ハセツネ2014レポート&考察



2014年のハセツネが終わりました。このレースは他のトレイルランニングレースとも少し意味合いが異なり、各ランナーのベンチマークつまり毎年の成績表的な意味合いがあるレースで、多くのランナーがタイムを普段より意識して挑むレースかと思います。桑原は今年2回目のチャレンジ。タイムは12:17と目標としていたサブ12に届きませんでしたが、2回目にしてポイントがつかめた部分もあるので、来年”サブ11”を目指すという目標に向けて自分の考察をシェアして行こうと思います。いつもの通り経験豊かなランナーや速いランナーの方には釈迦に説法だとは思いますが、これからのタイム向上を狙う方や初参加を考えている方の参考になれば。

◆大きなポイントは「第1関門まで」と「脱水対策」

個人的にはここがハセツネ対策の8割を占めているのではないかと思います。ハセツネは総距離71.5km・累積標高が4800m。数字だけで似たコースプロファイルのレースをあげると2013年のIzu Trail Journey(ITJ)が75km(直前のブリーフィングで公称の71.5kmでは無く75kmであることが発表された)・累積標高4200mと割と近い感じです。乱暴な言い方をするとちょっと距離長くして、山一個減らした感じです。まぁ、そもそもトレイルランニングのレースをコースプロファイルだけで比較するのは乱暴な話でもあるのですが、多くのランナーが語る両レースの印象は大分異なります。ITJが「走りやすいコース」と言われるのに対して、ハセツネは「とにかくきつい」と言われ、その違いは単純に山一個分ではすまなそうですw その差を生み出しているものが何か?それが、ハセツネの第一関門までの区間までだと思います。

ハセツネの序盤の特徴は「昼1時スタート」「激しいアップダウン」「渋滞もしくは渋滞回避のためのハイペース傾向」。これにノーエイド・ノーサポートという条件が加わります。タイムを狙うためにはスタート直後の日が高い時間にコースで最も負荷のかかるパートをハイスピードで進まなければいけなません。急登で上がった心拍数をおさめる間もなくフラットと下りの区間を走ることの連続はかなり負荷が高く、それに昼のスタートという条件が追い討ちをかけ、非常に脱水症状がおきやすい条件だと言えます。

◆2012年大惨敗の初ハセツネ

実際僕は初参戦の2012年、自分の脚力もわきまえずスタートダッシュをし、周りのペースに完全に我を失い、入山峠を確か65分くらいのサブ12ペースで入り(当時の僕はサブ15~16くらいのレベルだったのではないかと思います)、その先の醍醐丸までに完全に足が終わり攣り始めました。命からがら第1関門の浅間峠に4:35でつきましたが、その後のフラット区間で気持ち悪くなり、嘔吐を繰り返すという脱水の症状が出て、道ばたで休んでは進みながらなんとかたどり着いた三頭山避難小屋で大休止、月夜見の関門を時間ギリギリに通過。ゴールが21時間55分という、ほろ苦というか甘酸っぱい(もちろんゲロと胃酸の味)のデビュー戦となりました。

◆同じコースでも負荷が違えば体への影響も異なる

今年は、スタートから第1関門までを2回試走。9/27にサブ17ペースの試走会のアテンド(トータル5:00)と、10/1にサブ12ペースの個人の試走(トータル3:30)を行い、体感的にサブ12ペースが頑張りすぎず緩めすぎない”分相応”のペースと感じました。ただ、試走会の際は汗っかきの自分が汗一つかかなかったのに対し、個人の試走は曇りで試走会の時より涼しい気候だったにも関わらず大量の発汗。帰りのバスでも吐き気がしている状態で「あぁ、これは本番も脱水から来る攣りと吐き気には注意だな。」と思わされました。尚、試走時やレース時のペースメイクはSTUDIO KEG NETさんの「ハセツネ攻略MAP」が非常に役に立ちました。

hasetsune2014omote_600

◆そしてレース本番、問題の第1関門まで

試走で自分の”分相応”のタイムがサブ12とわかり、渋滞等も加味して浅間峠は試走+10分の3:40を目標にレースに入りました。それぞれのラップタイムは、入山峠が65分(目標±0分)、市道分岐が118分(目標+3分)、醍醐丸が150分(目標±0分)、浅間峠が220分(目標±0分)と自分でもよくできたというくらい目標を奇麗にトレースできましたw

ただ、渋滞を加味して試走より10分ほど遅いペースで第1関門に到着したにも関わらず、攣りの予兆や吐き気は試走の時より強かったです(三国峠付近で1回コムレケアを摂りました)。これはレース本番は集団の流れの中で自分のペースが作れなかったり、前のランナーを抜く際にペースをあげたり等の要素があるからだと思います。

