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2023年9月21日

ゆっきー

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UTMBにおけるTDSの魅力とは?

7月のCervino Matterhorn Ultra Raceに続き、8月にUTMB Mont Blanc の1カテゴリであるTDSに参加しました。今回はそのTDSの魅力などをお話したいと思います。

(Cervino Matterhorn Ultra Race のレースレポートは先月のブログをお読みください)

TDSは2020年にエントリーをしていましたが、その年はコロナ禍でUTMBが中止。それに伴って21〜23年の3年間、優先的にエントリーできる権利が付与されたため、今回はその権利を行使するために参加しました。

2020年当時にTDSにエントリーした目的は、フランスのL’Échappée Belle(149 km /11 300m+)と併せて参加することが目的でした。

L’Échappée Belleの開催は8月21日(金)〜8月23日(日)、TDSの開催が8月25日(火)〜8月26日(水)ということで、中1日を挟んで1週間に計300kmを完走するという目標を掲げていました。

その後、L’Échappée Belleは単独で完走したため、今回のTDSは単独で参加することとしました。

今回のTDS出走の目的は、UTMBよりハードと噂されるこのレースがどれほどのものかを自分の肌で体験することでした。

結果としてはTDSに完走したものの、私としてはちょっと物足りなさを感じました。その理由としては大きく2つあります。

1つ目は山の難易度がそれほど高くないことです。今年は雪の関係で一部コース変更となったものの、テクニカルな場所が無かったというのが私の印象です。

また、山の稜線や尾根もなく、加えて岩場やガレ場の区間がない一方で、林道区間が多いコースだと感じました(コースの詳細については後述します)。

2つ目はUTMB Mont Blancのカテゴリではあるのですが、残念なことにモンブラン山塊の絶景をレース中に楽しむことができないということです。

私自身、いくつかのフランスのレースに挑戦してきましたが、TDSはフレンチ・アルプスの色が濃いレースである印象を受けました。

フレンチアルプスはイタリアやスイスの山々と比べて、岩稜帯の少ない山々で標高が低く(3,000mを越える山が少ない)、加えて森林限界のエリアが少なく山塊が緑に覆われているというのが特徴です。

普段であれば、スタート地点のイタリア・クールマイヨールからモンブラン山塊をみることができるものの、スタート開始が真夜中であるためその景色を見ることができませんでした。

唯一、モンブランを見ることができるのは、ゴール手前のシャモニーの街に入ってからとなり、フランスまで訪れてレース中にモンブランの絶景を味わえないことは残念なことです。

(編注:UTMB各カテゴリのコース。TDSはコースの3/4がフランスにあたる)

◇     ◇

今回TDSを経験した上で、今後改めてTDSに参加したいかというと、そこまで魅力を感じるレースでないというのが私個人の感想となります。

過去においてTDSは、UTMBと同様にプレエントリー時にすでに枠が埋まっていましたが、今年は定員割れで大会直前の8月になっても未だエントリーを受け付けていました。

定員割れとなった理由は大きく2つあると思っています。一つは、UTMBワールドシリーズ戦のファイナルとしてTDSが組み込まれなかったこと。

もう一つは、TDSを完走してもランニングストーンが獲得できないこともあり、エリート、一般ランナーいずれにとってもTDSに出る魅力が無くなったものと私は考えています。

来年の大会要項も最近発表されましたが、TDSは抽選ではなく先着順になったこともあり、恐らく来年も定員割れになるものと私は推察しています。

TDSに関してネガティブなことを書いていますが、TDSを魅力的に感じるランナーは一定数いると私は思います。

どういったランナーがTDSに出るメリットがあるのか、私なりの視点で述べたいと思います。
 

本格的に海外レースに挑戦したい人にTDSはお勧め

今後UTMB完走を目標としている人、もしくはUTMBよりワンステップレベルの高いレースを目標としている方にとっては、TDSはお勧めできるレースだと私は感じます。

そもそもUTMBとTDSのレベル感について、両レースを経験した私の見解としては、同程度のレベルであるというのが結論です。

従って、現時点でUTMBの資格を満たしていないけど、今後のUTMBの挑戦を踏まえて同等レベルのレースを経験したいと考えている人には、お勧めだと思います。

補足となりますが、TDS以外でUTMBと同レベルの欧州でのレースを以下にいくつかピックアップしておきます。

海外でチャレンジできる機会ががあれば、ぜひ海外レースで腕試しすることをお勧めします。

Val d’Aran by UTMB (ESP)
KAT100 by UTMB (AUT)
Mayrhofen Ultraks (AUT)
Ultra-Trail® du Haut-Giffre (FRA)
La Montagn’hard (FRA)
Grand Trail de Serre-Ponçon (FRA)
Scenic Trail (CHE)

TDSを含めこれらレースを一度でも経験した上でUTMBに臨むと、UTMB本番において力を十分に発揮できると思います。それだけ海外レースを一度経験しているかしていないかは大きな違いになります。

また、以下のようなUTMBよりワンステップレベルの高いレースに今後挑戦したい方には、TDSは入門レースとしてお勧めだと私は感じます。

Hardrock (USA)
Tor des Geants (ITA)
Grand Raid de la Réunion (FRA)
L’Échappée Belle (FRA)
Ultra Tour Monte Rosa (CHE)
Swiss Peaks (CHE)
Trail Verbier St Bernard by UTMB (CHE)
Ultra-Trail Snowdonia by UTMB (GBR)

