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2020年8月26日

ユウタ

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自分の汗の特徴に合った水分補給出来てますか?

8月後半に入っても30℃超えの厳しい暑さが続く日本。何もしていなくても汗が出る暑さの中ランニングをすると…結構汗かきますよね。私も日本にいた頃夏に長距離走ってると後半は汗が滴りシューズもビショビショになっていた記憶があります。そんな暑さの中運動する際にパフォーマンスを保つための鍵となるのは水分補給。よく暑い日のレース後半で足が攣ったり頭が痛くなることがあったので自分の水分補給には何か改善点があるはずと以前から感じてました。

Precision Hydration

先月も紹介させて頂いたJason KoopのPodcastで水分補給についての会話(36. Individualizing Your Hydration and Sodium for Ultrarunning with Andy Blow)がとても興味深かったのでAndy率いるPrecision Hydrationの考える水分補給について調べたので紹介させて頂きます。

汗について

汗の役割

そもそも運動中に水分補給が必要なのは汗で水分を失うから。ご存知の方も多いと思いますが汗の役割は汗が皮膚表面から蒸発する際に気化熱として熱を奪い上昇した体温を下げること。余談ですが体温を下げるために汗をかくのは人間や馬などの限られた種類のみのようです。夏はベタベタしたり服が濡れたりと邪魔者扱いされることが多いですが、汗のおかげで人間はオーバーヒートすることなく長距離走り続けられるんですね。

汗の成分

汗の主成分(99%)は水です。また2007年に行われた研究によるとミネラルとしてナトリウム (860mg/L) やカリウム(220mg/L)、カルシウム(160mg/L)、マグネシウム(1.3mg/L) などを含みます。

*運動への順応状況や体内のミネラル組成など様々な条件により変化します

つまり汗をかくことで体内の水とミネラル(塩分)両方を失うことになります。

パフォーマンスを落とさずにかける汗の限界量は?

運動中に失った水分を100%補うことは現実的でない

“During exercise, athletes should start drinking early and at regular intervals in an attempt to consume fluids at a rate sufficient to replace all the water lost through sweating (i.e., body weight loss), or consume the maximal amount that can be tolerated.”

 American College of Sports Medicine,1996

1996年にAmerican College of Sports Medicine(ACSM)が ”汗で失った水分全てを補う” よう提唱していましたが、この通りに従うと1時間あたり2-3L飲まなければいけないことになり現実的ではありません。また大量に水を飲むことで低ナトリウム血症になりパフォーマンスを落とすばかりか最悪の場合死につながるリスクもあります。

体重減少量を体重の2%以下に抑えるべき?

“The goal of drinking during exercise is to prevent excessive (>2% body weight loss from water deficit) dehydration and excessive changes in electrolyte balance to avert compromised performance.”

American College of Sports Medicine, 2007

上記のリスクなどから多くの批判を受けてACSMが2007年に発表したのが ”体重減少量を体重の2%以下に抑えること” と改訂しました。これによると例えば体重60kgの場合1.2kgまでの体重減少に抑えることになります。

しかしこの提言を支持する研究は古く、あくまでも研究室で得られたデータで現場で実際起きていることとはかけ離れていました。そして現在は失われた水分を100%補う必要はない(むしろその方が望ましい)と考えられています。

脱水に関する研究

  1. 2000年代に入ると実際の大会に参加する選手を対象にした研究が行われるようになりました。最も有名な研究の1つとして2009年に2:05:29で優勝したハイレ・ゲブレセラシエがレース後体重が9.8%減少していたというデータがあります。
  2. 2000・2001年に南アフリカそして2004年にNZで開催されたアイアンマンレースで集まられたデータによると早くフィニッシュした選手ほどより多くの体重減少(トップ5の選手で南アフリカでは4〜8%、NZで1〜6%の体重減少)がみられました。
  3. 大会中暑さで熱中症になる選手が多いウエスタンステイツエンデュランスラン(100マイル )の2013年大会で行われた研究ではトップ選手たちは体重が1〜6%程減っていたようです。

※体重減少の内訳は汗が大部分を占めますが脂肪やタンパク質、グリコーゲンなども含まれます

パフォーマンスに影響のない脱水量は?

