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2021年3月17日

ゆっきー

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自分の走りに集中する

私が海外レースを選ぶ基準の一つとして、なるべく参加者が少ない大会を選ぶ。人数にすると200〜300人程度。より参加者が少ない大会となると、100人を下回る規模の大会に出ることもある。

なぜそんなに規模が小さい大会に出るのかよく聞かれることがある。海外レースの中でも人気あるレースになると、規模も大きく華やかなであることが多い。そんな中で走ってみたいと思う気持ちになるのは当然だと思う。しかし、私は他人と比べその気持ちをそれほど強く持っていない。

しかし私自身、人気のあるUTMB、Vibram Hong Kong 100に出たことがある。参加人数は2,000人ほどでレース中、周りを見渡せば必ずランナーを見かける。1人で孤独に走ることはない。またエイドは選手で混雑し、席が埋まってゆっくり休むことができない。

参加者が多い大会だと、周りの選手に気を配る必要がどうしても出てくる。これはマラソンでも同じことが言える。私は数万人規模の東京、福岡マラソンや数百人規模の延岡マラソンなどに参加したことがある。

前者はスタートの数時間前から現地入りして荷物を預け、早々にスタート位置に並ぶ必要がある。一方の後者は、スタート直前まで自分のペースで準備を行うことができ、他のランナーに気を配る必要はない。
 

相手に気を配るとより体力を消費する

私が海外での100マイルレースに出たときに、スタートから90kmを過ぎた高低差1,000mの登りのセクションにおいて、約300名のランナーに追い抜かれたことがあった。その300名は同レースの50マイル部門の参加者で、まだスタート直後であり多くの選手は猛スピードで登りを駆け上がっていた。

私を含めて100マイル参加者は、迷惑をかけないよう何度も後方を確認し、選手が来れば道を譲るということを何度も繰り返した。気を配ることは想定以上に体力を消費することに初めて気づいた瞬間であった。その後は体力を消耗し、ヘロヘロな状態でゴールまで走った記憶が今でも残っている。

そんなこともあり今では大規模ではなく小規模の大会に出ることの方が多い。だが私が小規模の大会に出る本来の目的は別にある。それは自分の走りに集中するためである。スポーツ全体を俯瞰してみると、トレイルランは自分の走りが求められるスポーツであるからである。
 

トレイルランは他力本願ではない

トレイルランは、野球やサッカーといったチームスポーツではなく個人スポーツである。また個人スポーツは、相手と直接勝負をするスポーツと、相手と直接勝負をしないスポーツに分けることができる。それぞれ例をあげるならば、前者は柔道、相撲、テニス、後者はゴルフ、ウエイトリフティング、体操などがある。

この分類をすると、トレイルランは後者のグループに含まれる。スタートからゴールのいずれかのセクションで相手と直接勝負をすることはあるが、基本的には1人で走り続けることがはるかに多い。

また、レース前から誰かと一緒に走ることを事前に決めていても、ゴールまでずっと一緒に走り続けることはなかなかできない。なぜなら、どちらか一方が体力を消耗したりトラブルになったりすること、またはコースによって登りや下りで得意・不得意が出るため、並走し続けることはなかなか難しい。
 

トレイルランは相手を有効活用できない

では相手と直接勝負する場合と直接勝負しない場合で本質的に何が違うのか?それは大きく2つあると思う。


・相手の力を利用すること
・相手のミスを引き出すこと


相手の力を利用する例として柔道を挙げてみたい。柔道では力任せでは相手を倒すことはできない。相手を倒すためには、相手が技を仕掛けたタイミングで自分が技を仕掛ける。そのために相手に意図的に技を仕掛けさせる状況を作り出し、相手が状態を崩した所を自分が技を仕掛ければ、相手を倒すことができる。

相手のミスを引き出すことは、チーム・個人スポーツ関わらず相手と直接勝負をするスポーツにおいて共通して言えることだ。テニスや野球などはエラー数も公式記録としてカウントされる。これらのスポーツではミスで試合の流れが一変する。つまりミスは勝敗を左右するスポーツであり、相手がミスをすることで自ずと勝利が転がってくる。

以上から、これらのスポーツでは自分が本調子でなくても、相手の力を上手く利用し相手のミスを誘い出すことが勝つための有効手段であると言える。これらを行うためには、試合中は自分のプレーに加えて、相手のプレーも常に見ながら戦うことが求められる。
 

見えない相手と戦わないこと

相手と直接勝負をしないスポーツでは相手を意識しないこと、これに尽きると思う。ゴルフの全英オープンを思い浮かべる。ジャン・ヴァンデベルデという選手が、最終日の最終ホールで首位、2位と3打差もあったが優勝を逃したのだ。もし本人が相手のスコアを見ずに自分のゴルフに専念していれば結果は変わっていたかもしれない。

以上、私が自分の走りに集中することを大切にしている理由となる。トレイルランは基本的には相手あってのスポーツではない。相手を意識することなく、自分の走りに専念することは完走することや自分の納得する走りをするための近道であると考える。


◇    ◇


今現在は、複数人での練習は難しい状況であるが、この状況をプラスに考えると個人で山を走るいい機会だと捉える。私も一人で山を走ることの方が圧倒的に多い。周りを意識することなく一人で走ることを習慣化すると、レース本番で集中力が増しより勝負強さが発揮できる。

PROFILE

ゆっきー | Yukihisa Nakamura

海外のトレイルレース延べ2000km
本格的に海外を走り始めて4年、年500kmのペースで世界の魅力的なトレイルを駆け巡っています。
山本来の魅力を肌で感じることが好きで、有名な大会よりかはニッチでテクニカルなコースを選びがちです。
Swisspeaks 360km(Walker's Haute route)、UTMR 170km(Tour Monte Rosa)など完走。
2020年も日本で知られていない世界各国の魅力的な山・トレイルに出逢うこと。

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