上記レースでは、いくらトレランの技術や体力があっても、海外レースの経験が少なければその技術などを上手く活かすことができません。

TDSがこれらのレースに出走に向けてお勧めできる理由は大きく2つあります。一つは高低差の大きい登り下りが経験できることです。

TDSでは高低差1,000m以上の登り下りや標高2,000m以上の高高度で走る区間などあるので、日本のトレイルレースで経験できないことができます。

もう一つは、夜間対応のトレーニングができるということです。

TDSは前述の通りAM 0:00スタートであり、エリートランナーではない限り必ず2日間夜間帯にレースを行うことが必須となります。

つまり、2日間かけて標高の高い区間で夜間を経験するかしないかで、これらレースにおいて大きな差となります。
 

TDSの特徴は走れるコースであること

TDSのコースの特徴を一言で述べると、整備されたトレイルでありかつ林道区間が多いということです(私自身はTDSよりハードなレースの経験が多いため、私個人の意見として捉えてください)。

今回のTDSは、天候不良に伴い一部のコースが変更された形での開催となりました。

コース変更となった理由として、レース数日前から平年の気温を下回る寒さとなり、標高2,000m以上では積雪状態となったため、選手の安全を配慮して変更となりました。

以下プロフィールに記載の通り、51〜66kmの区間がコース変更で迂回するルートとなったため、距離は153kmと若干長くなり、ほぼ100mileレースに近い形での開催となりました。

TDSのコースを大きく3つのセクション(50kmごとに分割して)に分けて、コースの特徴について説明したいと思います。

セクション①:スタート〜50km

コースの半数が林道区間(上記オレンジ線、以下同様)で走れる区間が非常に多いことが特徴です。

スタートからT2のエイドまではUTMBのコースを逆走する形となります。

T1のエイドまで林道区間であり、このエイドより先がトレイルの区間となるため、大渋滞が発生します。

約2,500mの峠も非常に整備されたトレイルであり、登りもテクニカルな場所なく急登箇所もありません。また、峠の通過後は林道となるため、約10km走り続けることになります。

また、T3のエイド以降の下りも林道区間でT4のエイドまで一定ペースで走り続ける必要があります。

セクション②:50〜100km

前述の通りT4〜T5の区間がコース変更(迂回ルート)となりこの区間については割愛します。従って、T5以降のコースの特徴についてお話したいと思います。

T5からのCol de la Sauceも緩やかな登りの峠であること。またT6からの登りもいくつか山頂(ピーク)を踏むルートであるものの、整備されたトレイルとなっています。

Pas d’Outray(2,100m)からT7のエイドまでは1,400mほどの長い下りの区間となります。下りはじめは多少のガレ場区間で走りづらい箇所がありますが、その後はとても走りやすいトレイルです。

セクション③:100km〜ゴール

この区間は上記2つのセクションと比べて最も易しいセクションとなります。大部分が林道区間であり、テクニカルな部分はありません。

T10のエイドから先のCol de Tricotまでの約700mの登りがスムーズに乗り越えられるか(多くのランナーがこの登りで苦労をしていた)。

また、T11からゴールまではUTMBの逆走の区間となり、足が残っていない中でこの8kmをどう走るかがポイントとなります。

◇     ◇

私の正直な気持ちとして、悪天候でありましたがコース変更なく開催されることを希望していました。

数多くの海外レースに出てきた中で、荒天となったレース経験がゼロであり、悪条件の中でスキルを磨きたかったのが理由となります。

とはいっても、今回は貴重な低温・積雪の中である程度レースを経験できたことには満足しています。

同日月曜スタートであったPTLでは、コース変更がなくTDSより更に悪条件の中での開催だったので、PTLにエントリーしていれば良かったと後悔しています。
 

TDSのあるべき姿・方向性

前述の通りTDSはUTMBと同程度のレベルであると私は感じており、今後のTDSはUTMB Mont BlancのカテゴリにおいてメインレースであるUTMBと差別化を図ってほしい、というのが私の考えです。

具体的には、PTLのように上級者向けとし、コースや参加条件もよりに上級者向けに改定してほしいと感じています。

UTMB完走者の次の挑戦の間口としてPTLは非常にレベルが高いと感じています。PTLの前にまずはTDSで挑戦する(=PTLの入門編)というのが理想形になると、私含めたランナーは積極的にTDSに参加するものと思われます。

ランナーの志向性を距離だけで分類するのではなく難易度でも分類すると、特に海外のランナーは日本人と比べて難易度の高いレースを好んでいる人が多く、こういったランナーを上手く囲い込むことができると感じています。

UTMBへの人気の一極集中を分散させ、より多くのトレイルランナーが姉妹レースも含めた形でUTMBに挑戦しやすい環境となることを期待したいと思います。

PROFILE

ゆっきー | Yukihisa Nakamura

海外のトレイルレース延べ2000km
本格的に海外を走り始めて4年、年500kmのペースで世界の魅力的なトレイルを駆け巡っています。
山本来の魅力を肌で感じることが好きで、有名な大会よりかはニッチでテクニカルなコースを選びがちです。
Swisspeaks 360km(Walker's Haute route)、UTMR 170km(Tour Monte Rosa)など完走。
2020年も日本で知られていない世界各国の魅力的な山・トレイルに出逢うこと。

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