をちょっとして、あとは帰ってくる仲間を待ちます。

ゴールの公園の芝生でみんなくつろぎながら選手のゴールを待ちます。ゴールは18/38/52/100マイル全ての選手が同じタイミングになるようになっています。

天気も良くて、いろいろ食べたり飲んだりしながら仲間を待つこの時間はなんかとても気持ちの良いものでした。そして、帰ってくるランナーはみんなかっこいい!距離に関わらず、おめでとう、という気持ちになります。

自分は完走できなかったけれど、本当に来て良かったなぁ、心からそういう気持ちになりました。

礒さんは18位でフィニッシュ!
サクは32時間を切ってゴール。いい表情!
ゴールではスタッフがハンバーガーを焼いてくれます。うまかった!
ビールも飲めます
公園横の川で、泥だらけのシューズを洗濯。お疲れ様でした。

僕のBighorn レースレポートはここまで。

久しぶりの100マイルレースはもちろん楽しかったし、仲間との海外への旅というのも、すごく気分を高めてくれました。知らず知らずのうちに我慢していたり、溜め込んでいたものをすーっと解放できた気がします。

やっぱり、トレイルランニングって最高ですね!!

PROFILE

クワバラ | Kei Kuwabara

Run boys! Run girls! 店主。体重が増減しがち。その分ダイエット得意がち。2020年に何かの大会で10位以内に入るプロジェクト」通称「にな10」を立ち上げるもコロナ禍やなんやかんやで頓挫。UTMF、UTMBや、Pine to Palm(Oregon / 100mile)、OMM (UK)などを完走しています。

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