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2023年8月15日

ゆっきー

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Cervino Matterhorn Ultra Race レースレポート

先月のブログで紹介したCervino Matterhorn Ultra Race(173km/12,000m+/制限62時間)に参加してきましたので、今回はその報告をしたいと思います。

結果として、53時間で完走することができました。これまで数多くの100マイルレースを経験してきましたが、今回の大会が最もエキサイティングな体験ができたと実感しています。

この大会はトレラン初心者の方にはお勧めできません。なぜなら、事故や怪我につながるリスクが高いからです。従って、トレラン上級者の方だけが参加するよう強く推奨します。

その理由はこのブログを最後まで読んでいただければご理解いただけるかと思います。

上級者レベルの指標として、ITRAのMountain Levelをもとにお話をすると、この大会は12となります。

私の経験上、この大会を完走するためには、最低でも同レベル10以上の100マイルレースを完走するスキルがないと、このレースを完走するのは難しいと感じます。
 

 

以下、100マイルもしくはそれに該当するMountain Levelが10以上の大会となります。これらの大会を完走するレベルがこの大会には必要最低限求められます。

Ultra-Trail Snowdonia by UTMB (GBR)
Ut4M 160 Xtrem (FRA)
Grand Raid du Guillestrois (FRA)
Échappée Belle (FRA)
Le Grand Raid de La Réunion (FRA)
Adamello Ultra-Trail (ITA)
TOR130 Tot Dret (ITA)
Swiss Peaks (CHE)
Ultra Tour Monte Rosa (CHE)
Trail Verbier St Bernard by UTMB (CHE)
Pirin Ultra (BGR)
Rinjani 100 (IND)
ALTRA100 (PHL)
SKY ULTRA PICO (MEX)

ちなみにUTMBのMountain Levelは8となり、恐らくUTMBを完走した経験があっても、この大会を完走できる確率は低いと私は感じています。

レースの所感について、大きく3つのポイントでまとめていますので、今後の参考になればと思っています。

ポイント1
走れる・走れない区間が混在

この大会は、走れる区間と走れない区間が混在したコースであることが特徴です。

走れる区間もあるので、この区間でしっかり走ることができれば、関門時間も62時間と比較的緩いため確実に完走することができます。

以下、プロフィールをもとに詳細を説明すると、標高3,000m前後のピークすべてが峠越えであり、比較的テクニカルな山頂直下の急登や山の稜線を走ることはありません。

3,000m前後の峠を7本越えなければならない

但し、3,000mの峠越え付近はガレ場や岩場の箇所が多数あるため、通過にはそれなりの時間がかかります。

スタート後最初の3,000mの峠の下り

加えて、氷河や雪渓区間が多数あるため、ここもアイゼンを装着して時間をかけて慎重に進む必要があります。

アイゼン装着の上ゆっくりと進む
スタート後2本目の3,000m峠の周辺

これら以外に、上記プロフィールでフラットに見える区間の多くはトラバース区間となり、以下写真の通り断崖絶壁が多く慎重に進むことが求められます。

100km過ぎのトラバース区間

このようにテクニカルな区間がある一方で、走れる区間も数多くあります。

標高が2,000m前後になると以下写真のようなトレイルも数多くあるので、このような区間でゆっくりペースでもいいので歩くことなく走り続けることが必要となります(コース前半は比較的関門が厳しいため)。

 

但し、この大会において一定ペースで走り続けることは容易ではありません。

なぜなら、1,000m前後の高低差を登って下ってを繰り返さなければならないからです。特に100kmを超えてからが一苦労で体力が消耗した中で、1,000m以上の高低差を一定ペースで走り続けることはかなり難しいことです。

このレースで最後の登り区間であるスイス・ツェルマットからイタリアの国境があるTheodul Passまでの1,800mの登りにおいて、峠越えをするのに5時間もかかってしまいました。

高低差のあるコースを長時間動き続ける練習を、常日頃からトレーニングしておく必要があります。

私はこのような高低差のある大会に出るときは、ロングトレイルの練習ではなく必ず富士山もしくは甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根など高低差に慣れるトレーニングを必ず行うようにしています。
 

ポイント2
主催はイタリアだが開催場所はスイス

このレースはイタリア主催の大会となり、イタリアとスイス2カ国をまたぐ大会となります。

しかしながら、以下プロフィールの通り全コースの3/4はスイスを占めており、前半30kmとゴール手間10kmはイタリア領域ですが、それ以外はスイス領域を走ります。

 

