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2023年5月11日

Run boys! Run girls!

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SOUTH-南米編- ⑭エピローグ

星野さんの南米自転車旅行は第14回目にして、とうとう最終回です。
最終目的地のウシュアイアに到着してからのお話と旅のまとめです。
これまでの SOUTH-南米編- は以下リンクからどうぞ。
①プロローグ
②出国~ボリビア(ラパス)
③ボリビア(コパカバーナ)
④ボリビア(ウユニ塩湖)
⑤ボリビア(宝石の道)
⑥チリ(入国~サンティアゴ)
⑦アルゼンチン(入国~メンドーサ)
⑧アルゼンチン横断(メンドーサ〜ブエノスアイレス)
⑨アルゼンチン横断2(ブエノスアイレス〜バリローチェ〜チリ再入国)
⑩チリ(アウストラル街道 前編)
⑪チリ(アウストラル街道 後編)
⑫チリ~アルゼンチン(世界一過酷な国境越え)
⑬チリ~アルゼンチン(フエゴ島)

2023/3/29

街の入り口で最南端到達の写真を撮った後は、中心部にあるドミトリーにチェックイン。一泊8000ペソ(3200円)。

早速メルカドでステーキとワインを買って、もう一人の旅の相棒であり、妻の化身でもあるアヒルさんと祝杯。

2023/3/30

世界最南端へ繋がる国道3号線は、実はウシュアイアからもう少しだけ先に伸びているため、南北アメリカ縦断道としては、ウシュアイアから更に20kmほど行ったラパタヤが終着点となる。自転車乗りは最○端とか最○点というワードを聞いたら、条件反射的にそこを目指してしまう生き物なので、当然のように私も向かう。

重たい荷物は宿において、モスキート級となったバイクで颯爽と出発。街を抜けると国道はティエラ・デル・フエゴ国立公園に入る。

国立公園の入り口で国籍入り(!)のチケットを購入する。5500ペソ(2200円)。

雪の残る美しい公園内をのんびりとポタリング

国道の終着点に到着!アラスカからは約18,000km

宿に戻ると、何とコックランで会ったフランス人3人組に再会!彼らはバスとヒッチハイクで旅してるんだけど、私のゴールをとても喜んでくれて、ワインを奢ってくれた。ボトル数本を4人で開けた結果、安定のブラックアウト。そしてまんまとメガネを無くした…

2023/3/31

ブラジルに友人家族が駐在中のため、せっかくなので帰国前に立ち寄ることに。さすがにバイクで行く時間は無いので(笑)、友人がエアチケットを手配してくれた。

フライトが22:10発だったため、チェックアウト後もホテルの共用スペースでダラダラさせてもらう。

空港までは自走して、パッキング

ウシュアイアにもトレランレースがあるらしい!年末開催らしいので興味のある方は是非

2023/4/1

ブエノスアイレスでトランジット

サンパウロには9:30頃到着。空港まで迎えに来てくれた友人の車で、市街にある友人宅へ。こちらには4泊もさせてもらい、日本語と日常生活のリハビリ。

【サンパウロでの日々】

日系移民が多いだけあって、街中には日本語や日本風の建物が溢れている。

到着後、早速連れて行ってもらった日本食レストラン!メニューにあるもの全部食べたい。

朝ご飯は焼き鮭、納豆、漬物にお味噌汁と白米と、私にとっては最強の朝食アベンジャーズ。

ベランダに備え付けのグリルで自宅BBQ。

サンパウロのメルカドチェックへGO!

日本食屋台でうどんと海苔巻き。出汁の効いた汁物と炭水化物最高。

南米を自転車で旅してきたと言ったら、屋台のお父さんがお祝いだと言って全部タダにしてくれちゃった…

日中は近隣の公園を走ったり、マンションの敷地内にあるプールで泳いだり、友人の車でプチサーフトリップに出かけたりと、久しぶりに自転車以外のアクティビティを満喫

何から何まで本当にありがとう!おかげで最高のリハビリになったよ♪

2023/4/6

とうとう帰国の途へ。帰りのフライトは、天下のANAでトランジットはワシントンで1回だけ。総移動時間は約30時間で飛行機代は199,520円と、すべてが往路の半分ほど。やったぜ!

2023/4/7

15:30 無事、日本に到着!お疲れさまでしたー!

