SOUTH-南米編- ⑧アルゼンチン横断(メンドーサ〜ブエノスアイレス)
星野さんの南米自転車旅行の第8回です。
今回はアルゼンチンを横断してブエノスアイレスまでの道中とそこでの滞在記です。謎のパンクに悩まされたものの、大都会でいろいろとサッパリしたようですね。
これまでの SOUTH-南米編- は以下リンクからどうぞ。
①プロローグ
②出国~ボリビア(ラパス)
③ボリビア(コパカバーナ)
④ボリビア(ウユニ塩湖)
⑤ボリビア(宝石の道)
⑥チリ(入国~サンティアゴ)
⑦アルゼンチン(入国~メンドーサ)
2023/2/12(38日目)
後ろ髪を引かれまくりながらもブエノスアイレスに向けてメンドーサを出発。
Googleマップで検索するとブエノスアイレスまでの総距離は約1000kmほど。ルートは国道7号線をひたすら東に向かって走っていけば良さそう。
150kmほど先にラパスという今旅の始点と同じ名前の街があったため、とりあえずそこを今日のマイルストーンとした。
街を抜け国道に出る。さすが首都までの大動脈だけあって大型トラックを含めそれなりの交通量。ただ片側二車線だし路側帯も広いので、かなり走りやすい。また道路沿いにはブエノスアイレスまでの距離がカウントダウンされているので、走行距離の目安になる。
距離表示と時間で換算してみると巡航速度は20km以上出ている。約40kgを積載した私のバイクにしてはほぼ最速に近いスピードでグングン距離を伸ばしていく。
2時間ほど走ったところで、道沿いに大きなスーパーがあったので小休止。
朝のうちは涼しくて走りやすかったけど、陽が高くなるにつれて気温はどんどん上昇していき、昼過ぎには35℃を超えた。堪らずガソリンスタンドに逃げ込む。
アルゼンチンのガソリンスタンドには(少なくとも私の見た限り)必ず店内に冷房の効いたカフェと売店があるので、本当に助かる。
キンキンに冷えたコーラでリフレッシュして、さー、行きますか!とバイクに跨ると何とパンクしている…。膝から崩れ落ちそうになるのをグッと堪え、日陰になる場所にバイクを移動。タイヤを外してチューブを点検しても原因が分からない。幸いタイヤには損傷がないので原因の追求は宿に泊まった日にゆっくりやる事にして、取り急ぎ予備のチューブと交換して再出発する。
※原因は後日判明するので後述
ラパスの街には17:00頃着いた。暑さと疲労でかなりヘロヘロだったので、適当な宿泊場所がすぐに見つかることを祈りながら国道を降りると何と目の前の公園にキレイなテントサイトが!しかもホース付きの水道まである。
他のサイトでも家族連れやカップルがデイキャンプを楽しんでいる。
そうと決まればやる事は一つ。急に元気になった脚で最寄りのキオスクまで走り愛しのメンドーサのIPAビールをゲット。光の速さで公園に戻って、靴だけワラーチに履き替え、洗濯も兼ねて服を着たまま全身にホースで水をかける。身体中の汗と熱が一気に流されていく。
Tシャツを抜ぎ一絞りしてバイクのハンドルに干したらもう待ちきれない。1本目のビールは立ったまま飲み干した。
喉と身体がとりあえず潤ったところで、テントを設営し中で服を着替えていると急にパラパラとテントを叩く音がする。夕立だ。しかも雨の勢いはどんどん強くなり、最終的にバチバチと雹(ひょう)が落ちてきた!