他に目を向けると、第1関門までのコース上には2年前の自分のように醍醐丸以降のピークのベンチに腰掛けて休憩やストレッチをしているランナーも多くいましたし、知人友人でも脱水からペースダウンしているランナーも多くいました。例えばレース中、僕は友人のAさんに三国峠付近で追いつきました。彼は非常に辛そうで「足が終わりました。」と言っていました。彼の目標はサブ13。僕のペースから考えると、Aさんはサブ11前後のペースでここまで進んできたことになります。ハセツネあるあるの一つのシーンだと思います。(Aさんはその後持ち直し、14:30くらいで見事ゴールされました。)


– 市道分岐手前、余裕はあるがかなりの発汗量。Photo from 疾走写真館

◆第1関門〜ゴール

第1関門でヘッデンの装備や水分・ジェルの補充(ザックの背面からフロントポケットへ)、アームウォーマーの装着等をし、10分後にスタート。そこから西原峠まではゆるい上りとフラット区間の繰り返し、2年前は撃沈したパートですが今年は突っ込みすぎずに入れたため、それなりのスピードで入れました。ただ、フラット区間と言っても、片斜面で根っこの張った部分も多く派手にすっ転び、その勢いで両足を攣りました。転倒と攣りでで集中力が切れペースがダウン。西原峠には目標+10分くらいで到着。

そこからは大沢山と三頭山の上り、それなりの斜度ですが思いの他ペースは落とさず上れました。が胃の不調と心拍が上がったため、大沢山の山頂で3分休憩し胃薬を投入。大沢山を下ると三頭山避難小屋、ここまで来ると三頭山山頂はすぐ。山頂では休憩をせずそのまま鞘口峠へ向かう下りへ。ペースを落とすことなく、月夜見到着。タイムは447分(目標+12分)。第1関門での装備チェンジ・休憩と西原峠までのペースダウン分が目標に対して遅れた要因かなという感じ。

10425048_564831750284091_8313217707806361366_n
-第2関門にて photo from Jacky Boy Slim

月夜見では失われた電解質を取り戻すべく、水750ml、ポカリ750mlを補給。ジェルを補充し5~6分くらいのストップで出発。休憩でかなりからだが回復したのか、エイドを出てからの下りとフラット区間は結構いいスピードで進み、御前山の上りもきついものの足を止めずに進めました。その後の大ダワへの下りは前が詰まって数人のパックができていたため、あまりスピードを出せず。ちなみにこのくらいの頃には攣りや吐き気もおさまり割りといいコンディション。

大ダワ〜大岳までのフラット〜ゆるい上りの区間も走って進みます。大岳を越えて岩場の下りでまた少しつまりタイムロス。岩場が終わってからの下り〜綾広の滝〜御岳までの上りは調子が出てきてスピードが上がります。

第3関門御岳は635分(後で目標タイムと比べると+25分だった)。ノーストップで先に進みます。残り13kmで12時間まで残り85分。日の出山の上りがあるけど、下り基調なのでキロ6分で行ければなんとかサブ12。ここまでのペースを考えるとギリギリ行けるかどうか?と言うところ。日の出山山頂で残り11km、70分。よっしゃ金比羅尾根を爆走!!と意気込みましたが、ヘッデンの電池が切れ、足も止まり、集中も切れて、最後の最後はほぼ歩きw 結果12:17分でのゴールとなりました。

後から気づいたら大岳以降はペースが良かったため、ここまで40分に1回しっかりしていた補給を忘れていましたw (ゴール後ジェルが3本くらい余っていた)NAOのバッテリー設定も含め最後はマネージメント不足を痛感しました。

1604741_10152869132960649_5516339336665293233_n

◆レースを終えて

終わっての完走はサブ12に届かなかった悔しさはあるものの、個人的には満足しています。4月のUTMF以降トレイルに練習で入ったのは2回しかなく、正直圧倒的に練習不足でレースが始めるまでは不安だらけだったので、想像以上に走れたなと言う感じ。やはり、直前の第1関門までのレースイメージでの試走で自分の”分相応”をつかめ、本番でつぶれず余力を残せたのが大きかったと思っています。前回あれほど果てしなく感じた三頭山山頂や御前山山頂が今回はそこまできつく感じなかった。いや、きついんですけどねw

ハセツネのきついと言われるポイントは第1関門までの他に、三頭山の上り、御前山の上りがあげられますが、これらの上りは単発で考えると、数多くのレースを体験しているランナーにはそれほどきつい訳でもなく、第1関門までの疲労や脱水から来る攣りや吐き気、更にそこから派生する補給不足、タイムに追われるプレッシャー等が総合して感られるきつさが、三頭山や御前山をよりきつくしているのではないかと思いました。