1.でゲブレセラシエの体重が10%近く減少していたというデータがありますが、これは彼が長年トレーニングを積み重ねてきたことや脱水に対する元々の耐性の高さのお陰かもしれません。現在明確なデータはありませんがPrecision HydrationのAndyはほとんどの人にとって体重の2〜4%の減少は許容範囲内で暑い環境では〜6%くらいまでは正常だろうと話しています。

脱水を予防する方法

発汗で失った水分を効率よく補給するために、ナトリウム(塩分)の血中に水分を保つ作用が重要な役割を果たします。また先述のようにナトリウムを摂取せずに水ばかり飲み過ぎてしまうと低ナトリウム血症のリスクも高まってしまうので注意が必要です。

2015年にスペインで行われた研究によると、中距離のトライアスロン大会(スイム1.9km、バイク90km、ラン21.1km)で大会中に12錠のソルトタブレットを飲ませたグループ(汗で失う塩分の71%を補う意図)と飲まないグループ(汗で失う塩分の20%のみ補う意図)では平均で26分の差が出たことから、競技中に汗で失われた塩分を補給することがパフォーマンスの低下を防ぐために重要であることが考えられています。

実際どれだけの水・塩分を摂取すれば良いのか?

パフォーマンス維持には水と塩分の補給が必要であることは分かりましたが、具体的にどれくらいの量を摂取する必要があるのでしょうか。

汗をかく量や汗に含まれるナトリウムの量には個人差があり、気温や湿度など環境にも大きく左右されるため明確な基準はありませんが、自分が汗をかく量が多いか少ないか、そして汗に含まれるナトリウム量が多いか少ないかなど意識することで効率的に補給を行うことができます。

発汗量の測定

まず運動前にトイレを済ませて裸で体重を測ります。そしてその後運動をし運動後汗をしっかり拭き取り再度体重を測定します。その差からさらに運動中摂取した水分量を引くことで体重の変化(≒発汗量)を推測することが出来ます。

汗に含まれるナトリウム量

汗に含まれるナトリウム量は200mg/L〜2,000mg/Lとかなり個人差が大きくそれは主に遺伝的に決まっているため基本的には1度測定すればその後はもう測定する必要はないそうです。

オーストラリアのSalomonアスリートLucyがテストを受けています

汗の成分測定と聞くとトレッドミルで走りながら測定するのかなと思っていましたが座って皮膚にパッドを置いて汗を採取して成分分析します。元々は塩化ナトリウムを多く含む汗をかくCystic fibrosis(嚢胞性線維症)患者用の検査キットを改良して作成したシステムだそうです。

テストセンターは欧米中心に世界各国にありますが残念ながら日本にはありません。。アジアではシンガポールとタイにあるようです。海外旅行やレースで訪れた際に予約するのも良いかもですね。(カナダはバンクーバーにあるようなので機会があれば行ってみたいと思っています)

テストセンターに行けない方や手軽に自分の汗の特徴を知りたい方向けに無料で簡易的なテスト(質問に答えていく方式)もあるので是非試してみてください(英語のみ)

私の結果が以下の通りです。

FREE Hydration Planの結果画面

昔から汗をかきやすくて運動後には顔が塩で真っ白になるので発汗量と汗に含まれるナトリウムの量共に多いだろうと予想してましたがやはり無料テストでもその結果が出ました。レース前・レース中・レース後、そしてトレーニング中の水分摂取のポイントなど思っていたより詳しいアドバイスがもらえたので今後の水分補給の参考にしたいと思います。

最後に

水分補給の重要性は分かっていても実際テストで自分の汗のことを知っている方はまだまだ少ないと思います。暑い日のレースでパフォーマンスが落ちたり痙攣や胃腸のトラブルなどに悩まされている方は一度測定を検討してみていただくと何かヒントが得られるかもしれません。ご検討あれ!(Precision Hydrationの回し者ではありませんw)

⚫︎参考記事 Precision Hydration

How much dehydration can you tolerate before your performance suffers?

How to START hydrated and why that’s so important.

Why sodium is crucial to athletes performing at their best

PROFILE

ユウタ | Yuta Yamato

整形外科で働く理学療法士(physiotherapist)。サッカー/フットサル漬けの学生生活を経て社会人となり山を走り始める。2013年にUTMF、Tor des geants完走。
2015年から2017年までカナダで生活し帰国後RBRGスタッフとして3ヶ月働く。
現在はカナダでphysioとして働くべく再移住に向けて準備中。

WEB: https://yutaphysio.com

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