200マイルレースについて
今回は 200マイルレースに関するお話をします。
というのも、来年200マイルレースに挑戦する予定であり、自らの200マイルレースに対する理解を深めるべく言語化しようと思ったからです。
私は2019年にスイスピークスというレースで200マイルを超える360kmの距離を完走しました。これが私の現在までの唯一の200マイル越えの経験です。
実はスイスピークス完走後は、200マイルレースへの挑戦を控えていました。
その理由として、トレイルランの花形である100マイルレースで、魅力的な大会が数多くあり、それらの大会への挑戦を優先したかったからです。
その大会として、今年参加したUltra-Trail Snowdonia by UTMBやCervino Matterhorn Ultra Raceなどがありました。
これらの大会を完走したことで、来年は200マイルに挑戦したいという気持ちが湧いてきました。
日本では200マイルレースの開催が少ないというのが私の印象です。従って、日本の多くのランナーが200マイルレースを走るというイメージを持っていないと思います。
一般的に考えると、200マイルは100マイルよりさらにハードルが高いように思えますが、私はそうは捉えてはいません。
スイスピークスに挑戦した時も、360kmの距離に対して全く抵抗なく「多分完走できるだろう」と楽観的な気持ちの中でスタートし、結果レース中に右手を骨折したものの無事に完走することができました。
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前置きが長くなりましたが、今回は私なりの200マイルレースにおける要諦についてお話したいと思います。
200マイルは100マイルの2倍の距離ではあるものの、疲労の蓄積や辛さは単純に100マイルの2倍というわけではないというのが私の考えとなります。
私的には、100マイルを定常的に完走できるスキルを身につけていれば、200マイルの完走はそう難しいものではないと感じています。
一般的に、ミドルレース(100km未満)経験者が100マイルレースに初挑戦する際はものすごくハードルが高い一方で、100マイルから初の200マイルのハードルはそこまで高くはないと感じます。
なぜそのように考えるのか、理由として大きく2つあります。
一つは、200マイルは身体の疲労度が100マイルとほぼ一緒であること。もう一つは、レース中に感じる辛さが一定周期であるものの、辛さの大きさが増幅しないからです。
それぞれ具体的に説明していきます。
休憩を効果的に活用すること
一般的に100マイルレースにおいて、レース中に数時間の仮眠を取ることはほどんどありません。そのため、距離と疲労度は比例関係になっていきます。
一方の200マイルレースでは、仮眠を複数回とるようなケースが多いため、仮眠毎に身体を一時的に回復することができます。
以下、疲労度と距離の関係を示したグラフに示す通り、100マイルと200マイルでゴールした際の疲労はそれほど変わらないことになります。

実際、スイスピークス完走時の疲労は100マイルレース完走時と同程度であったと記憶しています
200マイルレースでは、約50kmの間隔でライフベースがあります。ライフベースは大型の施設エイドであり、ベッドやシャワーが完備され、身体を休めるスペースが確保されているのが特徴です。
スイスピークスでの事例を説明すると、Grande Dixenceというライフベースは立派なホテルであり、私はこのホテルの個室で2〜3時間ほど仮眠を取り、身体の疲労を回復することができました。


つまり50kmごとに仮眠する場所が設けられており、200マイルレースだと概ね1日あたり50kmほど進むので、毎日必ず寝床が確保されているということになります。
私はスイスピークスを出るまで、レース中にベッドで仮眠をとる経験は一切ありませんでしたが、この大会で仮眠後の身体の回復力を肌で感じたことで、仮眠をとることの重要性を知りました。
つまり、200マイルレースでは、疲労蓄積⇔疲労回復を何度も繰り返しながらレースを進めることが完走においてとても重要だということです。
辛さに耐えるスキルを身につけること
100マイルを完走するコツの一つとして、辛さに耐えることがかなり重要なポイントであることは、過去のブログでもお話したと思います。
辛いタイミングでいかに我慢が出来るかが、実は200マイルレースの完走においてとても重要だと私は感じています。
但し、200マイルレースだと辛さの強度が増すということではなく、100マイルと同じ強度の辛さが単純に2倍あるということが特徴です。
以下、グラフに示す「ラク」と「ツラい」の指標を使って説明すると、レース中は必ず一定の周期で「ラク」と「ツラい」が発生します。

要するに、200マイルレースでは単純に100マイルの辛さが2倍あるということです。辛さの大きさは100マイルレースと全く同じなのです。
私は数多くの100マイルレースを経験してきましたが、今でも100マイルレースで辛さを感じることは多々あります。
私のように経験を積み重ねても辛さが一切無くなるということはありません。従って、レース中に辛さと上手く付き合うことがとても重要となってきます。
そのためには、100マイルレースで何度も辛さに耐えうるトレーニングをすることで、200マイルレースで十分に戦うことができます。
つまり、200マイルレースに向けた特別な練習は必要ないということです。
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最後になりますが、日本人にとって人気のあるトルデジアンやPTLに出たいと考えている方にとっても、前述の通り100マイルレースの経験を積むことが重要です。
但し、100マイルのレース数を単純に積むのにはそこまで効果はありません。
100マイルレースでもレベルや難易度があるので、挑戦する100マイルレースの強度を徐々に上げていって経験を積むことが、200マイルレース完走において最も効果的であると感じています。
私自身、日本のトレイルの大会に2015年以降に1度しか出てなく、国内のトレラン事情についてほぼキャッチアップできていません。
しかし、周りの多くの日本人ランナーの話を聞くと、国内の100マイルレース数も増加傾向であり、加えて比較的レベルの高い大会が多く開催されてると聞いています。
私の場合は、海外のレベルが高い100マイルレースに何度も挑戦したことが、結果としてスイスピークスの完走につながったと実感しています。
将来、トルデジアンなど200マイルレースに挑戦したいと思っている方は、100マイルの中でもレベルの高い大会で経験を積むことが完走への近道だと感じています。