◆次回以降ハセツネに向けて調整するなら

自分なりに今後ハセツネを攻略するとしたら以下の点を重視します。

1)高低差のあるトレイルや心拍数の上がるトレーニングによる走力のベースアップ
2)ある程度コンディションの整った状態で、スタート〜第1関門までをレースペース(71.5km走りきる前提)で試走。自分の”分相応”のペースやポイント通過のラップを体で感じる
3)スタート〜鞘口峠までを試走(レースペースの80~90%)、第1関門通過後の疲労状態を味わいながら西原峠までのフラット区間や三頭山の上りを体験する
4)御岳山〜ゴールまでナイトトレイルの練習。金比羅尾根は微妙にテクニカルなのでヘッデンをつけてハイスピードで走るには練習が必要。時間に余裕があれば鞘口峠からナイトランをすることで、風張峠付近、大ダワと言った他のテクニカルな場所も経験することができると同時に、集中力が落ち、疲労がたまった状態で金比羅尾根を経験できるので尚よし

ちなみに、この中で僕は今回ハセツネに向けての練習は2)しかできませんでした。ただ、そこで自分の”分相応”のペースをつかめたことで、大崩れをせずに走りきることができました。とにかく”分相応”、これが大事なのではないかと思います。来年サブ11を目指すに当たっては第1関門までの”分相応”のタイムをあげることを引き続き最重要ポイントとして行こうと思います。

ということで、本番が近づいても練習を十分につめていない、でもなんとかしたいという方には、レース前に自分の現状をはかり、レース時のペースをつかむという意味でも、第1関門までの試走をお勧めします。

ただ、関東以外からの参加の方には試走は中々難しいと思います。そういう方は自分のホームトレイルで似たプロファイルのところを探したり、後は自分のLT値等をはかり、トレイルにおいてどれくらいの心拍数で自分がどういう状態になるかを体感で覚えておくとレース中にも役に立つのではないかと思います。ちなみに第1関門までは22.66km、累積標高は約1750m。上り基調で細かいアップダウンのコースです、参考までに僕の試走時のデータを張っておきます。 http://www.movescount.com/ja/moves/move41961183

3)4)は今回のレースから感じたこと。第一関門まででばてないペースで行きましたが、それでも西原峠までのややフラットな区間でペースを落としたし足も攣りました。三頭山手前の大沢山では3分休憩し、第2関門に予定の10分遅れで入りました。また、金比羅尾根は、以前チーム100マイルの練習で鞘口峠から走った際には気持ちよく爆走できたけれど、今回は集中力の低下・疲労・ナイトランでトレイルがつかみにくかった等の要因で完全にブレーキになってしまいました。

◆補給に関する考察

補給に関しては普段から多汗で水分摂取の多い自分は第1関門までに1.5ℓ、第2関門までで1.5ℓ、合計3ℓの手持ちをすべて飲みきりました。自分的にはこの水分量は過不足無い(今回は気候がよくあまり水分を摂らなかったという方も多かったが)と思いましたが、内容が全部麦茶だったため(通常のレースではそれで問題ないのだけど)次回ハセツネは半分を電解質系のドリンクにしてみようと思います。

また、レース前のウォーターローディング、電解質ローディング等、脱水のケアをより意識しようと思いましたし、今回は筋疲労回復系のサプリメントを持っていかなかったため今後はその辺を突き詰めたいです。攣った後のケアとしてはコムレケア1回飲みましたが、もう1回分くらい持っていても良かったかなと思いました。後、VESPA。今回浅間峠までに2回摂取しましたが、VESPAは脂質代謝を促してエネルギーにする反面発汗も促すので前半では使用を控え、気温も下がって脱水のリスクも下がる後半の起爆剤として使用した方がいいのかなと思ったりもしました。この辺の補給に関しては様々な状況で使ってみて体感として覚えるしかないですね。

◆装備

シューズ:adidas adizero XT4
ソックス:DRYMAX Lite Trailrun mini crew
ショーツ:Patagonia Strider Pro Shorts – 5″
パンツ:Arc’teryx Phase SL Boxer
インナー:ONYONE ブレステックPP N/Sアンダー
Tシャツ:Arc’teryx Phase SL crew SS
キャップ:Patagonia Duckbill Cap
アームウォーマー:Finetrack フラッドラッシュアクティブスキン
ウインドシェル:MHW Ghost Whisperer Hooded Jacket
レインシェル:OMM Aether Smock
ザック:Ultimate Direction SJ Ultra Vest
ボトル:Raidlight Bottle Raid(750ml)x2
ソフトフラスク:Hyrapak SF750(750ml)x2
ライト:Petzl NAO 2(頭)Silva Trailrunner2(腹)
ジェル:メダリストx18、ウイダーインエネイドx2、VESPA HYPER x5

気候がよくウインドシェルとレインシェルは使用せず。アームウォーマーもほぼおろしたまま。
ライトはNAO2の自動調光による持続時間の長さを重視したけれど、大岳手前で光量低下。調整をもう少し調整する必要があった。TR2は拡散光で腹につけて足下を広く照らすには最適。ただ、やはり電池の減りが早いので、必要ない場面ではオフにする等マメな節電が必要と思いました。が、この組み合わせは突き詰めれば自分の定番になると思います。

E36AHR-NAO_LowRes

Trail_Runner_II

以上、桑原の ハセツネ2014レポート&考察でした。来年は自分の考察を証明するためにも、頑張ってサブ11を達成したいです。