9月17日〜19日の三連休に、3年ぶりに実施された信越五岳トレイルランニングレースが無事終了し、リザルトも発表されましたので、Run boys! Run girls!的にその結果をまとめてみました。
なお、このブログの目的は今年の結果を振り返るのはもちろんですが、来年の選手、ペーサー、サポートにとって、完走に向けて役立つ情報という観点からまとめています。
【参考情報】
https://sfmt100.com/result/
http://www.tokotoko.jp/trail/sfmt100/
目次
概要
【完走率】著しく低い結果
種目 | 出走数 | 完走者数 | 完走率 | 2019年 完走率 |
100mile | 575 | 223 | 38.78% | 57.34% |
110km | 763 | 367 | 48.09% | 54.31% |
とても低い完走率でした。特に100mileは40%を下回る低さ。
大会プロデューサー石川弘樹氏はその原因として「台風の影響を受けた”暑さ”」「”走らされる”コースの特徴」に加えて、「3年ぶりの開催で信越の常連ランナーもコースを知る免疫のようなものが落ち、初めて参加する選手も走れることが楽なのか、きついのか進み続ける判断を鈍らせるものであった」と分析しています。
大会サイト:大会実行委員長 石川弘樹よりごあいさつ
上記3点のうち、2点について数字で見てみましょう。
【気温】たしかに今年は暑かった
レース期間中 の気温 | 最低気温 (℃) | 最高気温 (℃) | 平均気温 (℃) |
平年 | 16.6 | 24.1 | 20.0 |
2019年 | 18.9 | 27.9 | 22.1 |
2022年 | 25.9 | 31.7 | 27.7 |
信越五岳のコース域の前半部分にほど近い、妙高市関川観測所の気温を見ると最低気温が平年より9℃以上高いという驚くべき条件だったことがわかります。2019年と比較しても平均気温で5℃以上高いということがこの情報で裏付けられます。
スタートの18:30から、通常であれば温度が下がる深夜帯もほとんど気温は下がらず、そのまま日中は32℃近くまで気温が上昇しています。トレイルはこの気温よりも低かったはずですが、2019年との気温差は5℃以上ある時間帯がほとんどで、かなり厳しいコンデイションだったことが伺えます。
台風の影響かスタートから翌日の昼頃までずっと南風が吹いていて、気温が下がらなかった原因と思われます。
ただ、トレイル上ではこの強めの風に寒さを感じた選手もいたようですので、個々人で体感温度は違っていたようです。気象条件によらず、寒さ、暑さどちらにも対応できる装備が必要ということですね。
【コースの特徴】キツい制限時間
種目 | 距離 | 獲得標高 | 制限時間 | 優勝タイム |
100mile | 163km | 約7,100m | 33時間 | 20時間13分 |
110km | 111km | 約4,900m | 22時間 | 12時間53分 |
多くの100マイルレースでは制限時間は優勝タイムの2倍以上に設定されています(例:UTMB,UTMF )が、信越五岳では1.65倍ほどに設定されており、そもそも完走の難度が高いレースと言えます。
石川弘樹氏の言う「走らされるコース」というのは「走れるコースが延々続く」というコースの意味で受け止めてしまいがちですが、信越五岳においては「制限時間に追われるので走らざるをえない」という、もう一つの意味があることは頭に入れておかないといけないですね。
100mile 傾向分析
前段で大変厳しいコンディションで実施された大会だということがわかりました。ここからは種目毎に、完走を目標として、レースの全体をリザルトの数字から振り返ってみたいと思います。まずは100mileから。
なお、完走ペースに関しては以下のブログを参考にしてください。
区間毎の走行人数とリタイヤ人数の推移
上図はコースの区間イメージ図の下に、リザルトから拾った走行人数とリタイヤ人数をまとめたものです。この数値を見て以下のことが言えます。
第1関門(アパ)〜第4関門(笹ヶ峰)は要注意区間
第1関門(アパリゾート上越妙高)〜第4関門(笹ヶ峰グリーンハウス)は各区間のリタイヤ率が10%を超えており、特に池の平スポーツ広場〜黒姫間は20%(79名)がリタイヤしており、最も注意が必要な区間です。
これらの区間はスキー場の急登を含む上り基調なのと、なんと言っても日中で直射日光を浴びる区間が多く、暑さの影響を最も受けやすい時間帯であることが多数のリタイヤにつながったと思われます。
この区間では、選手自身の暑さ対策が必須であることと、サポートする人はこれらの区間のエイドでは、できれば複数回サポートして選手を励ましたいですね。
笹ヶ峰(第4関門)に辿り着けば、完走率は78.8%
笹ヶ峰(112km地点)では、それ以降の区間の完走率は78%を超えました。この先は、ほぼ8割の方がゴールに辿り着けたということです。決して安心できる数値ではないのですが、応援的には「笹ヶ峰までくれば、8割の人がゴールできるんだよ!あきらめないで!」と励ますことができそうです。
「戸隠まで来れば安心」ではない!
さて、最後の関門(第5)、フル・エイドの戸隠スキー場(141km)を出発しても、まだ完走率は約9割。したがってこのエイドにたどり着いても安心はできないのです。残り22kmには、最高点、ラスボスこと瑠璃山があり、その後は長い林道が続きます。完走を目指す方にとっては、時間との戦いとなります。
応援的には「まだ気を抜いてはいけない!ここからだよ!」と檄を飛ばして、エイドからの早い出発を促したいところです。
では、何時までに戸隠スキー場を出れば完走できるのでしょうか?