いやー、ギリギリ間に合って良かったーとテントから外を見ると、さっきまで外で楽しそうに飲んでいたカップルも堪らず建物の影に避難している。
幸い、雨は1時間もせずにあがった。テントからカップルの様子を伺うと、今度は一枚のバスタオルに2人で包まったまま抱き合っている。アルゼンチンの夕立は気温は下げるけど、恋は暖めるらしい。
2人の邪魔にならないようにコソコソとテントを這い出し、すっかり過ごしやすくなった芝生の上で改めて宴会開始。
夕焼けが美しい。
【本日の行程】
メンドーサ~ラパス(144km)
2023/2/13(39日目)
4:30 日中の暑い時間の走行を減らすべく、未明に出発。今旅では初のナイトライド。今までは景色を楽しみたいのと、路面状況が不安なのとで、必ず明るくなってから出発するようにしてたけど、国道は景色が変わり映えしない一方で、街灯がしっかりあって路面はよく見えるので、夜間も安心して走ることができる。
東に向かって走っているので、夜明けを地球の最前列で見る事が出来る。
国道沿いのカフェで朝食
未明から頑張ったお陰で昼過ぎには100kmを越えた。ただ流石に疲れたので直近のサン・ルイスの街を今日のゴールに決める。
ところが街に入る直前で前輪の空気圧が下がり始める。タイヤをチェックすると、マキビシのようなトゲのある植物の種子のようなもの(以下「マキビシの実」と言う。)が刺さっている。とりあえずスローパンク状態で自走は出来たので、その場では抜かず街へ入ってしまう。
幾つかホテルが並ぶストリートを見つけたので、清潔感とボロさのちょうど良さそうなところに勘で飛び込むと、ちょうどオーナーが変わり、内装をリノベーションしたばかりで、何と私が新装オープン後、最初のお客だという。
値段は一泊3500ペソ(2500円)と決して安くはないけど、これも出会いかと思い、チェックイン。ドミトリー部屋を広々と一人で使わせてもらう。
改めてタイヤを外してマキビシの実を除去。チューブの穴もパッチで塞ぐ。
夕食はスーパーで買った肉とワイン。ステーキソースはアルゼンチンでは定番のチミチョリソース。酸味と辛味がバランス良く効いていて肉料理にピッタリ♪
【本日の行程】
ラパス~サン・ルイス(119km)
2023/2/14(40日目)
朝食付きだったので、すっかり仲良くなったスタッフと朝ご飯を食べてから出発。
南米では、午前中は風が無いことが多いんだけど、今日は朝からガッツリと向かい風。自然には逆らえないので、ギアを一番軽くしてジリジリと進む。
微力は決して無力ではない。少しずつでも進めばいつかは辿り着く。
休憩に入ったガソリンスタンドで入口にWi-Fiの表示がある事に今更ながら気づく。おっ!と思い、飲み物を買いがてらスタッフに確認するとアッサリとパスワードを教えてくれた。
そういえば昨日入ったガソリンスタンドには長距離トラックのドライバー達向けにシャワーもあった。売店にはビールも売ってるし、広い駐車場にはテントが張れそうな木陰のフラットだらけ。これはアルゼンチンでのキャンプツーリングのベストソリューションを発見してしまったかもしれない…。
9時間かけて90km地点のピジャ・メルセデスに到着(時速10km…)。ここまで走りながらガソリンスタンドソリューション(以下「GSS」と言う。)を更に検証した結果、Wi-Fiはほぼ全てのスタンドにある。一方シャワーは概ね1/3箇所程度。また街中よりも街に入る前や出てからの方が駐車場が広くテントは張りやすそう。ただ食料品やビールは当然街のメルカドやスーパーの方が豊富で安い。なので一旦街に入り夕食の食材をゲットしてから街を出てGSSをキメるのがベストだ。
という事で、今晩の宿は街から1kmほど離れたYPFに大決定。
建物の裏手に砂利の駐車場があったので、そこを設営候補地とする。ちょうどスタッフが掃除をしていたので、念のため「ウノ ノチェ、カールパ、ポルファボル(一泊、テント、お願い」と声をかけてみる。すると満面笑みで「スィ!(いいよ)」と言ってくれたばかりか、「だったらもっと良い場所がある!」とテラス席の目の前の芝生に案内してくれた。
GSS最高か!
テラス先でYouTubeを見ながらダラダラ宴会して就寝。
【本日の行程】
サン・ルイス~ピジャ・メルセデス(90km)
※GSSによりここからの日々はほぼルーティン化したため、デイリーレポートではなく行程とトピックを列記していきます。
(行程)
2/15 ビクーニャ・マケンナ 111km
2/16 ラボウライェ 96km
2/17 ディエゴ・デ・アルベアル 121km
2/18 チャカブコ 162km ※ホテル泊
2/19 サン・アンドレス・デ・ヒレス 111km
2/20 ブエノスアイレス 100km
センチュリーライドをした2/18のみホテル泊。一泊3500ペソ(2500円)。
所要日数は9日間。総走行距離は1051kmとなった。
(食事)
朝は泊まらせて頂いた場所代のつもりでガソリンスタンドでコーヒーとサンドイッチを食べて出発。昼は補給食のクッキーやチョコレート。夜は、ステーキは調理場所や片付けの手間から一旦我慢して、パンチョ(ホットドック)やパスタ。そしてもちろんビールとワイン。
アルゼンチンに入ってからスーパーで大好きなインスタントラーメンを見かけなくなっちゃった…
(シャワー)
結局スタンドのシャワーを使ったのは一度だけだった。一回500ペソ(350円)で店内でコインを買い、シャワールームの入り口に投入すると10分間温水が出てくるシステム。