なぜ、スイスとイタリアの違いに言及するのかというと、イタリアとスイスの大会においてのホスピタリティに大きな差があるからです。

具体的には、エイドでのボランティアの対応と食事の提供に大きな差があります。

イタリアでは、エイドに到着するとボランティアの人が積極的に声をかけサポートをしてくれます。

一つ具体例をあげるなら、椅子に座っていれば飲み物の補給など全てボランティアがサポートしてくれることです。

一方、スイスのエイドではそのようなことはほぼありません。ボランティアからランナーに声をかけることはなく、自らエイドで補給する必要があります。

加えて、エイドで提供される食べ物などを比較しても顕著な差が見られます。

イタリアではパスタなどの温かい食べ物が提供されますが、スイスでは簡易的な食べ物(パンとハム、チーズ、ナッツ、フルーツなど)が主体となります。

従って、ドロップバッグに主食となる食べ物(ご飯や麺類など)を入れておくことが必須となります。

最後にコース上(主に峠付近)でのサポート体制を比較してみると、イタリアではレスキュー隊やボランティアが配備されていますが、スイスではボランティアが配備されることがありません。

今回の大会でもスイス側に入って以降、残念ながらコース上にスタッフは誰一人いなく、マーキングを頼りにレースを進める必要がありました。

この大会に限らず、これまで多くのスイスの大会に参加した私の経験上、イタリアのレースと比較すると、この差は必ず見られます。

これは、スイスとイタリアの文化や価値観の違いによるものであり、私はこの違いに慣れているので、全く違和感は感じませんが、初めての方はこの温度差にかなりの衝撃を受けると思われます。

イタリアの大会で有名とされるトルデジアンなどホスピタリティの高い大会が好きだという人には、この大会はあまりおすすめはできないかもしれません。
 

ポイント3
DNFリスクを100%排除し挑むこと

この大会は万一DNFをした場合、スタート地点のイタリアに戻るのに時間がかかるということです。

もしスイス側でDNFとなると、基本的には実費で電車やバスなどの交通機関を使ってイタリアまで戻る必要があります。

具体的に以下地図をみると、本レースはスイスとイタリア国境沿いは4,000m級の山塊を越えるため、国境間の移動する交通機関が限られています。

仮にスイス・ツェルマットでDNFした場合、スタート地点に戻るまでは車でも3.5時間かかってしまいます。

 

UTMBなど大規模な大会でDNFをした場合だと、大会側が手配したシャトルバスを使ってスタート地点のあるシャモニーに戻ることができます。

この大会で、実際に周りの選手をみてみると、私と同様にサポートを帯同させている選手がほとんどいませんでした。

なぜなら、サポートする側も移動が大変となるためです。この大会に挑むには基本的にはサポートを受けずに一人で完走することが求められます。

◇     ◇

この大会に参加したランナーと話をすると、前述したMountain Levelが10前後の大会を経験されている方が多く、私と同様テクニカルな嗜好を好むランナーが集まった大会であると感じました。

テクニカルな大会が好みではない方でも、トレランを通じて自身を成長させたいと思っている方にはお勧めできる大会です。

過酷なレースに挑んで完走すると、視座が広がり結果として自身の価値観を磨くことにつながります。この経験がトレラン以外の日々の生活(仕事など)において好循環が生まれます。

私は、リスク・時間・お金をかけてでも、こういった大会に出ることは十分価値があるという考えを持っています。

◇     ◇

私の次のレースは、今月末に開催されるTDSとなります。元々は2020年にTDSにエントリーしていましたがコロナの影響で中止となり、今回エントリー権行使のため参加します。

来月のブログではTDSについて書く予定です。噂によるとUTMBより難しいと言われていますが、どれほど難しいのかうまく言語化して報告できればと思っています。

PROFILE

ゆっきー | Yukihisa Nakamura

海外のトレイルレース延べ2000km
本格的に海外を走り始めて4年、年500kmのペースで世界の魅力的なトレイルを駆け巡っています。
山本来の魅力を肌で感じることが好きで、有名な大会よりかはニッチでテクニカルなコースを選びがちです。
Swisspeaks 360km(Walker's Haute route)、UTMR 170km(Tour Monte Rosa)など完走。
2020年も日本で知られていない世界各国の魅力的な山・トレイルに出逢うこと。

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