戸隠スキー場を出た時間毎に完走率を割り出してみました。
出発時間帯 | 出発 人数 | 完走 人数 | 完走 率 |
22:00 〜 22:30 | 34 | 34 | 100% |
22:30 〜 23:00 | 19 | 17 | 89.47% |
23:00 〜 23:30 | 19 | 12 | 63.16% |
23:30 〜 | 11 | 2 | 18.18% |
第5関門(戸隠スキー場)の到着制限時間は23:30。その1時間前の22:30までにこのエイドを出発できた人は全員完走しています。その後は完走率が下がっていき、23:30を超えると、完走率は2割を下回ります。
完走ねらいの方は、このエイドで20分程度滞在(蕎麦を食べて補給!)すると想定すれば、22時ごろには到着し、余裕をもって22時30分までには出発できればよかったと言えるでしょうか。
ペーサーの効果を見る
100mileでは黒姫からペーサーを付けることができます。黒姫でペーサーがつけたのは80名。そこから出発した人数(312人)の25%ほどでした。ペーサーの効果を見るために完走率の違いを見てみました。その結果、100mileの場合思いのほか完走率に大きな違いはなく、やはり完走率は選手自身の体調に大きく左右されると言えるでしょう。
関門地点 | 全体の完走率 (関門以降) | 完走率 ペーサー有 | 完走率 ペーサー無 |
黒姫 | 70.57% | 72.38% | 69.92% |
笹ヶ峰 | 78.80% | 78.38% | 78.95% |
戸隠 | 89.92% | 92.06% | 89.19% |
もちろんこの結果は完走率に対するペーサーの影響のみを見ており、心理面、タイム等の貢献があるのは間違いないので、その点誤解なきようお願いします。
110km 傾向分析
前述の100mileと同様に110kmも傾向分析をしてみたいと思います。
区間毎の走行人数とリタイヤ人数の推移
兼俣林道入口〜第2関門(笹ヶ峰)が要注意区間
上図にはありませんが、黒姫以前のチェックポイント、兼俣林道入口(30km付近)から黒姫(49km地点)までに多くのリタイア(109人)が出ています。気温が上がる時間帯に標高の低い地域を通過することによるものと思われます。また、その後の黒姫〜笹ヶ峰の区間にもリタイヤが集中(111人)しています。
この区間で選手をサポートできるエイドは黒姫だけですので、ここでのサポートに全力を尽くしましょう。
笹ヶ峰に辿り着けば、完走率は76%
110kmにとって、笹ヶ峰(60km地点)はまだ半分をちょっと超えたところ。残り50kmの距離は、選手にとって絶望的な長さに感じているかもしれません。
それでも笹ヶ峰に辿り着けばここからの完走率は約76%。「ここからの完走率はほぼ8割だよ!絶対いけるよ!」と言えば、多少は励みになるのではないでしょうか。
「戸隠まで来れば安心」では全然ない!
戸隠スキー場(88km地点)にたどり着いた人の完走率は約80%。100mileに比べても「ここまで来れば安心」とはとても言えないですね。
戸隠スキー場を出発する時間と完走率の関係を見てみましょう。22:30までに出発すればほとんど人は完走していますが、23:00以降に出発すると急激に完走率が下がります。23:30過ぎに出発して完走することは至難の技のようです。
やはり「安全なのは22:30までに戸隠を出発すること」というのは100mileと共通と言えそうです。
出発時間帯 | 出発 人数 | 完走 人数 | 完走 率 |
22:00 〜 22:30 | 73 | 71 | 97.26% |
22:30 〜 23:00 | 81 | 76 | 93.83% |
23:00 〜 23:30 | 46 | 15 | 32.61% |
23:30 〜 | 21 | 1 | 4.76% |
ペーサーの効果を見る
110kmでもペーサーの効果を見てみました。100mileとは違って、ペーサーの有無による完走率への明らかな影響が伺えます。
関門地点 | 全体の完走率 (関門以降) | 完走率 ペーサー有 | 完走率 ペーサー無 |
笹ヶ峰 | 69.11% | 76.99% | 66.99% |
戸隠 | 80.66% | 86.14% | 79.10% |
なぜ、100mileに比べ、110kmでは完走率におけるペーサーの影響が大きいのかは理由が不明ですが、長距離レース経験が比較的少ないと思われる110km出走者は、自身のポテンシャルをペーサーによって引き出してもらっている部分が多いということなのかもしれません。
確実に言えるのは、110km完走にはペーサーが有効だということですね。
まとめ
- 信越五岳トレイルランニングレース2022 は、「例年にない暑さ」による低い完走率でした。今後も暑さ対策は必須です。
- 100mileは「アパ〜笹ヶ峰」、110kmは「兼俣林道入口〜笹ヶ峰」が要注意区間。サポートはこの区間で提供できるよう計画しましょう。
- 100mile、110km共に「笹ヶ峰」まで辿り着けば、完走できる可能性が高まります。
- 100mileではペーサーの有無は完走に影響しませんが、110kmでは効果があると言えます。
- 100mile、110km共に最後のフル・エイド「戸隠」を22:30までに出発することで、完走を確実にできます。
今回のブログ記事、いかがでしたでしょうか?
皆さんの完走のヒントになればとの思いでリザルトをまとめてみました。また来年の大会前に読み返して、出走、ペーサー、サポートに生かしてもらえればと思います。