それ以外の日は、日向でプラティパスに入れた水を頭からザブザブとかける行水作戦でサッパリ。
(気温)
走り始めの2~3日こそ暑くて苦労したけど、後半になるにつれてそこまで気温は上がらなくなった。むしろ夜は10度以下まで冷え込み、ダウンを着て出発した時すらあった。
↑日本のアプリなので表示時刻に12時間の時差があります
(マキビシの実)
憎き原因が分かったところで改めて路面を観察すると、道端の草むらに山ほど生えていた。
コイツらが枯れてカチカチになって路面に落ちてるって自転車乗りにはSASUKEの最終ステージレベルの難ルート。車道の一番端を走り、車道から降りる時も草むらは踏まないようにして慎重に進んだ。結果として原因が分かってからは、マキビシの実でパンクすることは無くなった。
【ブエノスアイレスでの日々】
ブエノスアイレスにはロングライドの休息とこの先の行程の検討・準備のために4泊した。さすが南米屈指の大都会だけあって超高層ビルが立ち並び、行き交う人々にもスーツ姿のビジネスマンが多い。
泊まったホテルは一泊14ドル(2000円)のドミトリー。5階建ての大きな建物で各国のバックパッカーが泊まっていて、毎晩賑やかだった。
スタッフの数も多くて、ご飯も共同キッチンで一緒に食べる。私がステーキを焼いていたら、焼き加減が気になったらしく「私に任せなさい!」と言って自分の調味料をアレコレ使って最高の一品に仕上げてくれた。
ただ部屋が冷房が効きすぎて超寒い。外人達には適温らしいので勝手に設定を下げるわけにもいかず、苦肉の策としてシーツとエマージェンシーシートでベッドにカーテンを作って対策。同部屋の皆には奇異の目で見られたけど安眠には代えられない…
休息日恒例の洗車と洗濯に加えて伸び放題で鬱陶しかった髪を切った。Googleマップで床屋を探して最寄りの店に行き、ちょうど免許の写真が髪を切りたての頃だったので、それを見せたらいい感じに切ってくれた。カットのみ、シャンプーは無しで2000ペソ(1400円)
洗車してサッパリ
洗濯してサッパリ
散髪してサッッッパリ♪
ビフォー
アフター
ついでにヒゲも剃った
【クレジットカードトラブル】
今旅ではクレジットカードはメインバンクのキャッシュカードについているVISAを使っている。アルゼンチンに入ってからキャッシングが一部のATMでしか出来なくなったのは前回のブログに書いたとおり。
ところが、アルゼンチン横断を始めて数日経った頃、今度はスーパーやホテルでの支払いが出来なくなった…。ただ、念のためコンビニ系のカード(こちらもVISA)をもう一枚持ってきていて、今回はそっちが使えたので旅は続けていたのだけど、何故メインのカードが使えなくなったのかは不明のまま。貧乏旅行の私が限度額を超えるはずもないし。
万が一のスキミング被害を懸念して、取り急ぎ日本にいる妻にLINEしてVISAのコールセンターに連絡してみてもらったのだけど、本人以外にはカード情報の詳細は教えられないとの一点張りでとりつく島が無かったらしい。それはそれでカード会社としては正しい対応なので仕方ない。
ブエノスアイレスに着いて直接VISAのフリーダイヤルに連絡したところ、原因が判明した。
オペレーターの説明によれば、VISAはAIが利用者の利用状況を監視していて、普段と違う利用内容を検知するとランダムに利用を停止するシステムになっているとの事。そして利用を再開するには本人がVISAに連絡して依頼するしか無いとの事。
ん~、何だかな~という感じではあるものの、取り急ぎ海外旅行中という現状を説明して、停止の解除および帰国予定の4月中旬まで同様の利用停止がかからないようにお願いした。
いつから本システムが稼働しているのかは聞かなかったけど、今後、海外旅行に行かれる方は念のためカード会社に同様の仕組みがないか確認してから行った方が良いかもしれません。
ちなみに日本のフリーダイヤルへの国際電話はこちらの情報を参考にMy050というアプリを使った。
記事では無料でかけられる事になっているけど、その後仕様変更があったらしく初期設定費用と初回会費で1100円チャージする必要があるのと、認証に数日かかるけど、地球の真裏の営業時間に自分の携帯からかけられる手軽さは非常に便利だったのでご参考まで。
私にとって旅とは移動だ。
チリのサンティアゴを出発して2週間。アンデス山脈を越え、アルゼンチンを横断した1,500kmの自転車旅は本当に楽しかった。
という事で、大都会での休息と観光は終わり。また楽しい移動の旅に戻ろうと思う。
次の行き先は再びアルゼンチンを横断したバリローチェ。そこからチリに再入国して、チャリダーの聖地と言われるアウストラル街道を目指す。
とりあえずバリローチェまではバスワープする事にしたけど、そこから先は例によってルートも行程も移動手段も未定だ。
寄り道こそ我が道。
道草こそ補給食。
その日の気分で走り、食べ、眠る。ただそれだけを繰り返す日々を繋いで、進んでいこうと思う。
(続く)
星野 耕平
でかい波、高い山、長い道が好き。
トレラン歴は約15年。UTMB、Tor Des Grants、Andorra Ultra Trail等完走。
自主イベントとしては自転車日本縦断、歩きお遍路結願等。
座右の銘は「No wave,No life.」
個人ブログ:100mile
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