-まとめ-

【行程】

1月6日に日本を旅立ち、ボリビアのラパスに到着したのが1月8日。そこから紆余曲折しながら南下を続け、最南端となるアルゼンチンのウシュアイアには3月29日に到達したので、移動の所要日数は81日となった。

今旅では、広大な南米大陸を良いとこどりしながら、なるべく効率的に放浪するため、公共交通機関も積極的に活用した。結果としてルート上必須だったものも含めバスを3回(カラマ~サンティアゴ、ブエノスアイレス~バリローチェ、エル・チャルテン~プンタ・アレーナス)、フェリーを4回(プエルトモント~チャイテン、カレタ・ユンガイ~リオ・ブラボ、オヒギンズ~対岸、プンタ・アレーナス~ポルニベール)利用し、バイクでの自走と合計した総移動距離は約9,000kmにおよんだ。赤道の長さが約4万キロなので、3ヶ月で地球を1/4周したことになる。

一日当たりの平均移動距離は111km、乗物を除いた走行距離だと約60kmとなった。各国の平均距離の違いは、ほぼ乗物の利用度合いの違いによるもの。ただ走行距離に関しては、感覚的には今回はそれほどガツガツ走らず体調や天候に合わせて休息日や停滞日も躊躇わずとったつもりだったので、意外とちゃんと走ってたんだな~という印象。

【費用】

旅行期間中の総額は約35万円。ただしここには上述のバスやフェリー代として交通費が7万円ほど含まれるため、食べ物や宿泊といった生活費については3ヶ月で約28万円。一日当たりだと平均約3,500円。そして、ここは各国の物価の違いが如実に出る結果となった。

※ここで一点、お詫びと訂正です。アルゼンチンペソの日本円換算において、本ブログおよびSNS発信時には滞在時の公定レートを参考に1ペソ=0.7円で計算していました。ところが帰国してクレジットカードの明細を確認したところ、1ペソ=0.4円となっていました。ちょっと調べたところVISAカードの場合、何故かドル建てとした場合のレート(所謂ブルーレート)が適用されるようです。理由は分かりませんが、想定より安かったということなので、個人的には全く問題ない(むしろ嬉しい)のですが、この場を借りて訂正させて頂きます。大変失礼いたしました。

ボリビアではホテルに泊まって外食もしたけど1日3,000円以下、一方チリはテン泊して自炊だったのに5,000円弱、アルゼンチンは物価の安さに加えてレートの勘違いにより節制したので最安値になった、という感じ。

また旅行全体としては、上記に加え飛行機代(往路37万円、ウシュアイア~サンパウロ8万円、復路20万円)がかかっているので、総額としては約100万円ということになる。この金額については色々な見方が出来ると思うけど、歴史的な円安や原油高の中、アラフィフのおっさんが初めての南米を3ヶ月かけて一人旅する総額としては、まー、こんなもんか~という感じ。いつか世界一周するとしたら、まずは予算300万円くらいを目標にしてみたい。

【宿泊】

宿とそれ以外はちょうど半々。ちなみに「宿」は宿泊費を払ってベッドで寝た場合とし、有料のキャンプ場にテン泊した場合や東屋等にマットで寝た場合は「それ以外」に含めた。

国別に見るとボリビアは圧倒的に宿代が安かったから、アルゼンチンは大都市でキャンプできない場合が多かったからという理由でそれぞれホテルが多い。一方チリはアウストラル街道が3週間ほぼキャンプだったため、7割以上が宿以外となった。ただ、アウストラル街道は有料のキャンプ場はもちろん、公設のシェルターや無人小屋が本当に充実していたため、飲み放題の天然水と合わせて、毎日パタゴニアの大自然に肩までどっぷりと浸かりながら進んでいた。きっとそんなところも「世界一美しい林道」が世界中の自転車乗りを引き付ける強力な磁力になっているんだと思う。

【食事】

以前のブログでも書いた通り、私は味覚の裾野が広い(バカ舌とも言う…)ため、何でも美味しく食べられる。そして私見としては「何でも食べられる」と、「何でも『美味しく』食べられる」は、海外旅行におけるストレスがまるで違う。100mileレースに例えるなら、前者が後半ペースダウンして息も絶え絶えにゴールに辿り着くのに比べ、後者は最後まで自分のペースを保ち笑顔でストロングフィニッシュをきめることが出来る。幸い私は後者なので、素ラーメンやオートミール雑炊でも食の楽しみを感じられたし、同じものを毎日食べ続けることも全く苦にならず、最後まで胃腸も元気だった。

ちなみに飲料水についても基本的には宿の水道水をそのまま飲んだし、アウストラル街道では天然水だけで過ごした。ただここは体調や体質によって大きく個人差があると思うので、あくまでも参考として…。

貧乏自転車旅行者目線で見た各国の特徴と食事情は以下のとおり。

(ボリビア)

物価が安かったため屋台や飲食店も積極的に利用。また果物も安く、朝はインスタントコーヒーと果物が定番。宝石の道では、朝はツナ缶と卵でオートミール雑炊、夜は素ラーメンをひたすら繰り返した。

標高が高かったため(?)私にしては珍しくあまりお酒を飲みたいと思わず、また飲んでも頭痛や二日酔いが酷いため、酒量は大分控えめだった。お陰で経済的には節約できた。

屋台ではこちらのセットが何とたったの200円!

