3つ目は「走らない」
6月に80kmのレースに出ました。「これ以上は速く走れません」、そのくらい全力を尽くしました、尽くせました。足も脚も最後まで動きました、最高の気分でフィニッシュできました、成績は後ろから数えた方が早いのですけど、自分をほめたいなあ。そのために、以下の3つを心がけて半年前からトレーニングを始めています、みなさんにとってはあたり前すぎる3つでしょうけど、基本のキということで紹介します、少しでも参考になればうれしいです。
「走った距離は裏切らない」
装備や山岳知識はさておき、身体運動としての「走力を高めたい」なら、脚と足の筋肉を「持久力に長けた筋肉」に鍛え上げ、そして「最大酸素摂取量」を増やせばいいと思うな。
どうすれば? まず、ひとつ目のトレーニング。筋肉の持久力を高めたいなら「長い時間走り続けること」「長い距離を走り続けること」。走ることは筋トレです。長い時間、長い距離を走り「続ける」ことで筋持久力が作られます。「走った距離は裏切らない」とはこのこと。そして短い距離をちびちび積み上げるより、長い距離をぶっ続けて走る方が効果的です(*)。だって50km、100km、100マイルのレース、みんなぶっ通しで走るんですから。
「心臓と肺の筋トレ」
次にふたつ目のトレーニング。筋肉の収縮には酸素(や糖質、脂肪)というエネルギーが必要です。そのエネルギーを取り込む能力が大きければ大きいほど、強く速く長く足と脚を動かせます。その能力は「最大酸素摂取量/VO2Max」であらわされ、その向上はインターバル走で培われます、高強度のゼーハートレーニングです、心臓と肺の筋トレだと思いましょう。
オンラインコーチングの先駆者でもあるクリッシー・モールさんのガイド本『はじめてのウルトラ&トレイルランニング』では「5分間全力走/1分間休憩」を積極的に奨めています。全力で5分も走るのに1分しか休めない、なんとキツイこと。「5分間全力走/1分間休憩×5本」から始めて、最終的には「上り坂(!)」で「×8本」までやらされます、大嫌いだけどきっちりやっつけました。
「走らない」
3つ目は走らないトレーニング。筋組織も心肺機能も「大きな負荷/刺激」を加えて、そして充分な「リカバリー」をさせることで、強く速く大きく長持ち高性能になります。ですから(原則として)実走トレーニングの翌日は走りません。
リカバリーとは「運動しないこと(!)」そして「充分な栄養(特にたんぱく質)の摂取」と「深い睡眠」です。良質な睡眠では成長ホルモンが大量に分泌され、損傷した筋線維がたんぱく質で積極的に修復され、さらにそれ以上に強く(高性能に)なります、寝る子は育つ、です。大谷翔平さんが試合中でもザバス(だよね?)をガブ飲みし、睡眠〈1日10~12時間だそうな)を大切にするのはそんなことからです。
そしてレースは大きな大きなトレーニングです、せっかくカラダが強く速く大きく長持ち高性能になろうとしています。レースのフィニッシュ直後から数日は金の時間です、しっかり食べて、しっかり眠って、それだけでパフォーマンスが上がります。
(*)B2B
ぶっ続けで、とはいうものの、50km走はまだしも100km走や100マイル走は1日では終わりません。月に1回くらいならなんとかなっても、月2回やそれ以上なるとなかなかむずかしくなります。
そこで、知ってる人も多いだろうけど、「Back to Back」というやり方(前述のK・モールさんの本でも紹介されています)。B2Bと書かれることもあって、立て続け、連続のこと。トラウタニ弾みたいなもん。ランのトレーニングでは週末を使って目標の距離をふたつに分けて行うことを意味します。
たとえば。狙いが100kmレースなら「30km・20km」合計50kmくらいから始めて「40km・30km」「60km・40km」とかに。リカバリーしない(できない)のに、疲れているのに、残りの距離をやっつけるのが筋肉的にもメンタル的にも効きます。狙いが100マイルレースなら、最初は100km走と同じように始めて、最終的に金曜の夜も使って「80km・80km」、「90km・70km」とかに。
おまけ
レースには必ず下りがあります。下りが長く、急峻であればあるほど、意思とは関係なく前腿(大腿四頭筋)を使ってしまいます。レース終盤で「脚が売り切れた」「脚がつった」などの声を聞くことがあるけど、もしかして(長い、急な)下りを計算しなかったトレーニング不足、筋力不足が原因かもしれません。狙うレースの距離だけでなく標高差累積、レースコースのプロファイルなどを充分に確認してトレーニングプランを立てましょう。
そして、あなたが思っている以上にトレイルラニングは下肢の筋収縮は大きいのです。つまり、走りながらたんぱく質を消費しています、ウチサカの実測では総カロリー消費の10%がたんぱく質だったことがあります。トレーニング直後、特にレース直後はたんぱく質の補給を心がけましょう。とはいえ、一度に摂取できるたんぱく質の量には限りがあります。少しづつ、回数多くを心がけて。