100マイルなんてカンタンだ(ちょっとウソ)④
Vol.4 毎朝。朝食前。最低30分。
さてさて、ウルトラを走るためのカラダ作り、①、②、③とお読みいただきました。ここまでの内容を要約しておきましょう。
- 息がゼーハーする強い運動強度では長い距離を走れません。
- 強い運動強度は到達距離を犠牲にします。
- 長い距離ほど息の荒れない低い運動強度で走りましょう。
- それを有酸素運動といいます。
- 有酸素運動の燃料は糖質ではなく脂肪です。
- 脂肪は体内にたっぷり蓄えてあります。
- ウルトラはレース途中でエネルギー補給が必要です。
- 糖質は代謝効率が悪く、摂取量と回数を多くしなくてはなりません。
- 運動中に食べることは、自律神経的にカラダに大きな負担です。
- 吐き気、下痢、食べられない、など多くはそれが原因です。
- だから体内に蓄えてある脂肪をエネルギーとして使いましょう。
- カラダに負担なく、安全に、疲れず、走り続けることができます。
- 低い運動強度で(有酸素運動レベル)速く走れるカラダになろう。
- 糖質ではなく、脂肪を燃料にして走れるカラダになろう。
- その代謝改善、走力アップの方法がマフェトン走です。
- その効果はUTMF9位礒村真介さんが証明しています。
100マイルを笑って走りたいならマフェトン走、(180-年齢)±5 の心拍数を保って走るトレーニングなのです。
目次
安静時心拍数
さあ、行くよ。心拍計を用意していただきたい。いまどきの心拍計は光学式といって手首の毛細血管のヘモグロビン流量から心拍数(1分間の心臓の搏動数)を計算するもの。心拍計の裏面(ピカピカ流量読みとり器)が手首に密着してないと「びっくり心拍数」「読みとれない」が起きます。時計のカタチをしてるけど,そのときは時計じゃありません、計測するときは(走るときは)ベルトをきつめに。
安静時の心拍数を測ります。横になって3分、おとなしくしています。3分後の心拍数があなたの「安静時心拍数」。計測日時とその数値を記録しておきましょう、とても大事ですから。
±5の違い
180-年齢。あなたが30歳なら男女問わず180-30=150、35歳だったら145です。あなたがすでにトレラン経験豊富な本気のレーサーで、トレーニングでも大会でもうまく走れているなら「プラス5」です。すなわちマフェトン走の心拍数は30歳は155、35歳は150です。
山も町も走るのは楽しいから、が最大の理由。年に1〜2回は大会に出るけど表彰台を狙っているわけじゃない。そんなあなたなら「プラスマイナスゼロ」、30歳/150、35歳/145そのものの心拍数で始めましょう。
長期にわたって、体調不良、リタイアすることが多い、レース成績が悪い。だったらは「マイナス5」。30歳/145、35歳/140をキープです。
あなたの心拍数はいくつでしょう? その数値を信じましょう。じわじわと効いてきます。あなたを速く、長く走らせてくれます。
1km以上のコースを設定しましょう
自宅の近くにマフェトン走コースを設定します。
- フラットな1km以上のループあるいは往復ピストンのコース。
- 急坂や階段なし、踏切や信号、車道横断がないことが理想です。
- 公園のランニングコース、川沿い、河川敷などがいいかも。
- 早朝、朝食前、3周(3往復)などと条件を同じにして走ります。
- マフェトン心拍数を保って最低でも30分は走り続けましょう。
- 毎日のように走ります(強度が低いので疲労は少ないはず)。
- 周回、往復のたびにラップ(区間所要タイム)をとってください。
- ウォームアップとクールダウンにそれぞれ12~15分を。
マフェトン走はゼーハーしない有酸素レベルでの出力(走スピード)を高めるためのトレーニング。同時に糖質エネルギーに偏っていたカラダを、脂肪をエネルギーにする(脂質代謝)カラダに改善することです。だから糖質エネルギーがすっからかんの寝起き(朝食前)に走りましょう。体内に糖質がないのでカラダはいやでも脂肪をエネルギーとして使います。また、運動が終わったあとも、その日、脂肪代謝が続きます=本来の目的ではないけれど、笑っちゃうくらい楽ちんなダイエットです。
ラップタイムと安静時心拍数
ラップタイムこそが、トレーニング効果のあるなしを教えてくれます。週に一度は見比べてみましょう。タイムは良くなっていますか?(=同じ心拍数で速く走れるようになっていますか?)。その心拍数とペースを保って継続時間は延びていますか。また、安静時の心拍数が低く(50が48とか45に)なっていますか。いずれかがYESなら(複数YESならさらによし)上手にトレーニングできている証拠です。
あなたの有酸素運動出力が大きく大きくなってきている証拠です。
心拍計には最大酸素摂取量(VO2Max)を表示してくれるものもあります、その数値も大きくなっているはずです。
繰り返すけど、マフェトン走トレは脂肪代謝のカラダ作りを目ざすものです。脂肪をエネルギー源にすれば、有酸素運動の出力が上がり、速く走れるからです。まさにファットアダプテーション。
なので、走トレとともに3食の食事も見直しましょう。糖質は避けます、減らします。現在のあなたがどのような体組成であるかわかりませんが、最初は糖質制限が適切かもしれません。マフェトン博士は糖質・タンパク質・脂肪のカロリー比率を4:3:3にしましょうと提唱しています。
あなたは糖質さん、脂質さん?
もし、あなたがこんな人なら、糖質をエネルギーとして生活/運動しています。
- ニコニコ・イライラ、感情の起伏が激しい。
- デスクワークや会議など、すぐ飽きる、じっとしていられない。
- お腹が空いているわけでないのに、甘いものがほしくなる。
- 食後に眠くなる。
糖質エネルギーは血糖として体内を巡ります、インシュリンの分泌でその量が左右されてしまいます。また、体内の貯蔵量も少ないので、次々と追加しないといけません。そんな人が糖質さん、ウルトラはもちろん100km以下のレースでも上手に走れません。
そんな人こそ、マフェトンの伸びしろがあるってことです。前途洋々、マフェトン走で脂肪代謝のカラダに改善しましょう、脂質さんになってウルトラを笑って走りましょう。
あ、大事なこと。Vol.3 で説明したけど、人によってはマフェトン心拍数を保つとゆっくり過ぎて不快かもしれません。しばらく我慢です。だんだん速く走れるようになります。最初からそこそこ速く走れる人は、持続時間を気にしましょう。そのペースで長く長く走れるようになります。
山では心拍数を一定に保つのはむずかしいので、ちょっとくらいなら心拍数をオーバーしても気にしないで。
トレーニング効果を実体験できて(脂肪代謝のカラダになって)半年くらいしたら、20~50kmの短いレースに出てみましょう。もちろん、ゼーハー走るのではなくマフェトン心拍数+5とか、+10くらいの心拍数を保って、です(*)。
次回は《マフェトンQ&A》。
このブログで質問に答えます、「わかんない」「ヘンじゃん」と思うこと、こちらにお寄せください
*Vol.3 礒村真介さんは2008年に+20で生まれてはじめて山岳耐久レースを走って139位、2013年は同じ+20で走って47位。ハワイの「HURT 100」を+5で走って4位。12年のUTMFも+5で9位。