(チリ)

私にとって物価の基準となるマクドナルドのセットが1,500円~と圧倒的な物価の高さ…。なので外食はほとんどせず自炊の日々。ただ大好きなラーメンは大きなスーパーじゃないと売っていないしツナ缶はやたらと高いので、ひたすらパスタを茹でてトマトソースをかけ、チョリソーを焼いてパンに挟んだ。また野菜を食べたくなるんだけど、やっぱり高いし、一食分だけ買える野菜の選択肢があまり無いので、何かの宗教のようにトマトばかり食べてた。

港町のプエルトモントで食べた海鮮は、今旅ベスト3に入る美食。

無事標高も下がり、チリワインの安さにも後押しされ酒漬けの日々。恐らく食費の半分以上は酒代(笑)。

プエルトモントで食べたセビーチャという海鮮マリネ。絶品!

(アルゼンチン)

牛肉が安ーい!そして美味ーい!!事前情報として認識してはいたけど、相対的なコスパの良さと赤身の美味しさは想像以上。しかもかなり小さな町のメルカドでも、ちゃんと肉売り場があって、多様な部位をグラム単位で切り分けてくれる。世界トップクラスの消費量を誇る食肉文化に大感謝。

そしてメンドーサの赤ワイン、バリローチェのクラフトビールと、アルゼンチンも酒飲み天国♪

この肉が100gで100円以下って凄くない!?

【装備】

今旅では真夏の南半球を舞台に、標高は約5,000mまで上がるし、スタート地点となるボリビアから最南端のウシュアイアまでは緯度にして約40度を南下する。なので気温も氷点下から40℃くらいまでを想定する必要があったため、事前にリハーサルとして日本を北海道から沖縄まで縦断して、入念に装備の取捨選択をした。特に気にしたのは、氷点下で雨や雪が降った時のウェアリングと就寝具。そして、逆に30度以上の真夏日になった際にそれらを全てバイクにパッキングして、峠を走ることが出来るか。

その結果、重量は、飛行機に乗せた際の計測によれば、車体と付属品で約20㎏、パッキング荷物が約10㎏の計30㎏。ここに食料と水が加わるので総重量はマックスで35㎏ほどだったと思う。そしてこれは今旅で出会った全自転車旅行者の中で恐らく最小かつ最軽量。実際、何度か他の旅行者から、そんなに少なくて良く旅ができるなとか、何が入っているんだとか言われたけど、私にとっては過不足の無いミニマム装備に仕上がった。

(バイク)

相棒はCHAPTER2のAOというカーボンフレームのグラベルバイク。スプロケはシマノのGRXで1×11。性能、整備のしやすさ、納期等からブレーキはディスク、変速はサムシフターをグリップエンドに取り付け、共にワイヤー式とした。

バイク用と街履き用のシューズを共用にしたかったのでペダルはフラペ、でも引き足も使いたいためペダルストラップを取り付けた。

(パニアバッグ①「リビング」)ORTLIEBバックローラークラシック20L

テント、ソーラーランタン、シュラフ、エマージェンシーキット、各種予備品、整備用品、輪行バッグ等を収納。

(パニアバッグ②「キッチン」)ORTLIEBバックローラークラシック20L

テーブル、イス、調理器具一式、カトラリー、食料、水等を収納。

(ドライサック「クローゼット」)百均3L×2

ダウンウェア上下、レインウェア上下、防水ソックス、防水グローブ、パワーグリッドフィーディー、ロングスリーブシャツ×3、Tシャツ×1、ロングパンツ×1、タイツ、バフ、タイツ、アンクルソックス×2、下着×2を収納。

※バイクパンツ、キャップは走行中は常に着用

(フレームバッグ「デスク」+マット他)TOPEAKミッドローダー6L

iPad、バッテリー、カメラ、骨伝統イヤホン、パスポート、サコッシュはフレームバッグに収納。

マット、テントポール、ワラーチはリアキャリアに外付け。

(その他外付け)

ツールボックス×3、サドルバック(飲料ボトル)、空気入れ、ヘッドライト、携帯

-謝辞-

今旅でもインターネット上にある国内外の多くの先人達の記録を参考にさせてもらった。日本からの物理的な距離に加え、コロナによる旅行者数の減少により、紙媒体における情報量は減り鮮度も落ちていたけれど、スマホの中のデジタル世界には先人達の足跡や轍が時間や距離を超えてしっかりと残っていた。それらは私にとって常にワクワクするような新しい世界への扉であり、時に暗闇にポツンと光る灯台だった。同じ南米という大陸を好奇心と探求心を持って進み、かつ自らの軌跡をデジタルトレースとして残してくれた数多くの先輩たちに、心からの敬意を表したい。

