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2023年8月24日

内坂庸夫

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ボランティアの強い意志

オーストリアでのレース。越えた山は4つ、50kmを終えて、湖沿いのエイドに到着しました。ふう、ベンチにへたり込んでザックを下ろしたら、目の前にニコニコ笑顔とともに、預けていたドロップバッグが現われた。スタッフがドロップバッグを持って来てくれました。

びっくり、ありがたい、うれしい

え!? びっくり、ありがたい、うれしい。ドロップバッグの受け取り。たいていは選手自身がDバッグの置いてあるところに出向いて、スタッフにビブを見せるなり、番号を言葉にして、Dバッグを受け取ることが多い。大会によってはスタッフなんかひとりもいなくて、選手自身が勝手にピックアップする場合もあるけど。

ボリュームゾーンが通りすぎて、大忙しが一段落したタイミングだったからなのか? あるいは、あまりのヘタレをスタッフが見るに見かねて、だったのか? あるいは、このレース、最初からDバッグの専任スタッフがいて、到着する選手のビブを確認するや、棚から同じ番号のバッグを選び出して、選手のいるところにサクサク持ってゆく、というやり方なのか?

ひとりじゃない

どうあれ、スタッフの「世話焼き」「笑顔」と「がんばって」のひと言がなんとうれしい。ひとりじゃない、自分を見てくれている人がいる、気にしてくれる人がいる、それもうれしい。

そういえば、このレース、どのエイドでも給水ブースでは、スタッフが空のフラスクを奪い取るようにして、「水?」「アイソ(電解質液)?」と聞いてくる、すぐに答えどおりの中身でフラスクを満タンにして戻してくれます。もちろんの「笑顔」とともに。

深夜のエイドでは、メニューにはない、温かい「紅茶」を用意してくれていました。急激に外気温が下がったから、というスタッフの臨機応変な判断です。ほんとに身も心も温まりました。

チョコはどお?

そして、この丘を越えればフィニッシュ、という最後のウォーターステーションでは「チョコレートはどお?」って声をかけられました。ばらばらに割られた板チョコがお皿に山盛り、さすがオーストリア。ミルクチョコじゃなくて黒チョコだったけど。

いろんな大会があり、その運営にさまざまな背景があるから、ひとまとめに言い切ることはできないけど、健全で良質な大会運営には「優秀な人材確保」は必然だと思う。

志願兵

ボランティア。無償奉仕と訳されることが多いけど、志願兵という意味もあります。生命を犠牲にしてもかまいません(その困難な出来事を解決するために)、参加します、戦います。つまりさ、「無償の活動」にプラスして「強い意志」を持った人がボランティアです。

組織の中で動かなきゃならないから、好き勝手に活動できるわけではないけれど、「強い意志」はいつも心の中で燃やしていてほしいな。

ボランティアの強い意志って? たとえば「全力を尽くして選手の世話を焼き、彼らを安全に楽しくフィニッシュさせる」ことかな。

彼らボランティアに感謝と拍手を送りたい。

ウチサカ

PROFILE

内坂庸夫 | Tsuneo Uchisaka

「ヴァン ヂャケット」宣伝部に強引に入社し、コピーライティングの天啓を授かる。「スキーライフ」「メイドインUSA」「ポパイ」「オリーブ」そして「ターザン」と、常にその時代の先っぽで「若者文化」を作り出し、次はなんだろうと、鼻をくんくん利かせている編集者。
 2004年に石川弘樹に誘われ生涯初のトレイルラニングを体験(ひどいものだった)、翌年から「ターザン」にトレイルラニングを定例連載させる。09年に鏑木毅の取材とサポートでUTMBを初体験、ミイラ取りがミイラになって12年吹雪のCCCに出場(案の定ひどい目に遭う)そして完走。(死にそうになったにもかかわらず)ウルトラってなんておもしろいんだろうと、13年、UTMBの表彰台に立ちたい、自身の夢をかなえようと読者代表「チームターザン」を結成する。
 「ターザン」創刊以来、数多くの運動選手、コーチ、医者、科学者から最新最良な運動科学を学び、自らの体験をあわせ、超長距離走のトレーニングとそのマネージメント、代謝機能改善、エネルギー・水分補給、高所山岳気象装備、サポート心理学などを研究分析する。ときどき、初心者のために「100マイルなんてカンタンだ(ちょっとウソ)」講習会を開催してる。

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