今回の旅では、私自身もいつかの誰かのために自らの轍を残しておきたいと思っていた。また残す以上はなるべく拡散力と浸透力のある媒体にしたいという勝手な思いから、所属するトレイルランニングチームの母体であるRun boys!Run girls!のオーナーである慶さんに相談したところ、快くショップのブログに掲載させて頂けることとなった。掲載に当たっては旅先で私が書いたテキストと写真をDMで送り、それを当初数回は慶さんが、それ以降はランボーズのチームメイトである沢田さんが、段落分けやハイライト等の加工をしてブログとしての体裁を整えた上でアップしてくれた。

何の整理もしないテキストデータと写真の羅列を、毎回読みやすく編集して頂きありがとうございました。ブログデータをやり取りする際のお二人との何気ないコミュニケーションも、南米を一人で旅する私にとっては、とても癒される大切な時間でした。また拙ブログを毎回キャッチーなイントロダクションでSNSにシェアしてくださったランボースタッフの松井さんにもこの場を借りて御礼申し上げます。ブログが更新された後、今回は松井さんはどうやって紹介してくれるんだろうと密かに楽しみにしていました。本当にありがとうございました。

SNSやYouTubeの個人アカウントにも「日記」兼「備忘録」兼「安否報告」として旅の進捗をアップしていたため、こんなアラフィフのおっさんにも多くの方からリアクションやコメントを頂いた。特にSNSは「いつかの誰かのため」というより、そこでのリアクションが「今の私のため」に前に進むための原動力になった。

3ヶ月という長期間にわたり見守り、応援してくださった皆さま、いつもありがとうございます。これからも何卒よろしくお願いいたします。

そして最後に、毎回、まともな事前相談もせず、自分のやりたい事を好き勝手にやってばかりいる私に寄り添い続けてくれる妻へ。どんな旅も、必ず最後はあなたに会いたくて帰ってきます。いつも笑顔で迎えてくれて、ありがとう。

羽田に到着し、飛行機からタラップに降りると日本は春の嵐だった。湿り気を含んだ強い風に雨粒が舞い散り、長時間の飛行ですっかり固くなった身体を濡らしていく。朝までに止むと良いな、反射的に思ってから、もう自転車の旅は終わっている事に気づく。そうか、明日からは天気と風向きで行動を決める必要はないんだ…

テントを叩く雨音や吹き荒れる強風に起こされることは無いし、一日中漕ぎ続けた脚が夜中に痙攣したり、日焼けした肌が火照って眠れないこともない。でも、湧き出す清水の冷たさに驚くことも、見上げた夜空の星の多さに息を呑むことも、そして地平線から昇る朝日の眩さに目を細めることも、しばらくは無いんだろう。安全で安心な環境に無事に帰ってこれたことが嬉しい反面、昨日までの刺激的な日々を思い出して少し寂しくなる。

バゲージクレームでバイクとパニアバッグをピックアップして税関を抜けると、そこはもう見慣れた日本の風景。まー、グラベルから舗装路になったようなものか。だとしたらしばらくはまた、この快適な環境を満喫しよう。そう開き直り、荒れた天候のせいで長蛇の列となっているタクシー乗り場の最後尾に並んだ。

過去の経験の上書きではなく、知らない世界に行ってみたい。そう思って私は旅にでた。そして、この長い長いブログに書いてきたとおり、広大な南米を放浪しながら、様々なものを見て、様々な人に出会い、様々なことを考えた。道程は常に走りやすい一本道ではなかったけれど、だからこそ、その都度、悩んだり、困ったり、助けてもらったりしながら、一つひとつ乗り越えていった。

「No wave, No life.」

波も山も道も、そしてきっと人生も。乗り越えながら進むからこそ、面白い。

やっと順番が回ってきてタクシーに乗り込む。自宅の住所を告げ、後部座席で目をつぶる。

また一つ、未来の自分に誇れる旅が出来たな。

ゆっくりと走り出した車の振動が、いつしか、荒れた道を息を弾ませて走る自らの車輪の音に重なっていった。

(了)

星野 耕平

でかい波、高い山、長い道が好き。
トレラン歴は約15年。UTMB、Tor Des Grants、Andorra Ultra Trail等完走。
自主イベントとしては自転車日本縦断、歩きお遍路結願等。

座右の銘は「No wave,No life.」

個人ブログ:100mile
http://kh100mile.blog.fc2.com/

PROFILE

Run boys! Run girls! |

Run boys! Run girls!は、東京都千代田区東神田(馬喰町駅)のトレイルランニング・ランニング専門店です。物販だけでなく、情報発信や、ランニングイベント、交流イベント等を行い、トレイルランニング・ランニングの魅力を多くの人に伝えていくことを目的としています。

WEB: https://rb-rg.jp/

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